【581号】2021 今を楽しむ 未来に備える 30代、40代からの親子で考えるセカンドライフ

「セカンドライフを心豊かに過ごしたい」。そんな意欲的な人たちと、その子ども世代に向けて、今を楽しむコツと未来に備える方法をテーマごとに伝えるシリーズ「セカンドライフ特集2021」。第1回は、相続と不動産活用、靴選び、移住・定住についてお伝えします。〈次号は9月掲載予定〉

いざというときに慌てないために知っておきたい 「相続」Q&A[Part1]

「相続」と聞くと、何だかとても難しい話で、面と向かって親子で話し合う機会は少ないかもしれませんが、避けては通れない問題です。親子が元気なうちに、と思っていても、具体的に何から始めてよいのか分からない人も多いはずです。準備に必要なことなどを、専門家に聞きました。

話を聞いたのは

上田法律事務所 代表
上田 祐輔 弁護士

全てを一度にとなると、時間も労t力も必要です。少しずつ、できるところから始めていきましょう。


[Q1]「相続への準備」と言っても、何から手を付けていいのか分かりません。

A

同じような話をされる方がたくさんおられますが、相続の問題は早いうちに親子で情報を共有し、整理しておくことがとても大切です。認知症などで自己判断が難しくなったり、事故に遭い突然亡くなられたりする場合もあります。終活の第一歩として、できるところから準備を始めてみてはいかがでしょう。

では、何から始めればよいのか―。まず「相続」の当事者には被相続人と相続人がいます。多くの場合は、被相続人が親御さん、相続人が配偶者、子どもなどとなります。一見、相続準備と聞くと、親世代がやるべきことと思われがちですが、それぞれに準備をしたり、情報を共有しておくことで、相続が必要になった場合の手続きがスムーズです。ポイントに沿って紹介します。


親世代(被相続人)の準備

(1)財産の整理・把握

自分にどのような財産があり、どこの銀行にいくら預けているのか全体を把握できていないことがよくあります。銀行に預けている預貯金はもちろん、不動産や株などについても把握が必要です。全く把握できていない状態で突然亡くなられた場合、残された家族が財産を把握するのに、とても時間がかかり大変な作業となります。

また、財産の内容や配偶者、お子さんとの関係性によっては、生前贈与を検討する方もおられると思います。税額軽減の特別措置などもあるので、生前贈与を考えておられる場合は、専門家に相談されるとよいでしょう。

(2)財産のリスト化

財産の把握ができたら、次はその財産をリスト化してみます。

  • どの銀行にいくら貯金しているか
  • 不動産の概要
  • どの証券会社と、どのような株の取引をしているのか

右記以外にも、相続できるものがあれば詳しく書き出しておきます。できたらこの内容をパソコンなどでまとめておくと、財産目録として活用できます。パソコンがない人は、通帳や不動産登記簿謄本などのコピーをまとめておく方法もよいでしょう。

(3)遺言書の作成

いざ相続が発生した場合、被相続人の遺言書があるときは、基本的にはその内容が優先されます。遺言書では被相続人の方が今ある財産を、どの方にどのように分け与えたいのかを示しておきます。

遺言書がない場合は、法定相続分に従った分割協議を行うのが一般的です。ただ、中には血縁者以外の人に特別寄与料(※)として渡したいという思いがある方もいます。遺言書がないと財産を渡すことが難しくなるので法定相続人にも分かりやすいように、その理由などを書いておくとよいでしょう。

遺言書がないことで、遺産分割協議がこじれて“争族”になることもありますので、大切な家族の今後のためにも、できる準備をしておくことをお勧めします。

※特別寄与料とは…

2019年7月から、相続人以外の親族(被相続人の子どもの配偶者など)が介護や家業などに貢献していた場合、特別寄与料として請求もできるようになりました。


子世代(相続人)の準備

親が元気なうちに相続について話し合う機会を設ける

親が亡くなった後の話を切り出すのはなかなか難しいものですが、これは元気なうちだからこそできる準備です。もし病気になったとしたら、その中で相続の話をするのはさらに切り出しにくくなるもの。また闘病中は、気力もなくなり、記憶が曖昧になることもあります。認知症などになると正しい意思表示もできなくなってしまいます。親が心身共に元気だからこそできる準備として、通帳やカードの保管場所、遺言書を書いている場合はその保管場所などについても親子で確認しておきましょう。

