【599号】ななみ先生と浦田先生が答えます! 住まいと暮らしのQ&A[2021 秋]

日々の生活はもちろん、人生設計をする上で切っても切り離せない“お金”。住まい、教育、結婚、介護…、さまざまなライフイベントに資金の悩みは尽きません。本紙「家計簿チェック」講師の佐藤ななみさんと浦田幸助さんに、住まいと暮らしにまつわるお金の情報について聞きました。
ファイナンシャルコーチ
佐藤ななみさん

「お金ともっと仲良く!」を合言葉に、家計・住宅資金・保険・資産運用・終活に関する個別相談業務やセミナーを展開中。YouTubeチャンネルでもお金の情報を分かりやすく発信。
https://financialcoach.jp/

佐藤ななみさん

ファイナンシャルプランナー
浦田 幸助さん

浦田幸助FP事務所所長。個別相談への対応やセミナー開催など、活動は多岐にわたる。ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャルプランニング技能士。
https://www.sfpmoney.jp/


「投資」に取り組み始める人が急増 金融リテラシーの向上 より重要に

早いもので今年も残り2カ月余りとなりました。新型コロナウイルス感染症の再拡大に始まった2021年。経済活動が制限され多くの人に影響が及ぶ中、日経平均株価はこの秋、バブル後最高値を更新しました。日々の生活や将来への不安に、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの優遇税制の浸透も相まって、「投資」に取り組み始める人が急激に増えているようです。

一方、FP相談の現場では、投資の目的やリスク許容度に合わない勧誘を受けているケースや、投資をうたった詐欺被害を見聞きすることも増えています。金融リテラシー(知識や判断力)の向上がますます重要になる中、来春からは高校の家庭科に金融教育が取り入れられ、いよいよ学校で“お金”の授業が始まります。大人も負けてはいられません。日常生活に今日から生かせる、住まいと暮らしの情報をお届けします。

1 コロナ対応型保険を勧められた 掛け替えを検討すべき?
2 住宅ローンが家計を圧迫 返済条件を見直したい
3 「元利均等」と「元金均等」 どちらの返済方法がお得?
4 つみたてNISAを始めたい 初心者におすすめの商品は?
5 給与明細の天引き額にため息 保険料負担を抑える方法は?
6 「60歳引退」を計画中 老後資金はどのくらい必要?
7 欲しい住宅物件があるけど…「貯蓄ルール」に支障が出そう
8 青色申告に挑戦したい「65万円」控除を受けるには?


コロナ対応型保険を勧められた 掛け替えを検討すべき?

Q.

医療保険を新型コロナ対応型に掛け替えるよう勧められています。今のご時世、コロナ未対応では不安ですが、既契約は3年前に終身タイプに見直したばかり。生涯安心のつもりでしたが、掛け替えるべきでしょうか。

A.

医療保険の勧誘を受ける際、「新型コロナウイルス感染症も保障」を強調されることで、あたかもコロナが出現する前の契約では保障されないかのように誤解してしまう人がおられるようです。

一般的な医療保険や共済商品で入院給付金が支払われるのは「病気やけがの治療を目的として病院または診療所に入院」した場合。コロナ感染症も病気ですから、従来の契約でも当然、保障対象です。さらにコロナ関連で保険会社各社は、医療機関の都合で宿泊施設や自宅などで療養せざるを得なかった人についても、医師の証明に基づき入院給付金を支払っています。「病院等へ入院」という約款上の給付要件を満たせない人にも配慮した柔軟な対応です。

一方、感染の広がりを受け、コロナをはじめ特定の感染症に特化した保険商品も新たに登場しています。これらは、従来の保障に加算給付を行うもので「コロナ保険に未加入=コロナの保障がない」ではありません。商品を検討する際は事実関係を十分に理解した上で選んでください。

総じて今回は、コロナを理由に別の保険に入り直す必要はないように思います。だからといって、終身タイプに加入していれば「生涯、一切見直し不要」というわけでもありません。この先も、医療や公的保障、またご自身の状況に照らしながら必要に応じて適切に見直しを行ってください。(佐藤)


住宅ローンが家計を圧迫 返済条件を見直したい

Q.

月々の住宅ローンの返済が家計を圧迫しています。ある程度年を取ってから返済条件を見直すにはどうすればよいですか。できれば、今の家に住み続けたいと考えています。

A.

