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協力/熊本県専門士業団体連絡協議会

亡くなった父に借金が… 遺族が返済しなければ?

Q.亡くなった父にお金を貸しているという人が訪ねてきました。貸しているお金を代わりに払ってくれと言われていますが、額が大きくて支払うことがとてもできません。支払わないといけないのでしょうか。(45歳 男性)
A.負債を受け継がない「相続放棄の申述」ができます

自分の借金はなるべく人には知られたくないもの。自分を頼りにしている家族にはなおのことです。そのため、亡くなってから故人に多額の借金があったことが発覚した、ということがままあります。

故人の遺産が少なく、負債が多い場合には、相続人は「相続放棄の申述(被相続人の権利や義務を一切受け継がないこと)」を行うことができます。相続放棄の申述は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、故人が亡くなってから3カ月以内に行うこととされています。借金が後になって発覚した場合などには、それを知ってから3カ月以内に申述を行えば、相続放棄をできる場合があります。ただし、故人の遺産を使ってしまった後では、原則として相続放棄はできなくなるので注意が必要です。

故人が、貸主に最後にお金を返したのが10年以上前なら、消滅時効を援用(主張)して、支払いを免れることも可能です。相手が会社だと5年で消滅時効にかかります。ただし、最後の返済から10年(貸主が会社の場合は5年)経過する前に裁判で判決が出ている場合や、時効完成後にお金を返した場合などは、消滅時効を援用できません。

亡くなったご家族に借金があったことが分かったら、とても困惑されると思います。そのような時は一度、弁護士に相談してみてください。

弁護士 鈴 将一郎

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