きょうだいの信頼関係

日頃は仲の良いきょうだいが、相続をきっかけに疎遠になるというケースもあります。きょうだいの一人が生前に親御さんの財産を一手に管理していたことで他のきょうだいとの信頼関係が崩れてしまい、そこから争いが始まることもあります。親御さんから財産管理を任されている方は、きちんと財産管理の記録を残しておくなど、公明正大な管理を心掛けましょう。

相続以外の判断に迷うことも 相談する機会を設ける

相続に関すること以外にも、認知症になり自己判断ができなくなった場合、施設を利用するかどうかや、医療現場で意思表示ができない場合、延命措置をするかなど、子世代に判断を委ねられることは、事前に家族で話し合っておくといいですね。これも親世代が元気なうちに行うことが大切です。


[Q2]相続の準備のために遺言書を作成しました。昨年から法務局に預けることができるようになったと聞きました。

A

遺言書の保管についての決まりはありません。自宅に保管している方が多いですが、知人や親戚に預けているという方もいます。中には、せっかく作成したのに保管場所を家族に伝えていなかったために、家族が遺言書の存在を知ることができないまま、法定相続の通り遺産分割をしてしまったということもあります。

保管場所に悩まれる方も多くおられますが、2020年7月から、遺言者本人が法務局に出向ければ、自筆の遺言証書の保管ができるようになりました。遺言書を届けた人が遺言者本人であるかの確認が終われば、原本を預かってもらえます。

遺言書を作成したものの、年月がたって紛失したり、どこに保管していたか分からなくなってしまったりするケースもあります。公的機関である法務局の保管制度を利用するので改ざんなどの心配もありません。手続き後に預かり証を発行してもらえるので、その預かり証の保管場所などを家族で共有しておくと安心です。


[豊かな暮らし編]熊本で暮らす 私たちのセカンドライフ

第2、第3の人生を謳歌(おうか)するため熊本に移り住み、新たな生活をスタートさせている人たちがいます。それぞれの地域でどんな暮らしを営み、楽しみを見つけ、充実したセカンドライフを送っているのか―。上益城郡山都町と天草市天草町に移住した2組の家族を紹介します。

[From Tokyo]坂田 誠久(愛称ボビー)さん(63)、陽子(愛称ナンシー)さん(63)

上益城郡山都町 〈移住3年目〉
空き家を自らリノベーション 田舎暮らしで念願の有機農業も

八代市泉町(旧泉村)で高校まで過ごし、東京の大学に進学した坂田誠久さん。22歳で陽子さんと結婚し、測量会社に10年間勤務しました。昼夜働きずくめだった人生をリセットしようと一念発起。趣味のアウトドアを生かし、映画撮影の現場にキャンピングカーで同行しケ―タリングや休憩場所を設置するモーターホームサービス会社を立ち上げました。

60歳を目前に、安心・安全な食べ物を孫に食べさせようと、有機農業を本格的に始めることにした誠久さん。故郷熊本に移住者を受け入れる空き家バンクがあり、しかも山都町は有機農業が盛んと聞き、移住を決めました。「なるべく手のかかる家を紹介してほしいとお願いし、町の担当者に驚かれました」といいます。測量会社で培った技術を生かし、老朽化した家をひときわ目を引くおしゃれな家にリノベーション。誠久さんの趣味の機械や工具が並ぶ部屋、そして陽子さんが大好きなミシンに向かう洋裁部屋も設けられています。

陽子さんの大好きな花に囲まれティータイム。ここにピザ窯も準備中です

完全無農薬でアイガモ農法を取り入れた米や野菜作りをしながらも、長男に引き継いだ東京の会社とオンラインで会議をすることも。「人生何が楽しいって、面倒くさいこと、手のかかることが一番面白い」と誠久さん。「この人と一緒なら、大変なことも何とかなると思えちゃうのよ」とほほ笑む陽子さん。次は山都町で育てた有機野菜を都会で販売する仕組みづくりを模索中。地域の人にも愛称で呼ばれるほど山都町に溶け込んでいる2人のチャレンジはまだまだ続きます。

工具が並ぶ誠久さんの趣味部屋

話と料理好きな陽子さんの周りには、気付くと町の人が集まっています

山都町への移住、定住に関する問い合わせは…

https://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/shigoto/


[From Tokyo→Okinawa→Minamiaso]岩下 龍志さん(38)、文乃さん(43)