住宅ローンの支払いが困難になったときの対処法をいくつか紹介します。

まず低い金利のローンへの「借り換え」が考えられます。ただし、年齢制限があり、たいていの商品は65歳~70歳が上限です。それ以上の年齢の場合、「親子リレー返済」を使った借り換えを検討する必要があります。

2つ目に、「リバースモーゲージ」があります。これは、自宅を担保に生活資金を借り入れ、自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分して、借入金を返済する仕組みです。

また、「リースバック」という方法も考えられます。これは自宅を売って現金化し、売却した不動産業者とリース契約をして住み続けるというものです。ただ、リバースモーゲージもリースバックも、対象不動産の評価によって、受けられる借入額や毎月のリース料が変わってくるため、自宅の評価額が低いと希望に合わない可能性が出てきます。

このほか、住宅金融支援機構の「リ・バース60」を利用する方法もあります。これは60歳以上向けの住宅ローンで、毎月の支払いは利息のみ。元金は、本人が亡くなったときに、相続人が一括して返済するか、担保物件(住宅および土地)の売却により返済するものです。この商品を借り換えに使うことで毎月の返済を軽減できる可能性があります。

それぞれの詳細について、各取扱業者に確認し、返済条件の変更を検討してみてはいかがでしょう。(浦田)


知っ得情報

特定疾病等の特約

医療保険に付帯する女性特約や生活習慣病特約などにも、似たような誤解が時々見受けられます。これらの特約は、所定の疾病に該当した場合に限って給付を増額するものです。主契約である医療保険からも当然、保障されるので、「付けない=所定の疾病の保障が除かれる」わけではありません。別途、保険料を負担してまで保障の増額が必要かどうかを十分吟味して要否を判断してください。(佐藤)


「元利均等」と「元金均等」 どちらの返済方法がお得?

Q.

住宅ローンの返済方式について、「元利均等返済」と「元金均等返済」のどちらにするか悩んでいます。両者の違いやメリット・デメリットを教えてください。

A.

両者の違いを説明する前に、ローンの利息は、常に「残高に対して負担する」ということを押さえておきましょう。返済が進み残高が減っていくに従って、毎回返済額のうち利息分が減ることは、返済方式を問わず共通です。

「元利均等返済」は、元金と利息を合計した毎回の返済額が一定となる返済方式です。期間が経過するに従って利息が減少する分、元金の返済に回る額が増えるため、残高の減り具合もそれに伴って加速します。

「元金均等返済」は、元金の返済に充てる金額を毎回一定とする返済方式です。これに、その時々の残高に対して生じる利息額を加算して返済するため、毎回の返済額は開始当初が最も高く、期間の経過に伴い利息が減るに従って徐々に減っていきます。

諸条件によっていずれにもメリット・デメリットがあり、どちらが良いかは一概には言えないところです。

支払い総利息の面では、借入額や金利、返済期間が同じなら、元金均等の方が少なく済みます。一方で、元金均等は開始当初の返済額が大きいため、返済負担率(収入に占める返済額の割合)が基準を超えてしまい、希望額を借り入れできない場合も。また、十分に余裕を持って返済できる人なら、返済額を減らしていく必要があるのか?も考えたいところです。初回と同額を返済し続けられるのであれば、返済期間を短くした元利均等の方がさらに利息総額は少なくなります。(佐藤)


つみたてNISAを始めたい 初心者におすすめの商品は?

Q.

「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」を始めたいと思っていますが、投資を本格的にやったことがなく不安です。初心者は、どのような商品を購入するとよいですか。

A.

つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託に限定されています。そのため、初心者には始めやすいと思います。

とはいうものの、つみたてNISAの対象商品は、今年6月現在199本あり、その中から選ぶのは結構大変です。そこで、まず投資信託の種類を「パッシブ運用」と「アクティブ運用」に分けましょう。パッシブ運用とは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの指標に連動する運用成果を目指す運用スタイルです。代表的な商品として、「インデックスファンド(公募投信)」や「ETF(上場投資信託)」があります。

一方、アクティブ運用は、比較している指標を上回る運用成績を挙げることを目標とした運用スタイルをいいます。プロの投資家が独自の調査・分析を行い、市場平均を上回るリターンを目指します。

