『夢の本』

著:ホルヘ・ルイス・ボルヘス

異なる文化、異なる言語、国が違えど人間が住まう土地であれば、そこに神話があった。人間にとって神話とは、不可解な事象を説明するための機能をもつ。「説明」という言葉の力によって、世界と自分を結び付けてきたのだ。

そうした読み解く力として神話を考えた時、夢もまた神話に近しいものではないか、と考えてしまう。神話が外の世界を読み解くとすれば、夢は内なる世界を読み解く機能だ。

眠りを死と結びつける古来のイメージに従うと夢には生と死の境はなく、また時間の概念もない。すなわち夢とは人間の無限性の証左である、とさえいえる。なるほど物語のモチーフとして、とても魅力的に違いない。

本書はそんな夢の話を、ボルヘスというイメージを編さんすることにかけては魔術師のごとき人物の手によって編まれたアンソロジーだ。手のひらほどの文庫本には膨大なイメージが溢れかえっている。世界と自分の接点を見失わないよう、ぜひご注意を。

定価 1,200円(税別)文庫判 河出書房新社

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
山根 芙美さん

文芸・新書担当。書店員歴は10年ほど。海外文学偏愛傾向があり、業が深いなあと思いながら本を読む日々