天草市天草町 〈移住5年目〉
家族が安心して過ごせる場所を探して

熊本市北区出身の岩下龍志さんは、東京の生花店勤務を経て、2009年沖縄に自身の店をオープンしました。ここで文乃さんと知り合い、11年に長女が誕生。「花屋は朝も早く、土・日曜も仕事。子どもとの時間が全く取れないことが気掛かりで転職を決断しました」

もともと“観光と農業”に興味のあった龍志さん。14年から一人、観光農業が盛んな南阿蘇で農業研修を受け、翌年、沖縄から家族を呼び寄せ、トマト農家として独立しました。その直後に熊本地震が発生。家が被災し、2人を沖縄に避難させたため、またもや家族が離れ離れに。「家族が一緒に生活できる場所を」と移住先を探しました。

観光農園を目指していた龍志さんは、地震の影響が小さかった天草の空き家バンクに登録し、アルバイトをしながら畑を借り、農業をスタート。沖縄から家族を呼び寄せ、天草では珍しいレンコン栽培に取り組み始めました。「ようやく家族一緒に過ごせる場所にたどり着きました。ここでゆっくり年を重ねていきたい」と2人。10年、20年先を見据えたセカンドライフが始まっています。

最初は10アールだった畑が、5年かけて今では150アールに

文乃さんのふるさと・沖縄に、どことなく似ている天草。ゆったりとした時間が流れます

天草市への移住、定住に関する問い合わせは…

https://inaka.amakusa-web.jp/


[不動産編]広がる不動産活用の選択肢 知っていますか?「リースバック」

まとまった老後資金調達のために、家の売却を考えていても、「住み慣れた家を離れたくない」という人は多いのでは。このような人にお勧めなのが、不動産を売却した後も元の家を賃貸して住み続けられる「リースバック」です。最近は相続対策として利用する人もいるそう。ハイコム不動産事業部部長の石田聖一さんに詳しく聞きました。

住み慣れた家に住み続け 売却資金を運用することも

「リースバック」は、住んでいる住宅を売却し、その後は買い主からその家を賃借。売却したことを誰にも知られることなく、元の家に住み続けられるというものです。

人生100年時代といわれる今。「70歳まで働いても、その先の生活資金に困ったり、住宅ローン完済のメドが立たないという人も少なくありません」と石田さんは話します。

特に、コロナ禍で事業を継続できずに、やむなく長年営んだ店を手放すしかないという声も多いそうです。老後は住み慣れた家や土地で暮らしたいものですし、お店を営む場合、移転すると新たな土地で再び顧客開拓をするのも至難の業です。そんなお悩みにも「リースバック」は新たな選択肢となりそうです。

「定年退職後の年金暮らしに不安を抱えている方や、病気の治療費を心配される方、将来的に家族が今の家に住むことがないため、亡くなった後の手続きまでを考え、早めの相続対策としてリースバックを利用される方もおられます」と石田さん。売却した資金を運用しながら安定した生活を送るということも考えられます。

さまざまな活用法がある不動産。豊かなセカンドライフのためにも、家族でぜひ話し合ってみてくださいね。

教えてもらったのは…

ハイコム不動産事業部 部長
石田 聖一さん

認知症の症状がある方は利用できないため、元気なうちに検討されることをお勧めします


どんな人が利用するの?

□住宅ローンを完済し、安心して老後を送りたい
□老後の生活費が足りない
□お金が必要だが、今の家を離れたくない
□早めに相続対策、資産整理をしたい
□まとまった資金を調達したい
□常連のお客さまを手放したくない
□住宅の相続者がいない…など


リースバックのメリット

(1)現金化までの期間が短い
(2)引っ越しの必要がない
(3)固定資産税がかからなくなる
(4)修繕費や災害などでの倒壊、破損などの所有リスクがなくなる
(5)生活環境、子どもの学区が変わらない
(6)売却したことが周囲に知られない…など

リースバックの注意点

  • 途中で家賃が変わることがある


■リースバックとリバースモーゲージの違いは?


