【498号】熊本でも進む、新しい働き方「コワーキングスペース」実態調査
「終身雇用」「年功序列」が当たり前だった昭和の時代。平成に入るとバブル崩壊やリーマンショックなど、世界の金融市場を揺るがす大きな出来事が続き、働く概念が大きく崩れました。令和元年の今年、熊本では相次ぎオフィスと作業空間をシェアする「コワーキングスペース」が誕生。新しい働き方として注目を集めるコワーキングスペースの今を調べてきました。
今さら聞けない! コワーキングスペースって何するところ?
最近、新聞やテレビなどでもよく目にする「コワーキングスペース」。でも、実際に利用したことがある人はまだ少なく、「私には関係ない」と思っている人も多いのでは。ここでは熊本にある施設と利用者の声を紹介。地方経済総合研究所の松永雄亮さんに同スペースの活用法など聞きました。
「共同」で「仕事する」全国的に増えるコワーキングスペース
近年、都市部でのオフィス不足や、働き方改革による副業者・フリーランスの増加などを背景に広がりを見せる “コワーキングスペース”。「Co(共同で)」「Working(仕事する)」という名の通り、オフィス機能と作業空間をシェアすることで、机・プリンターなどの初期費用、賃貸料・光熱費などの固定費が削減できます。また、人的交流やコミュニティーづくりを目的に利用している人も多いようです。
最近では、企業の一部署が事業リスクの分散などで使用するほか、東京や福岡との2拠点生活など、利用者やシーンにも広がりが見られます。福岡市では大手も参入し、ビル1棟が丸ごとシェアオフィスというところもできました。
人と技術の新たな交流が生まれ 地域経済の活性化にもつながる
さらに、コワーキングスペースは、熊本が抱える課題解決の一助にもなると考えています。熊本地震後に事業継承・継続に課題を抱える企業が増えており、コワーキングの多様性やネットワーク、ベンチャーのスピード感をうまくマッチングできれば、事業を継承・継続し、次世代に残す力になると思います。熊本の各コワーキングスペースが連携してネットワークが広がれば、地域経済の好循環にもつながるはずです。
教えてくれたのは
(公財)地方経済総合研究所 事業連携部主任研究員
松永 雄亮さん
菊池市出身。60カ国以上を旅したバックパッカーで、大学職員や電子機械メーカー、ベンチャー企業などを経て現職。先日「SDGsファシリテーター」公認試験に合格。
10月15日オープン 最新コワーキングスペース「びぷれすイノベーションスタジオ」に潜入
利用者が行政や企業、大学とつながり 熊本の未来を共に創る
熊本日日新聞社が運営するコワーキングスペースは、そのネットワークをフルに生かし、産学官の支援機関と連携。セミナーや交流会を通じて人と人をつなぎ、ビジネスを通じた地域課題の解決に取り組んでいます。施設内には固定席をはじめ、ドロップイン(一時利用)で使用できるコワーキングルーム、コミュニケーションルーム、コワーキングカフェなどがあり、幅広いニーズに対応。中心市街地で打ち合わせや会議ができるのはもちろん、全国の新聞記事が検索・閲覧できるサービスもあり、情報収集にも便利です。
利便性の良い中心市街地にありながら、ホテルの屋上チャペル&ガーデンを望み、開放感に包まれています
Point!
1.行政や大学などと連携し、地域課題解決に取り組む
2.新聞社が運営する強みを生かした情報発信力
3.中心市街地のど真ん中という好ロケーション
私語厳禁で集中できる「コワーキングルーム」をはじめ、気兼ねなく飲食しながら仕事ができる「コワーキングカフェ」など、目的に応じて使い分けできるのもうれしい
イノベーションスタジオ会員が語るコワーキングスペースの魅力!
働き方改革の一環として活用 異業種との情報交換の場にも
「働き方改革」の一環として、営業マンなどが自分に合った場所で仕事ができるようにと利用しています。また、さまざまな業種・業界の方々が集う場でもあるので、交流を通じた情報交換で自分たちの視野を広げ、地元企業とのコラボ企画でセミナーを開催できればと考えています。
損害保険ジャパン 日本興亜株式会社 熊本支店 支店長
鬼木 幹生さん
営業職のテレワークスペースも確保。「地域とのつながりを広げ、深めるためにも、こうした場所は貴重」と話す営業スタッフの伊藤温美さん
東京での経験がきっかけに"つながれる場"として期待!
2年半前に東京からUターンし、個人事業主としてイベントプランニングやウェブコンサルタントなどを行っています。単に、自分の仕事場所の確保だけでなく、ここを利用している他業種の皆さんや学生、行政の方々とフラットにつながれる場として期待しています!
ジャングル・ラボ
篙 太一(ふなざし たいち)さん
打ち合わせやミーティングの場所としても活用している篙さん。「街なかで利便性も高いので集まりやすい」
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区上通町2‐17 びぷれす熊日会館7階
- TEL
- 096-288-2236
- 店舗ホームページ
- https://bista.kumanichi.com
- 営業時間
- 9時〜22時
- 休業日
- 日曜、祝日、年末年始
- 料金
- ドロップイン550円/時間・1650円/日、フリー席会員1万1000円/月、固定席会員/3万8500円/月、法人会員5万5000円/月、会議室利用(会員)1100円/時間(一般は別途ドロップイン料金)
- 駐車場
- なし
使いたい時だけ利用できる「ドロップイン」を初体験!
