【531号】いろいろ身近なSDGs(エスディージーズ)

「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年に国連で採択された国際社会共通の目標で、最近、いろいろな場面でこの言葉を見聞きするようになってきました。しかし「実際、何をすればいいの?」「自分には関係がないこと?」と距離を感じている人も多いのでは? そこで、実は身近なところから取り組めるSDGsについてご紹介します。

実はこれも? 身近なSDGs(エスディージーズ)

考え方をちょっと切り替えて行動を変えるだけで、私たちにできることはたくさんあります。身近なところから始められるSDGsと、その考え方のコツを聞きました。

※アイコンの詳細は表紙を参照

地球と人々の暮らしをよりよくするための目標として国連総会で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」。貧困の改善から環境対策、経済発展まで17の目標と169のターゲット(より具体的な取り組み)が定められ、2030年までの達成を目指しています。

と聞くと、「サスティナブル」などの聞き慣れない単語や、あまりにも壮大なスケールに「?」となりがちですよね。SDGsは発展途上国・先進国問わず「誰 一 人取り残さない」ことを目指しているため、地球上のさまざまな問題を網羅したスケールになっているのです。

しかし、目標やターゲットの一つ一つを見てみると、普段何げなく取り組んでいる暮らしの工夫につながっています。節水・節電をはじめ、地元の野菜を買う、必要な休暇を取ることなどもSDGsへの取り組みです。生活を大きく変えたり、何かにストイックになったりする必要はないのです。

行動や買う物を選択するときの「判断基準」を、ちょっとSDGs式に変える。それが私たちにできる取り組みの最初の一歩です。これからの豊かな暮らしに必要なものは、「お金とモノ」ではなく「工夫と情報」になります。コロナ対策で「新しい生活様式」に切り替えているように、身の回りへの意識を「ちょっと変える」ことが、SDGsを「自分事」として取り組むために重要です。自分の暮らしのために行うことが、巡り巡って世界のためにもなる、そんな豊かな日々を、ぜひ目指してみませんか。

教えてくれたのは

EPO九州(九州地方環境 パートナーシップオフィス) コーディネーター
澤 克彦さん

環境省が全国8ブロックに設置した「環境パートナーシップオフィス」の一つ。環境やSDGsに関わる情報発信やワークショップなどを行っています。


家の中で

家庭菜園で野菜を育てて食べる、緑のカーテンで電気代もエコに

おいしい野菜を食べられるし、節約にもなるし、と一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなりますね。エアコンによる電気代節約はもちろん、野菜流通にかかるCO2排出も減り、緑化にも役立つなど、環境への貢献も。


きちんと手洗い、うがいをする

新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みで、これらを意識している人は多いと思います。自分がかからないだけでなく、ウイルスを人に移さない、拡大させないことが、社会にとって大事なことです。


買った食材を消費期限内にきちんと食べる

店舗などでのフードロスの問題が取りざたされていますが、「おうちでのフードロス」をなくすのも大事な取り組み。食べ物は適量を買って、おいしいうちに食べられる量だけを楽しみましょう。


夫婦で家事育児を平等に分担する

家事分担はささいなことのように思われますが、日常生活での意識の変化が、ジェンダー平等につながります。協働することの大切さも感じましょう。


職場で

残業せずにきちんと休む

いわゆる「ワークライフバランス」「働き方改革」もSDGsにある目標の一つ。誰か一人が無理をして成り立つ社会ではなく、皆が支え合いながら発展もしていく、そんな理想の社会への小さな一歩です。


お出かけ・買い物で

地元の物産館で地元の産品を買う

地元の人が作ったものを地元で買って食べるー。このことも、実はフェアトレードの一つといえます。配送にかかる負担を減らし、まちの発展に寄与するなど、地産地消による可能性はとても大きいのです。


エコバッグを使う

この7月から本格的にレジ袋有料化が始まり、エコバッグをこれまで以上に携帯していることでしょう。お気に入りの色柄のエコバッグをそろえるなど、楽しみながら取り組みたいところです。


リサイクルショップやフリマアプリで買い物をする

古いものが持つ価値を再発見し、新しいものと組み合わせて工夫しながら暮らしを楽しむ、そんな時代になりつつあります。もちろん節約にもなり、よりゆとりのある暮らしが実現できるでしょう。


身近なSDGs ここから始めてみよう!

