【523号】すぱいすフォーカス – 金継ぎの世界
大切にしていた器、思い出のあるカップなどはほんの少しでも縁が欠けてしまったらショックなもの。熊本地震で割れてしまった器を、なかなか捨てられないという方もいるのでは…。ならば〝金継(きんつ)ぎ〟で修理してみてはいかがでしょう。器に思いがけない模様が生まれ、新しい命が宿り、さらに愛着が湧いてきます。金継ぎ教室『継』主宰の一鬼幸恵さんにお話を聞きました。
修理を依頼するという選択
〝割れ〟や〝欠け〟のほか、表面が剥離している〝ほつれ〟、目に見えにくい〝ひび〟〝にゅう〟といった大小の亀裂なども、金継ぎの技法で修理することができます。「キレイに修理したい」という方は、プロに相談してみましょう。器の状態などを見て、見積もりを出してくれますよ。
自分で直すという選択
ホームセンターなどで修理キットを購入できますが、器の素材によっては前処理が必要だったり、割れ方の状態などで修理の方法が異なったりするため、最初は金継ぎ教室などに通って、指導を受けるのがお勧め。教室に通いながら欠けた自分の器の修理もでき、技術も習得できて一石二鳥です。
そもそも金継ぎって?
「〝金継ぎ〟とは、割れたり欠けたりしてしまった陶磁器やガラスなどを修理する技法のことです」と、一鬼幸恵さん。修理したい部分に漆(うるし)を塗って接着して固定させ、金や銀、スズ(錫)などの金属粉を重ねて仕上げる日本の伝統的な技法。なんと、縄文時代の土器にも漆で修復した痕跡が残っているとか。室町時代ごろから、アートとしての技法も受け継がれてきたそうです。
一般的な〝金継ぎ〟では、漆と小麦粉を水で練った麦漆を塗って割れた破片を接着。欠けた部分は、米などで作る刻苧(こくそ)漆を使って埋めます。1カ所が接着するのに2週間ほどかかり、固まったら凸凹を削って平らに。こうした工程を数回繰り返し、金属粉で化粧して、乾いたら修理完了です。
一鬼さんは、「金や銀、スズなどの金属粉、色をつけた漆など、仕上げに使う素材によって、出来上がりの雰囲気が変わるのも〝金継ぎ〟の魅力の一つです」と話します。プロに頼むも良し、技法を学んで自分で直すも良し。愛着ある器を長く使いたい方にお薦めです。
平成28年熊本地震で割れてしまった器を一鬼さんが修理。接着した部分がアクセントになり、新鮮な印象に。もちろん、元の状態同様に使えるようになります
教室の生徒さんに聞いてみました
修理すると器の趣きが変化
大谷ますみさん(70歳・阿蘇市)
以前から陶器が好きで集めていたのですが、傷が入ってしまったものも多く、気になっていました。そこで一度修理に出したところ、全く違う景色になって戻ってきて感動したんです。今は月2回、教室に通って金継ぎの技法を学んでいます。〝金〟が入った途端に今までとは違う器に見えてくるのが金継ぎの魅力です。購入した金額より修理費の方が高くなることもありますが、かかった金額以上の価値があると感じています。
漆で接着した部分は、2週間ほど乾燥させて固定させます。この作業を何度も繰り返すため、一つの器の修理に半年ほどかかることも
先生からひとこと
金継ぎに欠かせない漆にも注目
金継ぎの技法を用いた器の修理をしながら、技法を学びたい方や自分で修理したい方向けに少人数制の教室を開いています。金継ぎの魅力の一つは、使う材料の全てが自然素材だということ。特に、日本古来の天然塗料であり、金継ぎでは接着剤としても使う「漆」の万能性には、先人たちの知恵の蓄積を感じます。
金継ぎ工房『継TSUGI』主宰 一鬼幸恵さん
金継ぎの道具。漆、との粉、数種類の金属粉、漆を練ったり塗ったりする時の竹べらなど。金の粉などはかなり高価になります
欠けた部分には刻苧漆を成型して埋めます。器の色や見た目に合わせて選んだ金属粉で化粧します
割れた破片が紛失した3カ所を埋め、それぞれに丸金と銀、スズを使って修理した湯飲み。修理したことで器の雰囲気が変わり、さらにおしゃれに
ここで金継ぎ教室・金継ぎ修理やってます!
継 TSUGI(つぎ)
・教室
・修理
呵呵庵(かかあん)
・修理
「Tourner」アトリエ(陶芸家 星野功実)
・教室
※現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のためお休み中
金継ぎ教室・繕い古古(ふるふる)
・教室
・修理
※7月2日(木)〜12日(日) 金継ぎ教室・繕い古古作品展を開催(予定)
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区水道町3-4 グリーンハイツ202
- TEL
- 096-372-3101
- 店舗ホームページ
- http://tukuroifurufuru.blog.fc2.com/
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