すべての、白いものたちの

著 ハン・ガン 訳=斎藤真理子

詩とエッセーを行き来するような簡素で端正な文章で、この小説はさまざまな白いものについて書く。「おくるみ」「うぶぎ」「しお」「こおり」―それらの白さは、生後間もなく死んでしまった、会ったことのない姉の存在を思い出させるよすがであるからだ。

アジア唯一の国際ブッカ―賞受賞者である、現代韓国最大の作家ハン・ガンは、この作品で静謐(ひつ)だが切実に祈っている。姉の魂が消えてしまわないよう。「しなないでおねがい」と、かつて母が必死で唱えた言葉を何度も反響させ。その祈りは韓国と、ナチスによる破壊の歴史を秘めたワルシャワを巡り、そして読む者すべての記憶にたどり着き、揺り起こす。

これは彼女のごく個人的な物語だ。だがそれは、こんな時代のただ中に生きる私たちの、救いにもなると信じさせてくれる強さを持っている。吐く息も白くなる季節が来るたびに読み返したくなる、美しく特別な一冊。

2000円(税別) 河出書房新社 四六判

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん

映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員