【562号】ペットの介護を考える

室内飼いが主流となり、医療技術も進歩したことなどから、ペットもずいぶんと長生きするようになりました。それはとてもうれしいことですが、その一方で、介護が必要な犬や猫も増えています。大切な家族の一員であるペットの介護に直面した時、私たちは何をしたらいいのかを考えてみました。

熊本市の動物看護師、増子元美さんが主宰する団体「コンパニオンアニマルパーティー」のブログから体験談を紹介します。紙面で紹介しきれない詳細は各リンクから。


家族として最期まで寄り添うために

たくさんの思い出とともに高齢の犬や猫には介護が必要になります。飼い主も仕事や家事との両立による過労や、精神的なストレスに悩む人が多いようです。ペットの高齢化の実情と、専門家からのアドバイスをご紹介します。

今までにない様子に要注意 種類により現れやすい症状も

犬や猫も、高齢になると体のさまざまな部分に衰えが出てきます。足元がおぼつかなくなったり、高所に登れなくなったりするなど、今までにない様子が見られたら要注意。全般的に腎臓病になることが多い猫と比べ、犬は犬種によって現れやすい症状が異なります。チワワやマルチーズは心臓病にかかりやすいなど、高齢化に伴う変化の傾向を知っておくことも大切です。

また、14〜15歳くらいからは認知症に留意が必要です。認知症になると粗相をしたり、夜鳴きしたりすることも。若い時から脂肪酸を含んだ食事を与え、ストレスのかからない生活環境を整えてあげましょう。

ペットの介護は飼い主にも肉体的、精神的な負担がかかりがちです。介護疲れにならないよう、ペットを一時的に預かってくれる施設を利用するなど、さまざまなサービスや用具を上手に利用しながら、お世話をしてあげてください。癒やしを与えてくれた「家族の一員」に、最期まで温かく寄り添ってほしいと思います。

ともだ動物病院 院長
塘田健二さん

https://tomoda-k.com/


メグちゃんの場合(柴犬・16歳 メス)

見えない、立てない、食べられない 夜鳴きと激しい旋回行動も加わり…

「15歳になる前、突然『前庭疾患』の症状が出ました。目が回って立てなくなり、倒れたままグルグルとのたうちまわる発作がずっと続くんです。驚きと恐怖で、とても動揺しました」と坂田恵子さん。その後、白内障による失明や認知症による夜鳴き、腎臓病なども重なり、夜も眠れない状態が続いたといいます。

思わず、SNSでSOSを発信。「その時、複数の知り合いが在宅介護を支援してくれる増子さんを紹介してくれたんです。すがる思いで連絡を取りました」。動物看護師の立場で状況を聞き取り、介護の計画を一緒に立ててくれたそうです。「話を聞いてもらうだけでものすごく救われました」。それから1年半にわたる介護生活がスタート。夜は1日おきに家族と交代で寝ずの介護という日々が続きました。「肉体的にも、精神的にも楽ではありませんでしたが、メグと濃厚に触れ合えた1年半でした。最期は自宅でと決めていたので、家族と一緒にその時を迎えられたのはお互いにとって幸せだったと思います」

部屋の中をぶつからずに歩行器で歩けるように、周回用のフレームを自作。寝たきりや床ずれも防げたそうです

(写真右)注射器による給餌も (写真左)メグちゃんが亡くなった3カ月後、縁あって坂田家に迎え入れられた保護猫の「なつ」ちゃんと坂田恵子さん(60歳/熊本市)

坂田さんが介護体験から学んだこと

ネットで探した他の方の介護事例はとても参考になり、励みにもなる

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デコちゃんの場合(プードル・15歳 メス)

老化による衰えをそばでサポート 後悔のない介護で、少しでも長生きを

5歳だったデコちゃんを引き取って10年。「この子が来てから、家の中がずいぶん明るくなりました」と話す福馬満佐子さん。肝臓病を乗り越えて元気に過ごしていたものの、2〜3年前から心臓が弱ってせき込むなど、高齢化による症状が現れ始めました。消化器の衰えからか下痢や粗相が増え、オムツをするように。福馬さんは、弱ってきた足腰をサポートするため床にマットを敷き、大好きな散歩は生活リズムを崩さないためにも朝夕欠かさず続けています。一昨年には、白内障で目が見えなくなり、激痛を和らげる手術も行いました。「老いが進むのは仕方がないこと。今は、後悔しないよう介護しながら、少しでも快適に長生きしてくれればと思っています」と話します。

福馬さんが介護体験から学んだこと

最期まで付き合う覚悟を持って、ペットを飼い始めることが大切

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「目が見えなくなったため、家具などにぶつからないようガードを付けました。このまま散歩にも出掛けます」と福馬さん(56歳/熊本市)


ぶっちーくんの場合(保護猫・8歳 オス)

