大坊(だいぼう)珈琲店のマニュアル

大坊勝次 著

思わず目をひく、タイトルと名前だけの潔い表紙。しんと静かな印象の表紙を開けば、同じように静かな大坊勝次さんの語りが始まります。

大坊さんは岩手県盛岡市生まれ。1975年に南青山に「大坊珈琲店」を構え、2013年に閉店するまでの38年間、毎日手回しロースターで焙煎しネルドリップで抽出したコーヒーを提供してきました。多くを語らず干渉もせず、どんな立場の人も平等に迎え入れたその姿勢は、コーヒーにも店構えにもあらわれていたのでしょう。そしてその実直さ誠実さが、今でもたくさんの人に愛される理由なのだろうと読みながら何度も納得させられます。

めくるめく時代の変化の中で、当たり前を当たり前に続けていくことの難しさと大切さ。穏やかにコーヒーの香りが漂ってくるような文章から思うのは、大坊珈琲店に行ってみたかった。それがかなわない代わりに、この本を五感をめいっぱい働かせながら、今後何度も何度も読んでいくのだろうと思います。

紹介するのは

長崎次郎書店
甲斐 栞さん

実用書、旅行書、雑貨担当。JPIC読書アドバイザー。