【409号】新しい配偶者控除で何が変わる?
平成29年度の税制改正により、平成30年分以降の「配偶者控除及び配偶者特別控除」の控除額や条件が変わります。「そもそも配偶者控除って?」「わが家の家計に関係するの?」。パートや自営で収入を得ている人が多いすぱいす読者スタッフにとっては、働き方や暮らし方にどう関わってくるのか気になるところ。そこで、税の専門家に聞きました。
制度改正は働き方を見つめ直すきっかけに
今回の改正では配偶者控除のいったい何が、どのように変わったのでしょうか。それは、今働いている人、これから働こうと思っている人にとってどんな影響があるのでしょうか。大石税務会計事務所の大石恭生税理士に教えてもらいました。
「103万円の壁」が150万円に 仕事の幅を広げるチャンス!?
年収を103万円に抑えて、夫の所得税が増えないように仕事量を調整する 。多くの方が経験しているかと思います。“103万円の壁”といわれるものですね。このたびの改正では左の図の通り、103万円というラインは変わりませんが、それを超えた場合でも150万円までなら、同じく38万円が配偶者特別控除として受けられるようになりました。一方で、納税者(世帯主)の年収に新たな制限が設けられ、高所得になるほど控除額が減って増税となります。
配偶者控除が創設されたのは昭和36年。一定所得金額以下の配偶者がいる場合、税額が増えることによる納税者の負担を調整する目的で設けられました。ただ、創設から約60年がたった現代の経済情勢に即しているとは必ずしも言い切れず、共働き世帯が増加している現状で、配偶者控除という制度自体がむしろ女性の働く意欲を削ぎ、働き方を狭めてきたという見方もあります。
税制改正により、38万円の控除額(給与所得者の年収1120万円以下の場合)の適用が103万円から150万円まで増えたことは、女性が活躍する場が広がることを意味します。育児や介護などで限られた時間しか働けない人にとっても働き方の選択肢が増え、仕事の幅を広げるチャンスにもなるといえるでしょう。今後の働き方を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。
税理士
大石 恭生氏
大石税務会計事務所(中央区本荘)の3代目。法人税、所得税、相続税などの税務に携わるほか、経営や資金繰りなどへのアドバイスも行っている。
Q.“収入”と“所得”って 具体的にどう違うの?
Words | パート・アルバイト(給与所得者) | 自営業者・個人事業主 |
---|---|---|
収入 | 給与や賞与などを合わせた、年間の合計収入額(年収) ※源泉徴収票の「支払金額」欄に書かれている金額 |
1年間に入ってくるお金(売上)または年商 |
所得 | 年収から給与所得控除(給与所得者にとっての必要経費)を差し引いた金額(給与所得) | 収入から必要経費を差し引いた金額(事業所得) |
配偶者控除とは
納税者(世帯主、例えば夫)に所得税法上の控除対象配偶者(例えば妻)がいる場合、一定金額の所得控除(38万円)が受けられる制度
配偶者特別控除とは
配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられない場合でも、配偶者の所得金額に応じて一定金額の所得控除が受けられる制度
平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額のイメージ
これまでの配偶者控除は、給与所得者の年収が1220万円以下で、生計を一にし、かつ年収が103万円以下である配偶者(控除対象配偶者)を有する者に対し、納税者本人に対して38万円の所得控除がありました。さらに、103万円を超えても141万円までなら年収に応じた段階的な控除(配偶者特別控除)がありました。
平成30年分以降については、配偶者控除と同じ控除額となる配偶者特別控除の枠の年収上限が150万円に引き上げられました。それを超えた場合、控除額が段階的に変わり、年収上限は201万円に。なお、納税者の年収については(1)1120万円以下(2)1120万円超・1170万円以下(3)1170万円超・1220万円以下の3パターンに細分化され、それぞれで控除額が違います。
※給与所得者の合計年収が1220万円を超える場合は、配偶者控除・配偶者特別控除の適用を受けることができません。
※給与所得者の年収が1120万円以下の場合
配偶者控除及び配偶者特別控除
素朴な疑問Q&A
制度の概要は分かっても、具体的な話になるとまだまだ分からないことだらけ。大石税理士に、読者スタッフの素朴な疑問をぶつけました。
※給与所得者の年収1120万円以下を想定して回答しています
Q.配偶者が自営業や個人事業主でも、配偶者控除もしくは 配偶者特別控除の対象になりますか?