できるだけのことはしたいと 転院して抗がん治療を

とりもちに引っ掛かっていたところを保護された「ぶっちー」くん。縁あって斎藤智恵さんの家族になることが決まり、病院で検査してもらったところ白血病のキャリアだということが分かったそうです。

発症はなかったものの、6歳になった一昨年、水腎症と診断され「手の施しようがない」と宣告されました。何かしてあげられることはないかと転院したところ、肝臓リンパ腫の診断で抗がん剤による治療を行うことに。「最後にできるだけの治療ができたのは、せめてもの救い。毎日通院しながら点滴をし、先生に診てもらうことで精神的にも落ち着きました。昨年の4月に亡くなるまでの時間を在宅で過ごせたのは本当に良かったと思います」と斎藤さんは話してくれました。

斎藤さんが介護体験から学んだこと

必要に応じて、複数の病院で診断を受けてみて判断することも大切

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斎藤智恵さん(55歳/熊本市)とリードを着けての散歩が日課だったぶっちーくん


ぷーちゃんの場合(アメリカンショートヘア・18歳 メス)

訪問サービスを利用しながら 1人暮らしでも在宅介護を

宮城恵子さんが初めて飼ったのが、アメリカンショートヘアの「ぷー」ちゃん。加齢による変化が見られたのは、15歳を過ぎたあたりでした。突然、足を引きずるようになったので病院で診てもらったところ心筋症との診断。その後、定期検査で腎臓も悪くなっていることが分かりましたが、いずれも投薬などで改善したそう。

ドライフードに口をつけなくなったのが16歳を前にした頃。「訪問看護をお願いしていた増子さんに相談しながら、食べられるものを懸命に探しました」。脱水するといけないので、並行して病院の点滴も。最後の2カ月間は自力での食事や飲水もできなくなったそうです。「年も年だったので、そういう時期に来たのかなと思っていましたが、一方でできることはやってあげたいという思いがありました」。呼吸がきつそうだったので、酸素吸入器もレンタルしたそうです。

「介護自体がきついということはありませんでしたが、1人暮らしだったので仕事に行っている間に命尽きてしまうようなことがあったらと心配でした」。そんな時に助かったのが訪問サービスだそうです。不在中に増子さんにぷーちゃんの様子を確認してもらい、必要に応じた処置もお願いしていたそう。「元気な頃からぷーを見てくれていたので、本当に安心してお願いできました」

最期は自宅のベッドの上、宮城さんの腕の中で天寿を全うしたぷーちゃん。「〝在宅でみとらせてくれてありがとう〟という気持ちです」

宮城さんが介護体験から学んだこと

介護の悩みを相談できる人がいるだけで、気持ちがとても楽に

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(左)宮城恵子さん(52歳/熊本市)と現在の愛猫たろうくん(右)亡くなる1年前のぷーちゃん


在宅での介護は〝守りの治療〟です。 変化に早めに気付いてあげて

熊本市でペットの在宅介護支援の事業をしている増子元美さん。今回ご紹介した4人の飼い主さん全員がお世話になったそう。介護のポイントを聞きました。

増子元美さん

コンパニオンアニマルパーティー代表。動物看護師。訪問介護、介護相談などを通じて、飼い主さんの精神的ケアにも力を入れる。

病院で行われるのが〝攻めの治療〟だとすると、飼い主さんによる在宅での介護は〝守りの治療〟だと話す増子元美さん。「動物にとっては、飼い主さんがそばにいてくれるだけでうれしいもの。また、お気に入りの場所や使い慣れたベッドなどがあるだけで気持ちが落ち着くものです。こういう癒やしが、病気から動物を守る力になると思っています」。自宅でいかに楽しく、痛くなく、苦しくなく、いい気持ちで過ごせるかを考えてあげることが在宅介護をする上で大切だそうです。

介護の相談で一番多いのが、夜鳴きと寝たきりによる床ずれに関すること。「夜鳴きは認知症を原因とするケースが多いですが、鳴く行為には必ず原因があるもの。喉が渇いた、暑い、おなかが痛いといった考えられる要因を、水を飲ませたり、換気をしたり、マッサージをしたりすることで一つ一つ潰していくと、意外と収まったりするものです。床ずれ予防には、清潔を心掛け、車椅子や歩行器などを使って歩く練習をすることも有効です。介護予防の観点では、若いうちからしっかり運動させておくことや、日頃から動物たちとしっかりコミュニケーションを取り、観察することで早めに変化に気付いてあげることも重要でしょう」

どうしても在宅での介護が難しくなった場合には、入院や老犬施設などへの入所も選択肢としてはあります。いずれにしても、飼い主が一人で抱え込まずに、上手に息抜きをしながら最期まで寄り添ってあげることが大切です。増子さんのブログやフェイスブックには、熊本でペットの介護と向き合った貴重な記録が詳細に記録されています。

お問い合わせ

コンパニオンアニマルパーティー

TEL
080‐4383‐1199
メール
wanp@cap-masuko.com

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提供 コンパニオン アニマルパーティー

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