【394号】読書の秋にいかが? 大人に効く絵本。

「絵本」といえば「子どものための読み物」というイメージが強いですが、昨今、シニア層にも関心を持たれるなど、読者の幅が広がっています。それに伴い、大人にターゲットを絞った絵本が出版されたり、図書館や書店で大人絵本が特集されたりする機会も増えています。皆さんも久々に「絵本」に触れてみませんか。


心に深く染みわたる 優しい言葉・絵の世界

"大人絵本"のススメ。

絵本に関する高度な知識や技能、感性を備えた絵本専門士の柴田香さんに、大人ならではの絵本の楽しみ方について伺いました。

自分の内面と向き合う とっておきの時間に

「人は一生のうちに3回、絵本に出合う」といわれています。子どもの頃に読んでもらう、親になって子育て期にわが子に読む、そして、人生の終盤に自分のために読むーの3回です。絵本は生涯を通して読むことができる本です。

子どもに絵本を手渡すことは「心の種まき」のようなものだといわれますが、それは大人にとっても同じことです。即効性がある作品もあれば、後にじんわりと染みてくるものも。絵本にはむしろ、人生経験を重ねた大人だからこそ感じられる奥深さがあります。

まずは気になった絵本を開いて読んでみてください。そのひとときは自分の内面と向き合う、とっておきの時間になると思います。また、機会があれば誰かに読んでもらうのもいいでしょう。人の声の温かみや言葉のリズムなど、“ひとり読み”とは違った絵本の魅力を再認識でき、オススメですよ。

しばた・かおり

●しばた・かおり/公共の図書館や大学図書館の司書を経て2016年、絵本専門士に認定される。絵本と読者のつなぎ手となる「絵本ディレクター」として、講座や文章執筆などを手掛ける。福岡県在住。

絵本専門士とは

国立青少年教育振興機構の認定資格。子どもたちの健やかな成長を促す絵本の可能性やその活用法を、学校や家庭をはじめ、地域社会全般に普及させる活動を行っています。
http://www.niye.go.jp/services/plan/ehon/


柴田さんオススメ

○○な時に読みたい絵本5選

笑いたい時、泣きたい時…、あなたのそばに寄り添ってくれる絵本5冊をピックアップ!

元気になって笑いたい時

『つまんないつまんない』
(ヨシタケシンスケ作、白泉社、2017年/1404円)

『りんごかもしれない』『もうぬげない』などでおなじみ、ヨシタケシンスケさんの作品。現代のユーモア絵本の第一人者で、ちょっと哲学的な視点が、痛快で心地よい一冊。日常のあれこれを複雑に考え過ぎてこんがらがったアタマとココロをほぐしてくれます。

つまんないつまんない

疲れた心をリラックスしたい時

『きょうはそらにまるいつき』
(荒井良二作、偕成社、2016年/1512円)

ささいな日常の中で誰の上にも同じように輝く月。ちょっと疲れたことがあった日でも、きょう一日の頑張りを見守り、ねぎらってくれるような丸いお月さまの存在が、心を癒やしてくれるでしょう。読み終わったら、ほっとした安心感に包まれ、夜空を仰ぎたくなります。

きょうはそらにまるいつき

人生を振り返りたい時

『最初の質問』
(長田弘詩、いせひでこ絵、講談社、2013年/1620円)

「今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか」ー。長田さんの力のある言葉と、いせさんの叙情あふれる絵が織りなす世界が心に響く作品。人生の中でいくつも訪れる転機の時、手元に置いておき、その節目で読み返したい一冊です。

最初の質問

思いっきり泣きたい時

『ビロードのうさぎ』
(マージェリィ・W・ビアンコ原作、酒井駒子絵・訳、ブロンズ新社、2007年/1620円)

古典的名作『The Velveteen Rabbit』を絵本作家の酒井駒子さんが抄訳(※)。繊細で美しい酒井さんの絵は、眺めているだけで心を揺さぶられるような感覚になります。「ほんもの」ってどういうことか、じっくりと考えながら読みたい本です。

