【505号】すぱいすフォーカス – 「節税メリット」を受けれるかも!? こんなときは… サラリーマンの確定申告

「会社で年末調整の手続きをしているから、確定申告は無関係」と思っている給与所得者(サラリーマン)は少なくありません。申告をすれば税金が抑えられたり、戻ってきたりすることを知らずに損をしているかも。対象となる人が多そうな3つのケースを取り上げ、税金のプロがアドバイスします。

教えてくれたのは

大石税務会計事務所
税理士
大石 恭生さん

昭和から続く事務所の三代目。法人税、所得税、相続税などの税務に携わるほか、経営や資金繰りなどへのアドバイスも行う


[Case 1]医療費が10万円を超えた世帯【医療費控除・セルフメディケーション税制】

出産・入院などで多額の医療費が発生したときは忘れずに申告を

1年間に支払った医療費が10万円を超えていた場合は「医療費控除」の対象となり、10万円を超えた額が所得から控除されます。10万円を超えていない場合でも、所得が200万円未満の人は、医療費が所得の5%を超えていれば対象となります。医療費は世帯で合算して申告でき、治療や通院、薬代に加え、通院時の交通費なども医療費に含まれます。家族が出産や入院をした場合などは、支払いが多額になりがちです。また、自由診療のため高額な自己負担となる歯のインプラント治療も医療費控除の対象ですので、しっかり申告をしましょう。

一方、市販薬の購入に対しては「セルフメディケーション税制」があります。対象医薬品を1万2000円以上購入した世帯が該当し、1万2000円を超えた部分が所得から控除されます。医療費控除とどちらか一方を選択して申告します。


[Case 2]ふるさと納税や寄付をした人【寄付金控除】

誰でも税金の優遇措置が受けられ所得税・住民税のダブルでメリット

国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して寄付をすると「寄附金控除」の対象となり所得控除を受けられます。申告には寄付金の受領証(領収書)が必要です。

年々利用者が増えている「ふるさと納税」も寄附金控除の対象の一つです。寄付金額は所得の40%が上限で、「寄付した金額−2000円」が控除額となります。ふるさと納税を利用する際に「ワンストップ特例制度」を選べば確定申告は不要ですが、医療費控除で確定申告を行う場合や、寄付先の自治体が5つを超える場合には、この特例制度は使えず、確定申告が必要になります。

「ふるさと納税」では、所得税・住民税のダブルでメリットがあることが意外と知られていません。所得税は当年分の税額が安くなる形で控除され、住民税は翌年支払う税額が安くなる形で控除されます。


[Case 3]家族構成が変わった人【扶養控除】

親の面倒を見るようになったら「扶養控除」の申告を

勤務先に年末調整の資料を提出した後に、結婚したり子どもが生まれたりして家族構成が変わった人は確定申告で「扶養控除」の申請をしましょう。親を「被扶養者」とした場合も対象となります。

被扶養者(扶養親族)とは、「生計を一(いつ)にする」者を指しますので、別居していても生活費や医療費などを負担したり、仕送りをしたりする場合は当てはまります。親族は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を言い、「おじ・おば」も生計を一にすれば扶養親族となります。

大事なポイントは「12月31日時点」が基準となることです。申告をすれば、その年の所得税や住民税の控除が受けられます。


他にも得するかもしれないケースが

上記のほか、「住宅ローンを組んだ場合」「家を売って損をした場合」「家族にフリーランスや自営業者がいる場合」など、確定申告をした方が得をするかもしれないケースがあります。また会社の業務に必要な図書費や資格取得費など、まとまったお金を自費で支払った場合は「特定支出控除」が認められる可能性があります。確定申告をすることで納め過ぎた所得税の還付を受ける「還付申告」は、確定申告期間(2月16日~3月15日)とは関係なく、申告対象の翌年1月1日から5年間、いつでも書類を提出することが可能です。詳しくは税理士や所轄の税務署に相談するか、国税庁の「タックスアンサー」で調べてみましょう。