『ひと皿の小説案内』

ダイナ・フリード著

小説の中に登場する料理は、なぜあんなにもおいしそうなのだろう? 文字を追いながら想像をふくらませ、きっと夢のような食べ物に違いないと憧れを募らせる。そんな経験を持つ人はきっと多いと思う。

滴るようなチーズ、ふわふわのパンケーキ、つやつやの果物…。「不思議の国のアリス」や「失われた時を求めて」など、名だたる海外の50作品に登場する料理を、この本は再現してみせる。しかし、そこに宝石のようなきらめきを期待すると、肩透かしを食らってしまう。色合いやシズル感に乏しい写真はありていに言ってしまえば地味だ。

ただしその代わり、この本には小説を細部まで読み解こうとする姿勢がある。作品の世界観に沿ったテーブルコーディネート、地味な色合いにもリアリティーがあり、手を伸ばせば届きそうな気さえする。ひと皿の料理で表現されるのは、小説の世界そのものなのだ。

ひと皿の小説案内

『ひと皿の小説案内』 ダイナ・フリード著 定価1,850円(税別) A5ヨコ マール社

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
山根 芙美さん

実用書・文芸担当。書店員歴は10年ほど。海外文学偏愛傾向があり、業が深いなあと思いながら本を読む日々