【392号】気軽にチャレンジ 俳句を作ろう

「俳句甲子園」やバラエティー番組の俳句コーナーが人気になるなど、近年、老若男女を問わず俳句に興味を持つ人が増えています。難しく考えなければ、誰でも気軽に作れる俳句。その基礎知識や作り方をご紹介します。

季題を入れた17音で"つぶやく"

俳句とは、季題(季語)を入れた五・七・五の17音(文字)で作る短い詩です。とっつきにくい印象があるかもしれませんが、特別なことを詠む必要はありません。日々の生活の中で感じたことを、定形にのせて“つぶやく”だけでいいのです。俳句は自然に対するあいさつ。例えば「本日は大変暑いと思います」でもOKです。なにより俳句を楽しむことで、四季の移り変わりを身近に感じられるようになりますよ。

秋を代表する正岡子規の俳句。子規が生涯に詠んだ20万超の句の中でも有名な句の一つ。

今回、話を聞いたのは

ホトトギス同人
宮中 千秋さん

句歴50年。高浜虚子が提唱した「花鳥諷詠」の道に精進し、伝統俳句を追求。熊日生涯学習プラザ「俳句」講座の講師。句集「東風」「南風」「北風」を出版。水彩画家・版画家としても活躍

宮中 千秋さん


俳句を作って季節を感じよう

「誰でも気軽に」とは言っても、じゃあ「何から始めたらいいの?」と思いますよね。大丈夫! 句作の手順やコツと基本的なルールを宮中千秋先生に教えてもらいました。

今回は伝統俳句の手法にのっとった作り方を紹介しています。

俳句のセオリー

俳句を詠むときに知っておきたい最低限の決まりごとをご紹介します。

五・七・五で作る

俳句は五・七・五の17音で作ります。最初の5音を「上五(かみご)」、真ん中の7音を「中七(なかしち)」、最後の5音を「下五(しもご)」と呼び、表記する際は上五・中七・下五の間を空けずに一行で縦書きにします。※「字余り」の句もありますが、まずは17音で

季題を入れる

季題(季語)とは、季節を表す言葉で、一句に一つだけ入れます。2つ以上の季題が入った「季重なり」の名句もありますが、これは例外的な上級テクニック。基本はあくまでも「一句に一季題」です。季題については「歳時記」で調べることができます。

切れ字がある

「や」「かな」「けり」などを切れ字といい、これも一つの句に一つが基本です。句の意味やリズムをあえて切ることにより、17音の短い詩を補い、余韻・余情を深くする俳句の大きな武器。また、切れ字には詠嘆や強調を表現するとともに、場面の切り替えや、全体を引き締める働きもあります。ただ、これも俳句に慣れてから使うほうが無難です。

俳句は氷山の一角

海の上に出ている部分が俳句で、その下には多くの余韻・余情が隠されている

海の上に出ている部分が俳句で、その下には多くの余韻・余情が隠されている


句作のメソッド

初めての人でも挑戦できる、句作の手順とコツを具体的にご紹介します。

季題とは関係のない12音を作る

まずは季題とは関係のない上五・中七、または中七・下五の12音を作ってみましょう。内容は何でもOKです。日々の生活の中で楽しかったこと、悲しかったこと、目にしたことなどを、12音でつぶやいてみましょう。句作は写生をするイメージ。物や風景をいろんな角度から観察し、その様子をスケッチするように文字で描写しましょう。

音高くヘリのとびたつ

終列車見送る駅の

ステップ1の12音に合った季題をつける

ステップ1で作った12音の“つぶやき”に合った季題を探してみましょう。季題をプラスすると、何気ないつぶやきが立派な俳句になります。(12音のつぶやきに季題が入っていないか要チェック。12音に季題があると季重なりになってしまいます)

音高くヘリのとびたつ秋の空

終列車見送る駅の月見草

作った俳句を推敲(すいこう)する

推敲とは、字句や文章を吟味して練り直すこと。ステップ1・2の手順で俳句を作ったら、さらにいい句にするために一字一句を吟味しましょう。「てにをは」を変えたり、フレーズの前後を入れ替えたり、漢字を平仮名にしてみたり、表現を変えてみたり…。俳句は17音しかありません。一字変えるだけで句全体のイメージが大きく変わります。次の句を例にとると…。

《原句》

米洗ふ前螢の二つ三つ

原句は米を洗っている前にホタルがじっと止まっている様子がうかがえます。では、「米洗ふ前に」を「米洗ふ前を」に変更してみましょう。

《推敲後》

米洗ふ前螢の二つ三つ

「に」を「を」に変えただけで、米を洗っている目の前をホタルが飛んでいる情景へと変わり、句に躍動感が出てきます。


俳句クイズ

季題の選び方や「や・かな・けり」といった切れ字の使い方をクイズにしました。楽しみながら、俳句の基本ルールを学びましょう。

その1

次の3句は小林一茶の俳句です。
それぞれの季題は何でしょう?

