日記をつける

著者:荒川洋治

ためらひつ 日記を買って しまひけり ―鈴木良戈

「日記買う」はれっきとした冬の季語。年末が近づくと、書店や文具店に日記帳が並びますね。今再び、季節は巡ってまいりました。

たぶん自身の老齢への思いが詠まれたのだろう右の句、こうも取れませんか? 途中でうっちゃられた幾冊かの過去の日記帳。いずれ続かぬ無節操は身に染みて知りながら、性懲りもなくまた買ってしまった自分に、あきれたような、おかしさ、やるせなさ。

「分かる」と思ったあなたには、特にお薦めしたい、エッセー集です。古今東西の先人たちの日記や、日記風の詩や小説などがふんだんに引かれ、赤裸々だったり、秘密の暗号があったり、その多様さを存分に味わいながら、日記を続けるためのコツも教えてくれます。読み終えた時にはきっと、日記をつけたくてうずく手を、止められないはず。

本書でも引かれた、熊本ゆかりの作家・徳冨蘆花の日記は赤裸々派。それはもう赤裸々です。

定価860円(税別) 文庫判 岩波書店

定価860円(税別) 文庫判 岩波書店

紹介するのは

長崎書店
児玉 真也さん

JPIC読書アドバイザー。文庫担当。