A.
配偶者が自営業や個人事業主の場合、所得が38万円以下であれば配偶者控除38万円、38万円超123万円以下であれば、配偶者特別控除の対象(所得85万円以下なら控除額38万円)となります。
所得123万円以下は配偶者特別控除の対象になるなら、単純計算で月に約10万円までの所得は得られるということですね。フリーでMCの仕事をしていますが、仕事の量を制限しすぎることなく働けそうなので、安心しました。将来的には収入をもっと増やせるよう、子育て中はこの制度を利用しながら、スキルアップを目指していきたいです。
Q.開業したばかりです。立ち上げ当初で収入の見込みが少ない場合、パートと掛け持ちをしても配偶者控除もしくは配偶者特別控除は受けられますか?
A.
給与所得と事業所得(個人事業主としての収入)の合計金額が38万円以下であれば配偶者控除、38万円超123万円以下であれば、配偶者特別控除の対象になります。
税制改正を通して、時間とお金について考えるヒントを得られました。個人事業とパートをしながらの子育てはいろいろと悩むこともあります。「自分にはどのような働き方が合っているのか?」「どのような働き方が理想なのか?」を、改めて家族で考えるいい機会になりました。
Q.配偶者がパートで働く場合、「103万円の壁」はなくなるのでしょうか?
A.
103万円とは、給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円を足した数字です。よって、年収が103万円以下なら課税対象となる所得がゼロになるため、所得税がかからないという仕組みです。今回の改正では、150万円までなら配偶者特別控除38万円の適用になるので、「103万円の壁」はなくなったと言ってもいいでしょう。ただし、配偶者本人に所得税がかかります。
今までは、「控除の対象外になってしまうかも…」とパートで働く日数を調整していましたが、基準となる具体的な金額が分かったことで、シフトが組みやすくなりました。年収150万円までは配偶者特別控除で今まで通り38万円受けられるのであれば、今後、働く時間を検討してみたいと思います。
Q.配偶者がパートで働く場合、年収150万円を上限に、働いた分だけ手取りは増えるのですか?
A.
収入が106万円以上になると、社会保険の適用になる場合があります(就労先の企業規模、就労時間、雇用期間の見込みなどによる)。社会保険に加入できるというメリットはありますが、社会保険料の負担が発生し、働いた分だけ手取りが増えない場合がありますので注意が必要です。
社会保険の適用が、またひとつ、働き方を選ぶポイントになりますね。思い切ってしっかり稼ぐのか、それとも、配偶者控除もしくは配偶者控除特別控除内で、手取り額が一番多くなるように仕事量を調整するのか 。自分がどんな毎日を過ごしていきたいのか、家族とどう過ごしたいのかなどを基準に、考えていきたいと思います。
Q.税金や仕事について相談できるところはありますか?
南九州税理士会「もしもし税金相談室」
税金に関する無料相談が電話で受けられます。1人あたり20分以内。
お問い合わせ
南九州税理士会「もしもし税金相談室」
- TEL
- 0120-373-678
- 営業時間
- 10時~16時(土・日曜、祝日、夏期、年末年始などは休室)
- 備考
- ※平成30年3月15日まで休室のため、お問い合わせは3月16日以降に ※複雑な案件は有料になる場合あり
熊本県しごと相談・支援センター
専門のカウンセラーによるキャリアカウンセリングをはじめ、応募書類や面接のアドバイス、職業適性検査を行っています。また、労働環境などに関するさまざまな相談も受け付けています。
お問い合わせ
熊本県しごと相談・支援センター
- 住所
- 熊本市中央区水道町8‐6 朝日生命熊本ビル1階
- TEL
- 096-352-0895 (キャリアカウンセリング、予約優先)
- 営業時間
- 月~金曜9時~17時(労働相談は19時まで)、土曜10時~17時
- 休業日
- ※日曜、祝日、年末年始は閉庁
- (労働相談)
- 096-352-3613
マザーズハローワーク熊本
子育てをしながら就職を希望している人に対して、子ども連れでも来所しやすい環境(キッズコーナーなど)を整備し、就職支援を行っています。
コメント
0