現実脱出論

著:坂口恭平

「いいかげん、目覚めなさい」。あるドラマの中で、教師が生徒に言い放つ。この本を手に取った時、ふとこの決めゼリフを思い出した。ドラマの中で飛び交っていたこの言葉。果たして、本当に目が覚めたクラスメートは何人いただろう。

作者は、小さい頃の両親との会話で、「現実」を信用できなくなる。そこから、作者自身の人生に沿って、現実を脱出するため(客観的に見ることが困難な現実を観察するため)の思考活動が始まる。「人がいない居酒屋よりも混雑している居酒屋の方が広く感じる」だとか、「普段は感じない自宅の匂いを入院生活の直後に感じる」だとか︱。数値では表すことのできない感覚は、作者だけでなく私たちも持っているだろう。

この「感覚」こそが現実を脱出するためのカギになる。作者がいかにして、「現実さん」と向き合ってきたのか、ぜひあなたの目で確かめてほしい。ほんの少し肩の力を抜いて、「現実さん」と付き合えるはずだ。

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
小川 尚太郎さん

新書・地図・旅行書担当。髪は自分で切る派