【519号】すぱいすフォーカス – 女性に多い痛み疾患 「線維筋痛症」を知っていますか?

近年、米女性歌手や日本の有名人が患っていることを公表して話題になった「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」。症状や治療法などについて、安政町メディカルクリニックの木原純一医師に聞きました。

全身に激しい痛みが続く 40代前後の女性に多い病気

「線維筋痛症」は、体に炎症や損傷など明らかな原因がないのに、全身の激しい痛みが3カ月以上続き、過度の疲労感を感じる病気です。

日本での有病率は人口の約1.7%で、約200万人の患者がいるといわれています。中でも、女性は男性の約5倍と患者数が多く、40歳前後での発症が多いようです。

病気の原因は不明 ストレスをためずに予防を

線維筋痛症の原因は不明です。そのため対症療法となり、「軽度有酸素運動療法+精神心理療法」など、症状に応じて組み合わせて治療します。1年以上の長期療法になります。

ストレスが病気の引き金になることが多いため、できるだけストレスをため込まないことが予防につながります。

皆さんや周りの人が、「全身のあちこちが痛い」「体がだるくてつらい」など、原因が分からない不快症状に悩まされていたら、医師や相談窓口に問い合わせてください。


症状

慢性的な痛みに加え さまざまな症状が

主な症状は、全身の広範囲に起こる、慢性的な激しい痛み。その他、筋肉のこわばりや、けいれん、しびれ、倦怠(けんたい)感・疲労感、睡眠障害、うつ状態、頭痛、腹痛、顎(がく)関節症状など、さまざまな症状を伴います。痛みの箇所や強さ、頻度、また、痛みに伴う症状には個人差があります。


診断方法

3カ月続く全身疼痛(とうつう)と圧痛点の痛み

線維筋痛症の診断は、(1)体の広範囲の痛みが3カ月以上続く (2)体の左右対称の18カ所(圧痛点・右図)を指で押して11カ所以上が痛むこと—が条件となります。(1990年米国リウマチ学会分類基準による)


治療法

症状に応じた対症療法

抗うつ剤や抗けいれん薬を使う薬物療法と、非薬物療法があります。薬を使わない場合は、病気の説明などの患者教育、軽度有酸素運動療法、理学的療法、精神心理療法があり、ペインクリニックでは痛みを軽減させる神経ブロックも行います。


何科を受診すればいいの?

痛みやリウマチを 治療する医療機関へ

特に専門の診療科はありませんが、痛みを治療するペインクリニック、リウマチ性疾患の治療を行うリウマチ・膠原(こうげん)病内科、総合診療科、神経内科、心療内科、精神科などに問い合わせてください。

できれば日本線維筋痛症学会会員が診療する医療機関がよいでしょう。また学会専門医はいませんが、診療可能な医療機関を同学会HPで調べることができます。

【取材先】
木原 純一 医師

(医)社団フィリア会 安政町メディカルクリニック 理事長
ペインクリニック学会専門医 ペインクリニック内科
日本線維筋痛症学会会員


患者さんの声

痛みを理解されず、つらい日々 病気の存在を知ってほしい

幼少期から、針で刺されるような痛みや、内臓を握りつぶされるような痛みに苦しんでいました。血液検査などでは異常が見つからないため、家族にも理解してもらえず、病院で診察を断られることもありました。36歳で「線維筋痛症」と診断されたときには、やっと病名が分かったと安心しました。

現在は、ヘルパーさんにサポートしてもらいながら1人で暮らし、療養に専念しています。痛みが出たら他のことに集中して気を紛らし、午前中はゆっくり自宅で休み、午後に活動するという、私が過ごしやすい生活リズムで毎日を送っています。

2年前、知人と一緒に、患者団体「スマイルハート」を立ち上げました。県内に3人いるメンバーができる範囲で、患者同士の交流会や市民への啓発活動を行っています。多くの人に病気の存在を知ってもらい、私たち患者の「つらい、苦しい」という気持ちに寄り添ってもらえたら救われます。

線維筋痛症の患者団体「スマイルハート」 代表加藤 マサヨさん(48)


1人で悩まないで

線維筋痛症の患者団体「スマイルハート」

年に2回、春は八代市、秋は熊本市で患者同士の交流会を開催。5月10日(日)、下通のCOCOSA前で線維筋痛症の啓発活動を予定しています。

代表・加藤さん

smile.for.me.1015@docomo.ne.jp


「きんつう相談室」

線維筋痛症患者の相談を受け付け中。カウンセリングや生活改善のアドバイスなどを受けられます。

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お問い合わせ

きんつう相談室

TEL
080-7354-8259
メールアドレス
kinntuu@soudannsitu.main.jp

「線維筋痛症友の会」

線維筋痛症の啓発活動や、患者同士の情報交換などを行っています。

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知ってる?「ヘルプカード」

線維筋痛症などの病気や障がいのある人などが、災害時や日常生活で困ったときに、周囲に支援や配慮が必要であることを知らせるカード。このカードを見かけたら、声を掛けて手助けをお願いします。