【489号】第2回 今を楽しむ 未来に備える 30代、40代からの親子で考えるセカンドライフ
「子どもや孫たちと一緒に、セカンドライフを心豊かに過ごしたい」。そんな意欲的な人たちとその子ども世代に向けて、相続や趣味、お金などをテーマに、今を楽しむコツと未来に備える方法を伝える3回シリーズ(毎回8ページ)。第2回は、相続と心豊かな暮らしについてお伝えします。
次号は11月に掲載予定
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特集
【481号】第1回 今を楽しむ 未来に備える 30代、40代からの親子で考えるセカンドライフ
自宅を残して夫が亡くなった場合、その自宅を子どもが相続すると、妻は家から退去しなければならなくなることがありました。また逆に、妻が自宅を相続した場合、自宅以外の金融資産を全て子どもに振り分けざるを得ず…
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[相続編(2)]知って得する 相続のあれこれ
「争続」にならないために
親がやるべきこと
相続対策は親が講じておきたいもの。大切な人たちを困らせないため、体が元気なうちに準備を始めましょう。専門家にポイントを聞きました。
(1)財産の整理
自分にどんな財産があるのか、それがどれくらいの価値があるのかを把握できていない人が少なくありません。その状態では「誰にどれだけあげる」という相続の話もできませんし、もしもその状態で亡くなった場合、残された家族が財産を調べるのは非常に困難です。 そこで生前に、現金や預貯金、不動産、株式などの財産の整理をしておきましょう。財産の内容によって生前贈与を検討する場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
(2)財産のリストアップ
財産の整理が済んだら、その内容をリストアップしてみましょう。例えば、「預貯金はどの銀行にどれくらいあるのか」「不動産はどこにどんな物件があるのか」「株式はどの証券会社と取引しているのか」など、いざというときに相続人が困らないよう、詳しく書き出してください。
この内容をまとめて、財産目録(パソコンでの作成可)を作成し、遺言書に添付しましょう。目録の代わりに、通帳のコピーや不動産登記簿謄本のコピーを付けてもOKです。
(3)遺言書の作成
遺産分割で最も優先されるのは遺言書の内容です。遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続分にのっとった遺産分割協議を行いますが、この協議がまとまらずに「争続」となるケースが多いです。また血縁者以外の人に相続させたい場合も遺言書が必要です。遺言書には「なぜこのような分配になったのか」という思いも書くことができます。
相続人には、あらかじめ遺言書の保管場所を伝え、コピーを渡しておきましょう。一般的には、自宅で保管することが多いですが、2020年7月10日から法務局に預けることができるようになります。
遺言書の書き方
子どもがやるべきこと
「争続」問題を防ぐためには、子どもたちから親に切り出す勇気も必要です。また、きょうだいや親族と日頃から良好な関係を築いておきましょう。
(1)親と相続の話をする
「まだ元気だから」「遺産は少ないから」などの理由で、相続の話を避けている親が多いようです。親が亡くなった後の話は切り出しにくいですが、親が病気になるともっと話しづらくなります。また病気で体が弱くなると、財産内容の記憶があいまいになることも。親が心身共に元気なうちに話をしておきましょう。通帳やカード、印鑑の保管場所や、口座の暗証番号なども確認しておきましょう。
(2)きょうだい間で意思を統一する
遺産の分割は遺言書通りに行うのか(相続人全員の同意があれば、遺言書は効力がなくなる)、法定相続分にのっとるのかなどを事前に話し合い、きょうだい間で意思を統一しておきましょう。意思の食い違いが「争続」の原因になります。
(3)「成年後見制度」について知っておく
親が年老いてくると、認知症などによって正しい意思表示ができなくなってしまう可能性があります。こうした場合は「成年後見制度」を利用することになります。
これは、家庭裁判所から「成年後見人」を選任してもらい(推薦も可能)、本人の代わりに預貯金の管理や不動産の処分をはじめとした法律行為を行ってもらう制度です。成年後見人には、配偶者や子どもがなることが多いですが、成年後見人は原則、遺言書の作成はできませんので注意してください。
話を聞いたのは
熊本県弁護士会高齢者・障がい者に 関する委員会 委員長 上田法律事務所 代表
上田 祐輔 弁護士
相続のトラブルを避ける最善の方法は、家族や親族間で信頼関係を築いておくこと。日頃から小まめに連絡をし合うなど、コミュニケーションを取るようにしましょう。
相続にまつわる読者の体験談
読者から届いた相続体験談を紹介します。体験者からのアドバイスをぜひ参考にしてください。
テレビを見てさりげなく相続の話題に
82歳の母は自分のことはすべて自分でできるほど健康。ただ、会社の先輩が相続の手続きに追われているのを見て、私が先々のことを心配していました。朝の情報番組で資産の棚卸しを勧める内容を見て、一緒に食事をした時に「この前、テレビでも言いよったけど、銀行とかの口座を一つにまとめておいた方がいいらしいバイ」とさりげない感じで会話。母も素直に「そうね」と、言うことを聞いてくれたみたいです。
(50歳・男、ゴルフ好きさん)
相続の話は、家族が元気なうちに!