一般的にパッシブ運用の方が手数料である信託報酬が少なくて済みます。何から始めればよいか分からないという人は、パッシブ運用の中の、「日本」「先進国」「新興国の株」「債券」など複数の指標に連動したバランス型の投資ファンドの運用を検討してみてはいかがでしょうか。(浦田)


知っ得情報

つみたてNISAの手数料

つみたてNISAの投資信託は、購入時と解約時に手数料がかかりません。解約手数料に似た、信託財産留保額がかかる投資信託もありますが、こちらもそれほど多くはありません。

チェックすべき手数料は投資信託の信託報酬です。これは、投資信託の運用や管理にかかる費用で、保有している間、資産の中から毎日少しずつ差し引かれます。支払う額は保有投資信託の金額に対する年率で表示されます。(浦田)


給与明細の天引き額にため息 保険料負担を抑える方法は?

Q.

給与明細を眺めていると、天引き額の大きさにため息が出ます。税関係は控除を活用して多少の工夫をしていますが、社会保険にも負担軽減のために工夫できる方法はないものでしょうか。

A.

社会保険の料率は現在、標準報酬月額に対して厚生年金18.3%、健康保険10.29%(※1)、介護保険1.8%(※1)で、これらを労働者本人と雇用主が半額ずつ負担(労使折半)するのが原則です。また、雇用保険の労働者負担分は給与支給額の0.3%(※2)で、天引き額は大まかに、収入の15%ほど(※3)になります。

収入の15%というと、年収300万円の人で45万円、500万円の人なら75万円ですから、かなりの高額ですね。「どうにか抑えたい」というお気持ちには共感しますが、収入を下げない限り、納付額を抑える方法はありません。しかし、家計管理全体で考えると何もできないわけではないと思っています。これら社会保険による給付内容を知ることで、不安に任せて加入している生命保険の負担を抑えられる可能性が高まるのではないでしょうか。

厚生年金には、老後の生活資金となる「老齢年金」に加え、重い障害を負った場合の「障害年金」や、亡くなった人の遺族を支える「遺族年金」といった保障もあります。健康保険からは、医療費が高額になった場合には「高額療養」が、療養のため休業を余儀なくされたときには「傷病手当金」が給付されます。具体的な金額は諸条件によって幅がありますが、これら既にある保障を知らずに不安を抱えていた人には、かなり手厚いものに感じられるはずです。

社会保険料を直接的に抑えるのは難しいですが、制度を知ることで間接的に節約できる金額は決して少なくないと思います。(佐藤)

※1 全国健康保険協会/熊本県の料率。健康保険組合の場合は組合ごとの料率による
※2 農林水産・清酒製造・建築の事業は0.4%
※3 標準報酬月額65万円超の人を除く


「60歳引退」を計画中 老後資金はどのくらい必要?

Q.

私が勤めている会社は60歳定年ですが、再雇用で65歳まで働くことができます。しかし、個人的には60歳で引退し、セカンドライフは趣味などをしながら暮らしたいです。どのくらいの資産を持っていればよいですか。

A.

人生を100年とすれば、60歳以降の期間は40年もあります。その期間をどう過ごすかは大切なライフプランですね。

仮に60歳で仕事を辞めるとして、どのくらいの資金準備が必要なのでしょうか。

2019年の総務省家計調査報告によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の1カ月の消費支出は、約24万円という結果でした。また、可処分所得(税金や社会保険料控除後)は約21万円となっており、単純計算で月3万円、40年間で1440万円ほど不足することになります。

一方、高齢単身無職世帯(60歳以上)の1カ月の消費支出は約14万円で、可処分所得は約11万円となっています。同様に計算すると、こちらも1440万円ほど不足します。

ただ、これらの数字はあくまで平均値で、実際の年金収入や住宅の有無などによっても変わってきます。さらに、旅行やレジャー、住宅メンテナンス・介護費用などが追加で必要になってきます。

そこで、まず自身の実際の収入と支出をシミュレーションしてみましょう。そのために必要なのは、日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで年金額を把握することと、退職金や企業年金、個人年金などを確認することです。

併せて、自分が引退後に何をしたいのか、それにはどのくらいお金が必要なのかを調べましょう。それができれば、60歳までにいくら貯蓄しておけばよいかが分かり、60歳での引退も可能になると思います。(浦田)


