【557号】ちょっとした心掛けでスイッチON! あなたのやる気を探そう!

長引く自粛生活や日々の忙しさで、「何だか気分が上がらない」「やる気が出ない」「前向きになれない」と感じている人はいませんか。そこには、脳内のホルモンが関係しているのだとか。ホルモンの仕組みを知って、あなたの「やる気」の入り口を見つけてみませんか。

幸せホルモンを増やして「やる気」をアップ!

最近、よく耳にする「セロトニン」や「オキシトシン」といった言葉。“幸せホルモン”とも呼ばれ、「やる気」と深い関わりがあるといいます。専門家に詳しく聞いてみました。

お話を伺ったのは…

よもぎクリニック副院長 精神科医
松崎 志保 医師


やる気の鍵を握る3つのホルモン

意欲が低下して「やる気が出ない」原因は睡眠不足や心身の疲れなどさまざまですが、人の脳には感情や意欲に影響を与える脳内物質が存在し、それらが不足していることが要因ともいわれます。

その代表が、いわゆる〝幸せホルモン〟と呼ばれる「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」です。「セロトニン」は自律神経に深く関わり、不足するとストレスやイライラの原因に。「オキシトシン」は〝安らぎホルモン〟や〝思いやりホルモン〟とも呼ばれ、もともと母子間のスキンシップで生まれるホルモンとして知られていました。また、「ドーパミン」はまさに〝やる気を生み出すホルモン〟といわれ、何かの目標を達成していくことで活性化されます。

通常の暮らしでは、これらの脳内物質が自然に保たれていた人でも、コロナ禍で外出の機会が減ったり、人との交流が制限されたりすることで不足してしまい、イライラや気分の落ち込み、やる気が出ないといった症状を招くと考えられます。しかし、日々の行動や食事の見直しなど、ちょっとしたことで増やすことが可能です。自分に合った方法をバランス良く取り入れ、やる気を持続できるよう心掛けましょう。


セロトニン Serotonin

自律神経を整える脳内神経伝達物質。不足すると自律神経(交感神経、副交感神経)のバランスが乱れ、イライラやストレス過多、不眠の原因に。うつ病を引き起こす可能性も。甘い物はセロトニンの生成を助ける。

増やすには

太陽の光を浴びる

太陽の光が網膜を刺激して脳に作用し、セロトニンの生成を活性化。1日15〜30分、外に出て日光を浴びることを“継続する”ことで、セロトニンを生成しやすい脳に。ウオーキングのようなリズム運動も分泌を促進するので併せて行うのがおすすめ。

大豆食品や乳製品を食べる

セロトニンの原料となるトリプトファンを摂取して。トリプトファンは納豆や豆腐、チーズ、ヨーグルトなどに多く含まれ、それらを積極的に取るのが効果的です。


オキシトシン Oxytocin

“安らぎホルモン”といわれ、スキンシップによって分泌される。母乳の分泌を促すなど、もともとは出産・育児の際に分泌されるホルモンと認識されていたが、配偶者や恋人とのスキンシップなどでも分泌されることが判明。また“思いやりホルモン”ともいわれ、人に優しくすることでも分泌が促される。

増やすには

スキンシップを図る

見つめ合う、手をつなぐ、ハグするなど、特に配偶者、子どもや恋人とのスキンシップが効果的。家族とのだんらんや心を許せる友人とのおしゃべり、ペットとの触れ合いも◎。

人に優しくする

人に親切にしたり、助けたり、プレゼントを贈ったりするなど、相手を思いやることでも増えます。


ドーパミン Dopamine

「やる気」のもとになる脳内神経伝達物質。実際に行動を起こすことによって分泌が増え、寝転がっている時など活動していない時には分泌が減る。やる気を出したいと思ったら、まず、「動く」ことが肝心。

増やすには

チーズや大豆食品を食べる

ドーパミンの原料となるチロシン(アミノ酸)を摂取。乳製品に多く含まれ、中でもチーズは効率よく摂取が可能。他に、豆腐、納豆、おから、きなこなどにも多く含まれます。

小さな目標を達成する、自分に報酬を与える

ドーパミンは何かを達成することでより活性化されるため、小さな目標を設定し、達成感を得ることが大事。自分へのご褒美を設定するのも効果的。


3つのホルモン分泌に共通すること

腸内環境を整える

幸せホルモンは腸の動きとも大きな関わりがあり、特にセロトニンの生成には腸内フローラ(腸内細菌の集まり)が関与しているため、腸内環境が良くないと、ホルモンをつくる材料になる物質をうまく取り込めず、心身の不調の原因に。

ポイント

  • 食物繊維や発酵食品を積極的に取る
  • 腸のマッサージをする

※気分の落ち込みや食欲不振、体調不良が長く続くようなら、一度、専門医にご相談を。


「やる気スイッチ」の入れ方

3つのホルモンの特徴を踏まえ、考え方や行動など、日常生活の中でやる気を起こす具体的な方法をご紹介! 周囲に、いつも元気な人、活力のある人がいたら、その人はやる気スイッチの入れ方が自然に身に付いているのかも。尋ねて参考にしてみては。

家事をしたくないとき

小さな目標を決める

「今日は風呂掃除だけを頑張ろう」など、達成しやすい目標を決めて取り組みましょう。小さな目標を設定して、小まめに達成感を得ることがドーパミンアップのコツ。

1つクリアできたらご褒美

「この家事を終えたら、あのお菓子を少しだけ食べよう」「週末の午前中はリビングを片付けて、終わったら好きなアイドルの動画を見るぞー!!」など、ご褒美を設定することで“やる気ホルモン”の活性化につながります。

やらない

「今日は総菜を買って帰ろう!」―。時にはやらないという選択肢もやる気を保つには大切です。今日必ずやらなくてはいけないこと以外は無理せず「今日はここまででいいじゃない、残りは明日!」と割り切って、必要最低限にとどめましょう。


仕事をしたくないとき

まずは、動いてみる

「行きたくない」「したくない…」と思っていても、「行ってみたら意外と平気だった」「やってみたら簡単にできた」ということも。頭の中で考えるより、まず行動することがドーパミンを増やす一つのカギですよ。

終わった時のことを考える

「今日の仕事が終わったら新発売のビールを買って帰ろう」「このプレゼンがうまくいったら、欲しかったバッグを買おう」など、終わった時の楽しみ(ご褒美)を設定して。

シャワーを浴びる

少し熱めのシャワーをサッと浴びることで交感神経(自律神経のうちアクセルの役割)が刺激され、活動モードに。朝におすすめです。

互いに褒め合う

職場の仲間同士で声を掛け合ったり、褒め合ったりすることで“思いやりホルモン”(オキシトシン)が分泌され、お互いのやる気スイッチがONに!


介護、育児に追われているとき

フリーになる時間を持つ

定期的に1人になる時間を設け、ぼーっとしたり、好きな音楽を聴いたり、読書をしたりするなどリラックスして過ごし、リセットしましょう。

やりすぎない、完璧にしようと思わない

次々と「やらなくちゃいけないこと」が目の前に現れてきても、すべて完全にクリアしようとは思わないで。頑張り過ぎないことがコツで、家事同様、完璧を求めると、かえってできないことで自分を責め、やる気がダウンしてしまいます。

マッサージをしてあげる

相手を思いやりながらスキンシップすることで、自分も優しい気持ちになり、“安らぎ&思いやりホルモン”のオキシトシンが大量増加!