昨年、父が亡くなりました。相続に関する特例措置や税制について、「まだ先のこと」だと思い細かく調べていませんでした。亡くなった後に、教育資金など非課税となる孫への生前贈与のことを知り、「もっと早く知っていたら、父の意に沿う有効な相続ができたのに…」と悔やまれます。相続の話は家族が元気なうちに、が望ましいと思います。
(45歳・女、おむすびさん)
財産内容は複数人で共有を
土地や有価証券など、財産に関係することを一人で管理している場合は、なるべく情報を複数人で共有しておく必要があると思います。父が亡くなった後、財産内容を調べるのがとても大変でした。ある日突然ということもありますし、容態が悪くなってからでは、ほんの数日で記憶の整理ができなくなってしまうこともあります。
(47歳・女、百名山さん)
[豊かな暮らし編]毎日の暮らしを 心豊かに
第二の人生も、心豊かに楽しく過ごしたいもの。ここでは、子どもや孫たちとの時間や趣味、ボランティア活動、仕事などを通して、充実した日々を送る人たちを紹介します。
65歳で定年退職した後に数年間、陶芸を習っていたという豊さん。孫のこころさんときららさんからの「おじいちゃんと一緒に陶芸をやってみたい」というリクエストで、この日は3世代5人で陶芸を体験しました。
大人は手びねりでカップ作り、子どもは取り皿と箸置き作りに挑戦。豊さん以外は陶芸初体験でしたが、皆夢中になって取り組みました。加代子さんが形作りに戸惑っていると、豊さんが「こうすると、うまくできるよ」と優しくアドバイス。お皿に絵を描いている孫娘2人には「それは魚の絵かな? 上手だね」と笑顔で声を掛けるなど、終始和やかな雰囲気でした。
無事に作り終えると、5人は「楽しかった! 焼き上がりが待ち遠しい」と大満足の様子でした。
自宅の食器棚には、これまで豊さんが作った器がずらり。「夫が作ったカップでコーヒーを飲むと、いつもよりおいしく感じます」と加代子さん
5人が作った作品。焼き上がりまでの数カ月間、「どんなふうに仕上がるかな」とワクワクして過ごせるのも陶芸の面白さ
取材した3世代ファミリー
(左から)川形加代子さん、吉井こころさん(小5)、紗世さん(39歳)、きららさん(小1)、川形豊さん(75歳)=熊本市
家が近く、3世代でよく出かけるという川形&吉井ファミリー。こころさんときららさんは、大のおじいちゃん子だそう。
取材協力 「土のあとりえ 志保」
手びねり陶芸体験コースが人気。フリーカップ、小皿、長皿など好みの器を作れます。2階のギャラリーでは、陶器の展示や販売もあり。
店舗情報
- 住所
- 熊本市北区鶴羽田3-1-25
- TEL
- 096-345-2060
- 営業時間
- 開室時間/水曜13:30~22:00、木曜13:30~17:30、金曜11:00~15:00、土曜13:30~17:30
[豊かな暮らし編]家族と楽しむ
子どもや孫たちの存在は、シニア世代にとって元気の源でもあります。3世代で多くの時間を共有し、楽しんでいる川形&吉井ファミリーを取材しました。
豊さんは、日向ひょっとこ踊りの魅力を伝えるグループ「くまモンひょっとこ会」の会長も務めています。こころさんときららさんは、おじいちゃんが楽しそうに踊っているのを見て、「自分たちもやってみたい」と豊さんから踊りを教わり、グループのメンバーに。大人たちに混じって、県内外のイベントのステージに立ったり、全国大会に出場したりしているそうです。
この日は、自宅での練習の様子を見学しました。笛や太鼓で奏でる音楽に合わせ、手足をリズミカルに動かす3人。横で手拍子をたたいている加代子さんと紗世さんにも、自然と笑顔があふれます。「孫娘と一緒に踊れるなんて、僕は幸せ者ですね」と豊さん。こころさんときららさんは、「大好きなおじいちゃんと一緒に、これからも踊りを続けたい」と話してくれました。
ステージの上で踊る3人。県外の大会に出場するため、家族みんなで泊まりがけで出かけることもあるそう
練習風景を見守る加代子さんと紗世さん
