【575号】農家になる、という選択。
今、農業を職業の選択肢として考える人が増えています。でもどうすれば、農家になれるのでしょうか? 田畑はどうすれば手に入る? 農機具は何が必要? そもそも、何の作物を作ればいい? どのくらいの規模で農業をやればどのくらいの収益が上がる? とにかく分からないことだらけです。でも、ご存じでしたか。熊本県は新規就農者にとっても優しい県でした。
農家でなくても農家になれる!
農業県・熊本は就農サポートが充実
熊本は全国有数の農業県。平成30(2018)年度の農業産出額は全国第6位、生産農業所得第5位の規模を誇っています。県内各地で、それぞれの地形や気候を生かした多彩な農産物が栽培されており、新規就農がしやすいのも特徴です。
[知ってました? その1]熊本の認定新規就農者数はなんと日本一!
令和2(2020)年度での県の認定新規就農者(農業経営基盤強化促進法に基づいて青年等就農計画を作成し市町村から計画の認定を受けた者)数は656経営体で、なんと全国第1位。数字が公表された平成27年からずっとトップを維持しています。熊本県は先輩新規就農者が多く、農業を始めたい人にとって恵まれた環境なのです。
[知ってました? その2]昨年度の相談件数は887件。農業は注目されているんです!
令和2年度に『熊本県新規就農支援センター』が受け付けた相談数は累計887件(相談者720人)と、前年度の539件から急増しています。コロナ禍の影響もあると思われますが、非農家の人にも〝農業〟が職業の選択肢の一つとして認識され始めていることは間違いないようです。
[知ってました? その3]充実している就農への支援制度。これなら"農業"、やれるかも!!
熊本県には県が認定した「熊本県認定研修機関」が19団体もあり、幅広い選択肢の中から希望の研修品目や、地域などに応じて研修先を選ぶことができます。JAやNPO法人、農業大学校などの組織・団体が、研修をしっかりバックアップしており、そこが熊本の大きな特徴といえそうです。また、これらの機関で研修を受ける人は、国の支援制度である「次世代人材投資事業(準備型)」の対象となり、最大で年間150万円(最長2年間)の交付金が受けられます。さらに研修終了後に認定新規就農者として独立すると、49歳以下の人を対象にした「次世代人材投資事業(経営開始型)」という交付型の支援制度が受けられるほか、無利子・無担保の融資制度などのサポートも用意されています。
[新規就農ストーリー CASE1]角心(かくしん) 拓也さん(39歳・宇城市)の場合
どこで研修するかが大きなポイント! 師匠の背中を追い掛けながら まずは同世代の公務員並みの所得を
30歳を迎える頃、以前から憧れてい た〝起業〟にチャレンジしたいという思いが強くなっていったという角心拓也さん。農家の手伝いのアルバイト経験から「農的暮らし」に対する憧れもあり、農家になることを思い立ちます。また、海外でオーガニックやベジタリアンの生活に接したことで「やるなら有機農業」の気持ちが固まっていきました。
インターネットで調べて、熊本有機農業研究会が新規就農希望者を対象に行っていた養成塾に入塾。この研修先で出会ったのが有機農業法人・肥後あゆみの会代表の澤村輝彦さんでした。
「初めて会った時に『有機農業はそんなに甘いもんじゃないぞ』とガツンと言われました。『やるんなら家族をちゃんと養っていける農業をやれ』。その言葉でスイッチが入りました」
澤村さんの下で1年間研修した後にトマト農家として独立。現在は肥後あゆみの会の生産者として、70aのハウスを奥さんと2人で管理しています。就農時に立てた5カ年計画の目標値を上回る実績を残しながら、今年7年目に突入。「同世代の公務員と同程度の収入が最低限の目標」と話します。
「有機農家の先輩・師匠である澤村さんとの出会いから、〝何を学ぶかではなく、誰に学ぶか〟が大事だと実感しています。いつかは、自分もそういう立場に立てればと思っています」
(左)「肥後あゆみの会が販売を一手に担ってくれることで、栽培に集中できるのはとても恵まれた環境だと思います」と角心さん (右)全国の生産者を対象に行われた「栄養価コンテスト」秋ミニトマト部門で今年、最優秀賞を受賞
角心さんは18歳から26歳まではバックパッカーとして国内外を旅していたそう
[新規就農ストーリー CASE2]山本章太さん(30歳・水俣市)の場合
脱サラして就農。リタイアする先輩農家の 不知火(デコポン)園地をそのまま借り受け 1年目から計画以上の収穫を実現!
「天候に恵まれ、期待以上のデコポン が出来ました」と、収穫を終えた不知火(デコポン)の木に囲まれて山本章太さんは笑顔を見せます。結婚して子どもが生まれることになり、夜が遅くなりがちで転勤もある前職から転職を決意。「いろいろな職種を検討しましたが、ピンとこなくて…。そんな時、県の新規就農相談会に参加しました」。新規就農時の青年等就農資金制度、芦北地方農業振興協議会のサポートの充実などを知り「これならできる!」と感じたそうです。「父は柑橘(かんきつ)農家でしたが、後継ではなく、第三者継承を選択。高齢で離農する方から約500本の果樹が栽培されている園地を借りられることになり、ほとんど初期投資せずに就農できました」
就農前には、JAあしきたのサポートで座学や農家での1年半の研修を受けたそう。山本さんは、柑橘農家を選んだ理由を、「芦北はデコポンの産地としてブランド化されていて価格が安定していること。計画的に仕事を進めることができれば、子どもと過ごす時間が持てること」と話します。
現在、露地40a、ハウス23aを1人で管理。昨年末から今年にかけて、初めての収穫を経験しました。「頑張った分だけ返ってくるところにやりがいを感じています! 自分の性格に合う仕事だとも実感。今後は、もっと規模を拡大したい」と話してくれました。
山本さんの園地は、不知火海を望む水俣市街地に程近い高台にあります。JAあしきたの果樹研修生第1号として、就農を考える人たちが参加する現地バスツアーの受け入れを行うほか、農業の魅力をインスタ(#芦北地方農業振興協議会)でも発信中です
栽培している不知火はJAの光センサーで糖度をチェックし、合格したものが「デコポン」の名で出荷されています
農家になるまでの道のり
まずはここへ相談してみて! 就農までのあらゆる課題をサポートしてくれる
熊本県新規就農支援センター
「農業は未経験。何から始めたらいいの?」という人向けのワンストップ相談窓口。〝就農〟までの道すじを丁寧に提示してくれます。セミナーや相談会、現地研修バスツアーなどの案内のほか、移住相談会の紹介や就農後の支援制度の案内なども行っています。また、相談者が研修を希望する地域、農産物、栽培方法などを踏まえ、県内に19ある県認定研修機関の中から希望に沿う研修先を紹介してくれます。まずは、相談会に参加してみては。
■熊本県新規就農セミナー&就農・就業相談会/7月3日(土)
■ミニ相談会/5月28日(金)
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