イ…やせ蛙負けるな一茶これにあり
ロ…やれ打つな蝿が手をすり足をする
ハ…這へ笑へ二つになるぞ今朝からは
《答え》

イ…蛙/春の季題
ロ…蝿/夏の季題
ハ…今朝からは/新年の季題である「今朝の春」が変化したもの


その2

俳句の意味を考えて、(  )に入る最も適切な秋の季題を選んでみましょう。

イ…犬つれて歩く湖畔の(  )
ロ…焼鳥の匂ひ流るる(  )
ハ…アトリエの灯りこぼるる(  )

秋の季題…

虫の闇・秋の暮・露深し

《答え》

イ…露深し
ロ…秋の暮
ハ…虫の闇


その3

次の3句は松尾芭蕉の俳句です。(  )に、代表的な切れ字の「や」「かな」「けり」のいずれかを入れて、それぞれの俳句を完成させましょう。

イ…荒海(  )佐渡によこたふ天の川
ロ…白露もこぼさぬ萩のうねり(  )
ハ…道のべの木槿(むくげ)は馬に食はれ(  )
《答え》

イ…や
ロ…かな
ハ…けり


その4

次の3句から、俳句として不適切な部分を、それぞれ見つけてください。

イ…牛の水あふる牧の日和かな
ロ…冬の海朝たつ虹に旅終る
ハ…佐渡の島着くや早速おけさかな
《答え》

イ…季題が入っていない
添削例:牛の水あふるる秋の日和かな
ロ…季重なり。「冬の海」と「虹」という2つの季題が入っている
添削例:虹かかる海を渡って旅終る
ハ…「や」と「かな」という切れ字が2つ入っている
添削例:歓迎のおけさ踊や佐渡を訪ふ


STEP UP!

次なる俳句の楽しみ方

俳句を一人で楽しむのもいいけれど、ステップアップを目指すなら、俳句教室や句会に参加するのがおすすめ。

俳句教室は上達の早道

俳句を作れるようになったら、作品を人に披露したくなるものです。そんな方は、まず俳句教室に入るのが早道。互いの作品を見たり聞いたりしているうちに仲間ができて、さらに講師の指導を受けることで句作も上達していきます。公民館などで教室が開講されていますよ。また、作った俳句を持ち寄って感想を述べ合う「句会」に参加するという方法もあります。

それから、ぜひ「吟行」にも出かけてみましょう。吟行とは、外に出て季題を探し俳句を作ること。近所の公園を散策するのでもOKです。

その他、作品の投稿も腕試しになります。最近ではインターネットや雑誌などで、さまざまな俳句の募集イベントが行われています。

同じ趣味の仲間づくりができるのも俳句教室の魅力。和気あいあいとした雰囲気の中、互いの句の感想を言い合い、切磋琢磨(せっさたくま)できます

熊日生涯学習プラザ「俳句」講座

講座は句会形式で行われ、受講者全員で投句し、お互いに優れた句を選抜。講師の講評と丁寧な指導で、よりよい俳句の作り方を学習。吟行も随時実施。見学も受け付け中。「俳句入門」講座もあり。

お問い合わせ

熊日生涯学習プラザ

TEL
096-327-3125


これだけはそろえておきたい!

句作の必需品「歳時記」

(1)「合本俳句歳時記 第四版」2484円(角川学芸出版) 季語2537、傍題5034を収録。コンパクトサイズで携帯するのにおすすめ

(2)「新歳時記」各2160円(河出書房新社) 春・夏・秋・冬・新年の全5冊。充実の季語解説で実作に役立ち、辞典・事典としても便利

(3)「新くまもと歳時記」3000円(熊本日日新聞社) 1年におよぶ新聞連載をまとめた歳時記。肥後菖蒲や灯篭祭りなど熊本独自の季語も満載

俳句を始めるには、筆記用具の他に「歳時記」が必要です。歳時記とは、季題を集めて分類し、それぞれの言葉の解説と例句が載せられた本。いわば句作のバイブル的存在です。春・夏・秋・冬・新年に分かれ、さらに、時候・天文・地理・生活、行事・動物・植物に分類されます。手軽なものから、5000もの季題を集めた分厚い百科事典タイプまでいろいろありますが、まずは文庫本サイズで携帯しやすい歳時記を選ぶといいでしょう。歳時記をめくるだけでも、季節を感じることができますよ。

その他、日々の生活の中で見つけた俳句のテーマなどを書き留める句帳(メモ帳、ノート)と国語辞典もあると便利。

お問い合わせ

【取材協力】蔦屋書店 熊本三年坂

TEL
096-212-9111
URL
http://www.newco1.co.jp/