意外と気軽に利用できるコワーキングスペース。どんな感じか体験してもらいました。
体験したのは
田中友里さん
宇城市在住。育児の傍ら、得意なイラストを生かし、今年からイラストレーターとして活動。しかし、家では家事に追われ、カフェやレストランでは周囲の視線が気になり、集中して絵が描けないことも多いのだそう
受付
「びぷれすイノベーションスタジオ」では、ドロップイン利用でも会員登録が必要。ただし、タブレット端末等を利用すれば簡単に登録できます
仕事の前に
ドロップインでも利用できるフリードリンクコーナー。コーヒー、紅茶、ほうじ茶などがそろいます
仕事
開放的な「イノベーションラウンジ」でイラスト制作スタート。すると会員企業の映像制作会社「SURFACE」の鶴田真実さんが「どんな絵を描かれるんですか?」と興味津々。新たな出会い、つながりもコワーキングスペースの魅力です
仕事の合間に
宇城市の地域おこし活動にも積極的に参加する田中さん。他県で行われているママさん向けイベントの情報を収集するべく、「新聞データ閲覧コーナー」で検索していました
いつもと違う場所なので、新鮮な気持ちで仕事に集中できました。イラストレーターは孤独な作業が多いけど、ここに来れば誰かがいて、話せたり、人を観察できたりして、気分転換にもいいですね。他の利用者と関わりが持てて、世界が広がりそうです
熊本にも続々登場! 個性派コワーキングスペース
The Company(ザ・カンパニー)熊本
アジアなどグローバルメンバーと交流できる
福岡市など国内4施設、ホノルル、バンコク、シンガポールなど海外に5施設展開し、会員になるとその全てを利用できます。現在、国内外合わせ400社・850名の多様な企業やフリーランサーが所属。単なる仕事の場所としてではなく、会員同士がつながり、ビジネスの加速・拡大を進める環境をつくり、会員間でのワークシェアを強化しながら、人手不足などの課題を抱える九州エリアの活性化を図ります。
Point!
1.国内外9拠点、全てを利用できる
2.仕事・案件でつながる プロジェクト創生型スペース
3.会員SNSやコミュニティ スタッフによるマッチング
大きな窓から緑を望めて開放的。ソファ・テーブル席、会議室や電話ブース、コピー機、無料のドリンクコーナーも備わります
osoto Hitoyoshi(くまりばコワーキングスペース)
開放感のあるオフィス。仕事のあとは温泉も!
今年7月に誕生。アウトドアメーカー『スノーピーク』がバックアップしている「Camping Office」。芝生が広がる空間に、テントやたき火台、チェアが置かれ、キャンプに来た気分で仕事ができます。球磨川を望むドームテントの中は掘りごたつ席で、外の庭にイスとテーブルを持ち出すこともできます(要事前申込)。また敷地内には、一人350円で入れる源泉かけ流しの温泉が併設され、リラックス効果や人々との交流にも役立っています。
Point!
1.コミュニケーションを促すキャンピングオフィス
2.人・企業・地域のコラボを生み出すビジネス拠点
3.自然や温泉で創造性が刺激される
リラックスしつつ仕事ができる空間。音響、プロジェクター、複合機なども備わり、100円の本格ドリップコーヒーも人気です
店舗情報
osoto Hitoyoshi(くまりばコワーキングスペース)
- 住所
- 人吉市相良町4‐2『くまりば』内
- TEL
- 050-1743-1594
- 店舗ホームページ
- https://www.osoto.work
- 営業時間
- 9時〜18時(温泉は13時〜21時)
- 休業日
- 土・日曜、祝日(温泉は火曜)
- 料金
- ドロップイン3時間500円〜、個人会員1万円(ゲスト3名まで利用可)/月、法人会員2万円(ゲスト6名まで利用可)/月※全席フリー席
- 駐車場
- 40台
未来会議室
“「働く」をおもしろく”をテーマに、どんなに奇想天外なアイデアでも「やってみよう」と行動を起こせるイノベーション空間です。
Point!
1.熊本初のコワーキングスペース(11/23に5周年イベント開催)
2.「働く」をおもしろくする起業家精神豊かな環境
3.雑談ができる環境 コミュニケーションを促す設計
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区下通1‐12‐27 CORE21下通ビル5階
- TEL
- 096-356-0120
- 店舗ホームページ
- https://mirai-k.or.jp/
- 営業時間
- 9時~23時(最終入場22時)(受付時間9時~23時)
- 休業日
- なし
- 料金
- ドロップイン330円/時間(以降30分ごとに220円 ※最大料金1日1650円)、1名フリー席9900円/月 固定席2万2000円〜/月、アライアンス会員1口2万2000円(1名追加ごとに1万6500円/月)、会議室利用550円~/30分
- 駐車場
- なし
未来づくり拠点MOG(モグ)
周辺を温泉地が囲み、南小国らしい木の空間に包まれてのんびり仕事ができます。マッサージやワンデイカフェなども行われます。
Point!
1.最新プロジェクター完備のモダンな快適空間
2.周辺の立ち寄り湯で仕事ついでにひとっ風呂
3.さまざまなワークショップを開催。癒やしタイムも!
店舗情報
- 住所
- 阿蘇郡南小国町赤馬場1896‐7
- TEL
- 080-8573-6474
- 店舗ホームページ
- https://www.facebook.com/minamiogunimirai/
- 営業時間
- 9時~17時
- 休業日
- 土・日曜、祝日
- 料金
- ドロップイン1時間300円(2時間以降は1時間100円)、1名通常会員3000円〜/月(平日9時〜17時) 固定席1万5000円/月(9時〜22時)、会議室利用500円/時間(4時間以降は300円/時間)
- 駐車場
- あり(JA南小国駐車場利用)
コメント
0