意外と簡単に始められるSDGs。澤さんオススメの「熊本ならでは」の取り組みをお教えします。

いきなり団子を買って食べる

中央区坪井に本店がある「いきなりや わたなべ」は、創業50年以上。現オーナーの祖母が手作りしていた秘伝のレシピで、皮モチモチのいきなり団子を作っています。「米が貴重だった時代、イモと小麦粉でおなかを満たせるごちそうを作ったのが、いきなり団子の始まり。私も小さな頃から祖母に習っていました」とオーナーの渡辺九未子さん。おいしいだけでなく、熊本の庶民の歴史や生活の知恵に触れられるのも、いきなり団子の魅力であり、未来へ残したい財産でもあります。

澤さん's チェックポイント

長く愛されてきた身近な郷土食にもヒントがいっぱいあります。熊本のソウルフード「いきなり団子」は、作り手も、私たちも豊かにしてくれる、地元の食文化の一つ。地域や家庭の味が続いていることもSDGsの大切な視点です。


休日に江津湖周辺を散策する

湖の景色の美しさや、湧水の小川での水遊び、魚・水辺の生き物探しも楽しめる江津湖周辺。「これだけの都市圏に、生き物に触れられる自然環境が維持されているのは貴重」と、「水前寺江津湖公園サービスセンター」の坂部高矢所長は語ります。遊具がほとんどない公園ですが、子どもたちは石や草、水で遊びを考えて楽しむのだそうです。「このような環境で育つことで、『自然を大切にする』『身の回りのもので工夫して楽しむ』考えが自然と身に付き、持続可能な社会への力になるのでは」と坂部所長。休日をエコに気持ちよく過ごしながら、SDGsへの意識も育めそうです。

澤さん's チェックポイント

世代を超えて受け継がれてきた江津湖の風景や自然環境の豊かさは、下水道整備や公園管理など、まちづくりの積み重ねのたまものです。子どもの頃に遊んだ水辺で子や孫も楽しめる、「当たり前の景色」を維持することもSDGsの考え方につながります。


熊本県内には「SDGs未来都市」に選定された自治体があります!

「SDGs未来都市」とは、国がSDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案する都市を選定する制度。2018年から、毎年30程度の自治体が選定されています。熊本県からはこれまでに2市町が選定。さらに両自治体とも、「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれています。

[2018年選定]小国町

豊富な地熱エネルギーを発電や農業、観光に生かす

温泉地ならではの地熱と森林を生かした「低炭素都市づくり」が評価されている小国町。モデル事業として、地域資源を生かしたエネルギー研究・交流拠点整備事業が進められています。他にも、小国杉の地熱乾燥や質の高いSDGs教育などを実践中。今後は地熱による農作物栽培や、地熱発電で充電し町内の観光地を巡るグリーンスローモビリティ導入バスなども検討されています。

町内で稼働中の地熱発電所

小国杉を地熱で乾燥させる施設も稼動中

写真提供・取材協力/小国町政策課


[2019年選定]熊本市

災害に強い都市づくりとSDGsの普及に取り組む

熊本地震の経験と教訓を生かした、災害に強い持続可能なまちづくりの提案が評価された熊本市。2019年度は「SDGsを知る・理解する」ための活動を多く行いました。また、日産グループと連携して、電気自動車を活用し、環境工場で発電した電力を、災害時に避難所などへ供給するなど、災害にも強い「ライフライン強靭化プロジェクト」が始まっています。今後は、さまざまな分野での「SDGs実践」が動き始める予定です。

電気自動車からの給電デモンストレーション

成人式でSDGs元年アピール

熊本市のSDGsバッジには、小国町の小国杉が使われています

写真提供・取材協力/熊本市環境政策課、政策企画課


ESD(持続可能な開発のための教育)指定校に認定された熊本市立北部中学校

全国に先駆けてESD指定校に認定(2018〜2019年度)された北部中学校。各教科や「総合的な学習」でSDGsを取り入れています。さらに、厚生委員会はユニクロと連携して古着のリユース活動、緑化委員会は花壇や緑のカーテン作りを進めるなど、委員会活動のすべてにSDGsの目標を設け、生徒全員がSDGsに関わっています。「ESDを通して地域の方やさまざまな業界の方と交流が増え、『多面的な考え方』も身に付いた」と、研究主任の田中隆太郎先生。今後もキャリア教育の一環として継続し、社会に広く貢献できる人材を輩出します。

写真提供・取材協力/熊本市立北部中学校