※抄訳(しょうやく)…原文を部分的に翻訳すること

モチベーションを上げたい時

『太陽と月 10人のアーティストによるインドの民族の物語』
(青木恵都訳、タムラ堂、2017年/3240円)

インドの先住民族のアーティスト10人が、それぞれの民族に伝わる物語を基に太陽と月を描いた作品です。一つ一つ緻密で丁寧に作られたハンドメード絵本に触れると、自分も一日一日を大切に暮らしていきたいという気持ちになります。大切な人への贈り物にもぴったり。


絵本に出合える意外なお店。

絵本に出合えるのは書店や図書館だけではありません。食事やお酒を楽しみながら、お気に入りの一冊を見つけてみませんか。

カフェ・バー×絵本

絵本とウィスキーのお店 島崎さぶろう書店
"隠れ家"で絵本に浸れる

手打ちうどんとステーキの店「臥璽廊(がじろう)」の2階。ズラリと並ぶスコッチウイスキーや、ハンドミルでひいた豆で入れたコーヒーを味わいながら、絵本を手にすることができます。「家庭での読み聞かせが増えるきっかけに」をテーマに選ばれた絵本は常時150冊ほど。屋根裏部屋のような隠れ家風の空間でくつろいでください。

島崎さぶろう書店

オススメの一冊

「十力の金剛石」
作/宮沢賢治 絵/佐藤厚子
松本コロタイプ光芸社

「宮沢賢治の自然への愛情と畏敬の念にあふれる物語。熊本で活躍する佐藤厚子さんが、彼の思いをすくい上げながら手掛けた挿絵が素晴らしいです。本の紙質もよく、温もりが手にも伝わってきます」

店長 吉田美樹さん

店舗情報

島崎さぶろう書店

住所
熊本市西区島崎5‐3‐15 「臥璽廊」2F
TEL
096-355-1668
営業時間
14時~21時
休業日
月曜
17席
駐車場
8台

フレンチ×絵本

食と絵本の空館 ラレーヌアリス
絵本を題材にした料理が登場

絵本セラピストがオーナーを務めるフランス料理店。店内では、約700冊の絵本を自由に閲覧できます。名物は『不思議の国のアリスコース』『はらぺこあおむしコース』など、絵本を題材にしたコースメニュー。オーナーによる絵本の朗読の後、物語に登場する食べ物を題材にアレンジした、おいしくて見た目にも楽しい料理が登場します。

オススメの一冊

「くまもとの昔話 ぼんさらや」
再話/志岐有子 切り絵/福吉里加子
熊日出版

「菊池市泗水町に伝わる“熊本のシンデレラストーリー”と呼ばれる昔話。主人公の『おふじ』が詠む詩歌の美しさに感動させられ、身近な場所の歴史に思いをはせることができますよ」

オーナー 武岡寿美さん

店舗情報

ラレーヌアリス

住所
玉名市寺田215‐1
TEL
0968-74-6688
営業時間
11時30分~15時(OS14時)、18時~22時(OS21時)
休業日
火曜(祝日の場合は営業)
36席
駐車場
30台

カフェギャラリー×絵本

大人のための絵本空間 ちっくたっく
絵本イベントを定期開催

「大人も楽しめる」という目線でオーナーが集めた約1200冊の絵本が並ぶ私設ギャラリー。自宅のリビングを改装した、木漏れ日が差すカフェ空間でコーヒーやハーブティーを飲みながら、お気に入りの絵本を探せます。毎月第4土曜は朗読の勉強会を開催、11/18(土)には絵本作家バーバラ・クーニーの読書会も予定されています。

オススメの一冊

「クリムトと猫」
文/ベレニーチェ・カパティ 絵/オクタヴィア・モナコ 訳/森田義之
西村書店

「猫が大好きだった画家クリムトの生涯を猫の目線で描いた作品です。金色を多用したビジュアルはおしゃれで、ワインを飲みながら、“見てよし読んでよし”の、大人でも十分に楽しめる絵本です」

オーナー 本多よしえさん

店舗情報

ちっくたっく

住所
熊本市北区楠1‐23‐8
TEL
096-337-1567
営業時間
月末の5日間と第4土曜の13時~17時
15席
駐車場
4台