本は読めないものだから心配するな

著:管啓次郎

「おすすめの本はなんですか?」と聞かれることがたまにある。そこで何か一つ思い浮かんだ小説なんかを挙げると、さらに「どういうストーリーですか?」と返される。私はそこで言葉に詰まることが多い。どういう話だったか覚えていないからだ。なんかすごく面白かったとか、すごく好きだったとかいう感想は残っているが、肝心の内容がうすらぼんやりとしていることが多々ある。

私はそんな頼りない本読みだから、『本は読めないものだから心配するな』という言葉を書名にしてしまうこの本に、どうしてもひかれてしまった。本書は、読書をめぐる思索の書であり、膨大な本のガイド本でもある。

「本に『冊』という単位はない。とりあえず、これを読書の原則の第一条とする。本は物質的に完結したふりをしているが、だまされるな」と著者は言う。読書の途方もなさ、難しさ、しかしそれ以上の面白さを、思考の一つ一つをしっかりと確かめるような美しい文章で示してくれる、私にとって最高の本だ。

発行 筑摩書房 文庫判 価格 990円

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん

映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員