【477号】眠りの質を上げる 正しい睡眠のススメ

寝不足が続くと日中のパフォーマンスが下がりがち。生活のリズムを整え、質の良い睡眠が取れれば、心も体もより健康に! 仕事や家事もはかどります。正しい睡眠の知識とその実践法について紹介します。

体内時計のリズム整え 心も体も健康に

眠りの質を上げるためには、適正な睡眠時間と体内時計のリズムを整えることが大切。
適切な睡眠について『くわみず病院』(中央区神水)の福原明副院長に聞きました。
また、日常生活でできる眠りの質を上げる方法を同病院の睡眠健康指導士・古家聖子さんに聞きました。

くわみず病院 副院長 睡眠医療センター長
福原 明 医師

まずは適正な睡眠時間を把握しましょう

睡眠時間は人それぞれ 日中困らなければOK

近年、日本人の平均睡眠時間は減少傾向にあります(表1参照)。睡眠不足が続くと、さまざまな弊害(表2参照)が出てきて、勉強や仕事の効率が低下するのはもちろん、生活習慣病やうつ病のリスクも高くなります。睡眠を十分取ることはとても大切です。

体質や年齢などによって必要な睡眠時間には個人差があります。成人の標準的な睡眠時間は6〜8時間で平均7.5時間ですが、5時間以下の睡眠でも十分な人もいれば、9時間以上の睡眠が必要な人もいます。また、高齢者は若い頃に比べて活動量が少なくなるため、必要な睡眠時間は短くなる傾向にあります。

質の良い睡眠を取るには、まずは自分の適正な睡眠時間を知ることが大切。そもそも睡眠の目的は、人が活動するために、体と心の疲れを回復するためのもの。昼間、眠気によって活動に支障がなければ、睡眠時間は十分ということです。睡眠不足の目安は、「日中、特に午前中に眠い」「休日の起床時刻が、平日より2時間以上遅い」。この場合は、普段より1〜2時間長く眠ることを約1カ月続けてみましょう。昼間の眠気が解消できれば、それが適正な睡眠時間です。また、寝付くまでの時間などを記録する「睡眠日誌」をつけるのもお勧め。もし十分に眠っても、昼間の眠気が解消できないなど不安を感じたら専門医に相談しましょう。

日本人の平日の平均睡眠時間(表1)

十分な睡眠の目安とは

日中、仕事など自分がやりたいことを十分にできる状態。下表2のような症状があれば、十分な睡眠が取れていないかも。

睡眠不足のときの症状(表2)

□ 日中の眠気が増加する
□ 怒りっぽくなる
□ 集中力や注意力が欠如する
□ 覚醒状態が低下する
□ 注意散漫になる
□ 意欲が低下する
□ 不機嫌になる
□ 落ち着きがなくなる

出典/「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)


くわみず病院 看護師 睡眠健康指導士
古家 聖子さん

生活習慣を整えて質の良い睡眠を

眠りの質を上げる7つの方法

1. 同じ時間に起き朝日を浴びる

毎朝、同じ時間に起きると、体内時計のリズムが安定します。休日も平日より2時間以上寝過ぎないように。さらに、太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされ目覚めがすっきりする上、14〜16時間後には睡眠を促すホルモンのメラトニンが分泌され始め、自然に眠くなります。

同じ時間に起き朝日を浴びる

2. 毎日、朝ごはんを食べる

朝食を取ることで、胃腸の体内時計のリセットが促されます。おすすめの食材は、炭水化物と一緒に豚肉、乳製品、卵、納豆など、アミノ酸の一種トリプトファンを多く含むもの。トリプトファンは、日中は精神安定と覚醒を促すセロトニンとなり、夜は眠りを促すメラトニンに変化します。

毎日、朝ごはんを食べる

3. 15時までの昼寝はOK

寝不足や昼間に眠気を感じるときは、15時以前に15〜20分程度の昼寝をしましょう。昼寝前にコーヒーなどカフェインを取るとすっきり目覚めます。ただし、15時以降に眠ると、夜に眠りにくくなるので要注意。

15時までの昼寝はOK

4. 夕食は就寝3時間前までに

夜遅くに食事をすると、寝ている間も胃腸が働き、体内時計が狂って眠りの質が低下します。夕食や飲酒は就寝3時間前までに済ませましょう。お酒を飲むと寝付きは良くなりますが、利尿作用により夜中に目が覚めやすく眠りが浅くなるため、寝酒はしないように。

夕食は就寝3時間前までに

5. 入浴は就寝1時間前までに

就寝直前に熱いお風呂に入ると、目がさえて眠りにくくなりがち。入浴は就寝1時間前までに38〜40℃のぬるめのお湯に漬かりましょう。血行が良くなり心身共にリラックスでき、寝付きが良くなります。

入浴は就寝1時間前までに

6. 眠る前のパソコン・スマホはNG

パソコンやスマートフォンなどのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑え寝付きが悪くなります。眠る前にブルーライトを見るとエスプレッソ2杯分の覚醒効果があるという報告も。スマホは枕元から離れた所に置きましょう。また、睡眠中は真っ暗がベストですが、暗いと不安な場合はローソクの明るさ程度の照明に。

眠る前のパソコン・スマホはNG

7. 眠ることにこだわり過ぎない

眠る2〜3時間前は最も寝付きにくい時間帯なので、早めに布団に入るのは逆効果。眠くなってから布団に入るようにしましょう。また、「眠らないといけない」と思うと神経が興奮してかえって眠れなくなります。寝付けないときこそ眠ることにこだわらず、リラックスしましょう。

眠ることにこだわり過ぎない

やることはすべて就寝1時間前までに済ませて、リラックスを心掛けましょう。

※仕事や家事で十分な睡眠時間を取れないという方も、眠りの質を上げることで短い時間で疲れが取れるかもしれません。


快眠によく効く 寝付きをスムーズに筋弛緩法

筋肉をあえて緊張させてから緩めることで、心と体をリラックスさせ、寝付きを促す方法。眠るときはもちろん、緊張を解きたいときにもおすすめです。

1.

息をゆっくり吸いながら、拳をぐーっと握る。

2.

息を吐きながら、脱力する。
力が抜ける感覚に集中すること。

1.2を10回ほど繰り返す。


食事に気を付けているのに痩せない

睡眠不足は太る!? 睡眠と肥満の関係

「食事に気を付けているのになかなか痩せない」という場合、睡眠不足が原因のケースも。睡眠時間が短いと、食欲を抑えるホルモンのレプチンが減り、空腹感を増進させるホルモンのグレリンが増えてしまうのです。つまり睡眠不足になると、食欲が増して太りやすくなるということ。気を付けているつもりでも、つい食べ過ぎたり夜遅くに食べたりしてしまいがちに。さらにグレリンが多いと、高カロリーなものを好むようになります。睡眠不足はダイエットの大敵ですよ。