[健康編]健康な足 体をつくる靴選び

「膝や腰が痛い」「外反母趾(ぼし)が痛くて歩けない」などの体の不調は、実は合わない靴を履いて歩くことが原因になっているケースがあるそうです。足腰の痛みは年齢のせいと思っている方も、適正なサイズや形の靴を履くことで長年の悩みを解決できるかもしれません。体に合った靴選びのポイントを専門店に聞きました。

不具合をカバーするより正しい形に戻す靴選びを

小学生から90代の高齢者まで、幅広い年齢の方の足の健康をサポートしているベネシュ熊本辛島店の寺本尚美さん。「長年さまざまなお客さまの足を見ているので、巻き爪の状態、足裏の角質の位置、歩き方や姿勢を見ると、体のどこに不具合があり、足のどの部分に原因があるのかが分かります」と話します。

今回、足裏診断をしてもらったのは20代から外反母趾などもあり、膝痛や腰痛を抱えてきた中央区の永富申樹(みき)さん(64)。寺本さんが足の裏や指の形、向き、足首の状態などを見ていきます。足裏を形成する3つの点(アーチ)が崩れてしまうと、体の重心がずれて、体のゆがみや足の変形につながるそうです。

さらに「痛みやゆがみがあるからと、その痛みや不具合をカバーするような靴を履き続けることが一番の問題」と寺本さん。足のアーチを正しい位置に戻してくれる機能性の高い靴を履くことで、変形した足が徐々に正しい形に変わるようにサポートしてくれるのだそうです。

足首までを包み込み、足裏のアーチを正しい位置に補正するショートブーツを履くと「いつもより足が軽く感じます」と永富さん。入店時は膝の痛みで歩き方がぎこちなかったのがうそのよう。店内をさっそうと歩いていました。

教えてくれたのは…

ベネシュ熊本辛島店 代表
寺本 尚美さん

「今更…」と思っている方にこそ試してほしい「足を育てる靴選び」。健康な体づくりへの第一歩です!


正しいアーチが作られていますか?

内アーチ、外アーチ、横アーチの位置がずれることで重心がずれ、右図のように骨格がずれてしまいます。膝痛、腰痛、肩こり、かみ合わせの不具合の原因になることもあるそうです


健康な足をつくる靴を選ぶには

[Point 1]自分の足の状態を知る

サイズが合わない靴を履いていると、指が横になってしまう寝指や、曲がってしまうかがみ指になってしまいます。足の裏に不具合があると、その痛みを逃がすような歩き方をするため、足の筋肉の位置や骨格も変わってきてしまい、全身に影響を及ぼすことがあります。

[Point 2]自分の足の正確な大きさを知る

自分が思っている靴のサイズと、実寸が違っている人は多くいます。また長年、足裏のアーチが崩れたまま歩き続けることで左右の足への負荷が変わり、左右の足のサイズが違うということもあります。自分の正しい足のサイズを測ってみましょう。

[Point 3]足の形を正常に戻してくれる靴を選ぶ

ゆがんだ足に合わせてオーダーした靴で、痛みが軽減できたとしても症状は改善しません。自分の足の状態と、足裏のアーチが崩れてしまった原因を理解して、正常な足の形に戻すサポートをしてくれる靴を選ぶことが大切です。


適正な靴を履いて、正しくウオーキング

適正な靴を選んでも、体に染み込んだ歩き方を続けていては元も子もありません。適正な靴を履き正しく歩くことで、膝や股関節、腰の痛みが軽減してきたという人もいるそうです。あなたもチャレンジしてみては。

ウオーキング講座

屋外を歩きながら、正しい歩き方を教えてもらえます。

日時:10時~12時(木曜)、12時~14時(土曜) ※7月~9月はスタートが9時半に変更
参加費:1回500円


健康な足をサポートする靴の相談ができる店

くつロジ.

足にタコ、ウオノメができる、外反母趾が痛いなど、足や靴の困り事の原因に対応、靴選びのサポートをしてもらえます。インソール(中敷き)の製作も実施。足の計測だけでもOKです。

店舗情報

KUTSULOGY(くつロジ.)

住所
熊本市東区月出2‐5‐53 エクスコート健軍101
TEL
096-285-5117
店舗ホームページ
https://www.kutsulogy.com/
営業時間
11時~19時 ※予約優先制
休業日
火曜、年末年始
駐車場
2台
備考
お店へは、熊本都市バス「H1‐1」「H2‐1」「H3‐1」いずれかに乗り、「鉄砲塚」バス停下車後、徒歩2分

靴工房 シュプール

外反母趾や巻き爪などの足のトラブルを抱えた人の靴選びに専門のスタッフが対応。足の特徴や状態を見ながら、悩みを改善、解決していく手伝いをしてくれます。

店舗情報

靴工房Spur(シュプール)

住所
熊本市東区画図町大字重富506-2
TEL
096-285-5114
営業時間
10時~18時
休業日
日曜、祝日
駐車場
あり