知っ得情報

FIRE(早期リタイア)

“FIRE”とは“Financial Independence,Retire Early”の略で、早期リタイアのことです。最近は、40歳や50歳で労働からの引退を目指す方も見かけます。

FIRE実現のためには、一説では「年間支出の25倍」の貯蓄が必要といわれます。単純計算で、生活費月額25万円とすると、年間では300万円。これを25倍すると、7500万円という金額になります。実践のためには、資産運用も含めたライフプランが必要ですね。(浦田)


欲しい住宅物件があるけど…「貯蓄ルール」に支障が出そう

Q.

月収の2割を貯蓄するルールで家計を管理してきました。現在、住宅購入を検討中ですが、希望の物件を購入すると「2割貯蓄」を続けられなくなりそうです。もっと安い物件を探すべきでしょうか。

A.

そもそも「月収の2割を貯蓄」とは何を根拠にしたルールなのでしょう。何かしら重要な目的のための手段なら必要かもしれませんが、もし「貯蓄する」という行動そのものが目的であれば、家計管理や資産形成に対する考え方を根本から見直したいところです。

家計には”フロー”と”ストック”という2つの概念があり、双方をバランスよく見る必要があります。フローは「流れ」のことで「いくら入っていくら出たか」という側面です。対してストックは「残高」で、資産と負債の合計が純資産の総量です。

ところで、金銭を支出する行為には”消費”と”投資”の2種類あります。消費は文字通り「消え費やされるもの」に支出する行為で、フローの概念に属します。一方、投資は「資産となるもの」に支出する行為で、ストックの概念に属します。ここには預貯金や有価証券などの金融資産だけでなく、不動産の取得も含まれます。

不動産、特にマイホームの場合、資産と言っても流動性が圧倒的に低く、建物の経年劣化を考えると消費である側面も含まれます。表面的な価格だけでなく、物件の資産性と価格の妥当性を見極める必要があるかと思います。

貯蓄は大切です。しかし人生の目的ではありませんよね。人生設計と家計管理、資産形成の優先順位とバランスについて、今一度、整理してみてください。(佐藤)


青色申告に挑戦したい「65万円」控除を受けるには?

Q.

個人事業主です。今まで白色申告で確定申告をしてきましたが、来年度は青色申告に挑戦したいと思います。青色申告を行うと青色申告特別控除を使えるそうですね。最高の65万円控除を受けるにはどうすればよいですか。

A.

青色申告とは、日々の取引を記録するために一定の帳簿を備え、記帳し、その記録に基づいて確定申告を行う制度です。原則として複式簿記で記帳しますが、簡易な単式簿記を選ぶこともできます。

青色申告のメリットの一つに「青色申告特別控除制度」があります。通常は、売り上げなどの収入から必要経費を差し引いた金額が所得となり、その所得に課税されます。この制度は、さらにその所得から最高で65万円を差し引くことができる結果、税金が安くなるというものです。

青色申告ができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがある人ですが、65万円控除が適用されるのは、不動産所得(事業的規模)、または事業所得のある人に限られます。事業的規模とは、不動産所得の場合、家屋はおおむね5棟以上、アパートなどは10室以上を賃貸していると、条件を満たすと考えることが多いです(5棟10室基準)。

事業所得の場合は事業を行っているため、もちろん事業的規模は満たされています。

また、複式簿記などで記帳する正規の簿記の原則に従って帳簿付けをしていることや、しっかりした内容で作成した貸借対照表と損益計算書の添付も必要です。ここまでの条件を満たすと、55万円の控除を受けることができます。

65万円控除に持っていくには、インターネットを使った電子申告・納税システム「e‐Tax」による申告、または電子帳簿保存を行っている必要があります。(浦田)


知っ得情報

家計簿アプリ

家計簿をつけている人が、ひと昔前より増えているような気がします。スマホの家計簿アプリの普及がその理由でしょうか。カメラでレシートを読み取るだけで簡単に記帳できたり、銀行口座や各種キャッシュレス決済とデータ連動できたりとなかなかの実力です。

家計簿で最も重要な収支の集計や予算の管理、また残高の把握も自動で行ってくれます。無料のものも多いので、活用してみてはいかがでしょう。(佐藤)