HOW to 充実LIFE
紗世さん
できるだけ外に出て、いろんな経験や出会いを大切にしています。行ってみたい場所を見つけたら、両親を誘うようにしています。
豊さん
日頃からアンテナを張り、楽しそうなこと、おいしそうなものなどを常に探しています。「人を喜ばせたい」と笑顔で取り組んでいたら、自然と人が集まり、仲間が増えました。
加代子さん
3世代で出かけるときは、無理なスケジュールを組まず、「近場で温泉と遊具施設があるところ」など、大人も子どもも楽しめる目的地を探します。
[豊かな暮らし編]生きがいを見つける
第二の人生で、「誰かの役に立つ」ことに生きがいを見いだすシニア世代もたくさん。意欲的に仕事やボランティア活動を行う、飯川照美さんと児玉静子さんを紹介します。
59歳で介護職の資格を取得 人生の先輩から元気をもらう
洋服店の店長や不動産会社の事務など、さまざまな仕事を経験してきた飯川さん。「もっと人との関わりが深い仕事がしたい」と、59歳の時に介護職の資格を取得しました。現在は、平日朝の7時~9時に高齢者施設で働いています。
「体力的に楽ではありませんが、人生の先輩方の話を聞くと勉強になることが多く、私が元気をいただいています。何かを始めるのに年齢は関係ありませんね。できれば75歳まで仕事を続けたいです」
一方で、ボランティア活動にも注力しています。視覚障がい者のガイドや傾聴ボランティア、子どもを預かる事業「ファミリー・サポート・センター」の協力会員、熊本市のボランティアアドバイザーなど、その内容は多岐にわたります。
「つらいことが続いた時期に、傾聴ボランティアの方に話を聞いてもらって気持ちが楽になりました。今後は私が、一人でも多くの人に寄り添いたい」。周りを明るく照らす、ヒマワリのような笑顔で話してくれました。
飯川照美さん(70歳)=熊本市
障がいのある人や水俣病の被害を受けた人が思いをつづった詩に曲を付けて歌う「もやい音楽祭」で、障がい者の介添えをする飯川さん(写真左)
視覚障がい者ガイドボランティアグループ「あゆみ」の会長も務め、買い物や散歩のサポートなどをしています。写真は、日帰り旅行に付き添った時のもの
HOW to 充実LIFE
12人の孫たちの存在が励みです。私の背中を見て、いつか「社会の役に立つことをしたい」と思ってもらえたらうれしいです。子どもたちの未来のため、これからも頑張ります!
小児病棟ボランティアに従事 子どもたちの笑顔が元気の源
保育士として約30年働いた後、55歳で退職。「これまでの経験を生かして、やりがいを感じられることをしよう」と、熊本大学病院の小児病棟で活動している「小児病棟ボランティア『たんぽぽの会』」に入会しました。長期入院して病気と闘っている子どもたちやその保護者に、絵本や紙芝居の読み聞かせをしたり、季節に沿った壁面飾りやプレゼントを手作りしたりと、さまざまな活動を行っています。
「体力的・精神的にナイーブになっている子どもたちへの言葉掛けや態度にはとても気を使いますし、病状に合った配慮や私自身の健康管理にも細心の注意が必要です。大変なことも多いですが、『たんぽぽさんだ!』と喜ぶ子どもたちの笑顔を見ると苦労は吹き飛びます」
児玉さんのボランティア精神の根幹は、学生時代のボランティア運動「セツルメント」や、30代でのドイツ生活にあるといいます。「海外では、ボランティアが日常生活に自然と根付いています。日本でもそうなることを願い、今の活動を次の世代につないでいきたいです」
児玉静子さん(74歳)=熊本市
外に出られない子どもたちに季節を感じてほしいと、時季に合った壁面飾りやプレゼントを手作り
子どもたちにパネルシアターを披露する児玉さん
HOW to 充実LIFE
積極的に外出して、いろんな人と会って話をすると世界が広がります。またボランティア活動では、私自身が楽しむことを大切にしています。
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