人生の中では、転職や異動のほか、結婚、出産など、さまざまな転機があります。それらの転機をどう捉えるかで、モチベーションも変わってくるはずです。2人のキャリアコンサルタントが語る「転機の捉え方」を参考に、新しい年はいろんなことにチャレンジしてみましょう。
【新春×対談】キャリアコンサルタントが語る 転機がもたらす好循環
キャリアコンサルタント 広瀬美貴子さん
結婚を機に看護師を辞め、2004年に金銭教育とキャリア教育を軸に起業。07年、法人化。県しごと相談支援センターキャリア相談員、大学非常勤講師。
キャリアコンサルタント 小佐井佳奈子さん
出版会社勤務、事務職を経て、現在、就職相談や大学での就職支援などを担当。小学2年、4年の2児の母。
Lesson.1
個人によって異なる、さまざまな"転機”
広瀬
「転機」の捉え方にはいろいろあります。予期できることや期待したことが起こる一方で、予期したことや期待したことが起きないということも転機なのです。例えば、就職や結婚などがそれに当たります。また、やりたいことを見つけたり、こだわっていたものを捨てたりするような内的変化も転機として捉えられます。
小佐井
私にとっては、結婚よりも母親としての役割が加わってからが大きな転機になったような気がします。それまでは、自分がやりたいことをすぐに実行に移せたのですが、母親となってからは、2人の子どもを抱えているのですぐには行動に移せない。当時は、「やりたい仕事」ではなく、母親としての役割を果たしながら「やれる仕事」にシフトしました。この経験をしたことが、お母さんたちの再就職の難しさに気付くきっかけとなり、今の仕事に結び付きました。
「何が必要か」を考え、行動に移す
広瀬
私は看護師の仕事を辞めて7年のブランクがありました。当時子どもが6歳、5歳、1歳。働きたいという気持ちはあるけれど、自分の商材が何かということが分かりませんでした。いずれは起業したいという思いは固まっていたので、まずは、必ず必要となる経理の仕事を始めました。そこで金銭教育の大切さを痛感し、それを仕事にするには何が必要なのかと考えたのです。それにはお金に関する勉強が必要なので、総務事務職から営業のパート職に転職。資格取得と教えるためのスキルを学ぶ時間を確保しました。私の中には、「子どもがいるからできない」という考え方はありません。「子どもがいるけれど、どうやったらできるか」ということを常に考えていました。
転機をこう捉えよう POINT(1)
「できないこと」を考えるのではなく、「どうやったらできるか」に思考を転換する。
Lesson.2
負のスパイラルから脱け出すには状況把握が大切
広瀬
再就職のセミナーに参加される方々は、十人十色の背景はあるものの、「子どもがいるから」「協力者がいないから」「家事・育児が今まで通りにできなくなるから」・・・といった理由で仕事を始めることをちゅうちょしている人を多く見かけます。
小佐井
再就職できない理由ばかりを考え、なかなか一歩を踏み出せずにもんもんとされていますよね。
広瀬
そこから抜け出すには、誰かに相談するのも一つの方法ですし、再就職支援のセミナーや、仕事の体験会に参加してみるのもよいでしょう。何かしら行動に移すことで世界が変わります。
小佐井
自分だけの世界から飛び出すことで、入ってくる情報量も変わってきます。
広瀬
もちろん、参加してみて「仕事を始めるタイミングは今ではない」と気付く人もいます。しかし、スタート時期が何年か先だと分かると、次はそれまでにできることに目が向くので、それは前進ですよね。
小佐井
人は見通しが立たないことへの不安は大きいものですが、目標がはっきりすると、そこからの行動は早くなります。
広瀬
そうなんですよね。では、もんもんとした負のスパイラルから抜け出すには、どうすればいいのか。ここで一つの方法を紹介します。最初は(1)今の自分の状況を把握する(2)自分が大切にしたいもの、譲れないことは何かを考える(3)相談に乗ったり支援したりしてくれる人・機関があるかを考える。最後が(4)自ら支援の情報を入手するなど、行動に移す—という流れです。
転機をこう捉えよう POINT(2)
転機をうまく乗り越えるには…
(1)状況把握→(2)自己分析→(3)支援を確認→(4)行動
過去のマイナスをプラスに捉え直す
広瀬
相談者の中には、自分の状況が把握できておらず、なかなか前に進めない方も多いです。
小佐井
今の状況をプラスだと捉えられた時が、新たなスタートになるケースが多いように思います。
広瀬
転職の場合は、前職を引きずっていてはプラスには転じられません。
小佐井
私がまさにそうでした。編集と営業の仕事を少し経験し、その次が事務・・・と仕事の内容が次々に変わりました。こんな細切れの仕事でどうキャリアをつないでいけばいいのかと思っていた時に、キャリアコンサルタントの仕事を知り、資格を取りました。これまでの細切れのキャリアが全て生かせると考えられたのです。これが私の人生がマイナスからプラスに転じた瞬間でした。
Lesson.3
長期的な視点で人生を俯瞰(ふかん)することも大切
広瀬
子育て中のお母さんたちの中には、「子育てしかしてきていない」「経歴書に書けるような資格がない」と、子育てに向き合っていた時間をマイナスに捉えている人がいます。しかし決してそうではありません。PTA活動で人をまとめたり、イベントを企画したりする経験も、キャリアの中では大きなプラスの要素です。
小佐井
子育てする中で培ったことの大切さに気付いていないだけなのです。再就職の相談者に話を聞いていくと、少しずつ自分に自信を取り戻す人も多いです。
広瀬
私たちの人生は、いろんな転機が繰り返し起こります。その中で、時には自分の人生を長期的に考え俯瞰することも大切でしょう。転機をポジティブに捉え、プラスに変えていけるかは、本人の考え方次第です。自分の状況を適切に整理し、新たな行動に移していけるといいですね。
転機をこう捉えよう POINT(3)
転機が起こるときは、マイナスの時もプラスの時も、同じようにストレスが掛かります。ストレスをため込み、体の不調が出る前に、信頼できる友達や相談機関に相談し、上手にストレスを発散するようにしましょう。
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