貯蓄型保険に生じる一定のマイナス期間 早く元が取れた“昔”に対し“今”は…

【今回のスタディー】貯蓄型保険の利率

先月のこのコーナーで、住宅ローンの昔と今についてお話ししました。住宅取得の中心層を成す20~40代。その親世代の経験に基づくアドバイスが必ずしも適切と言えなくなってしまったのは、この20~30年で金利水準が大幅に低下してしまったからです。

同じ理由で、親世代の経験が当てはまらなくなったものは他にもあり、例えば個人年金や学資保険など、貯蓄手段として保険商品を活用することです。

複利率が予定利率を下回るワケ

下の表をご覧ください。(1)は、私がご相談を受けた方が契約されていた個人年金保険の保険証券から、許可をいただいて内容をまとめたものです。対して(2)は、現在販売中の某個人年金商品について、(1)と同じ金額を同じ期間にわたって積み立てた場合の見積もりです。最新の個人年金では、以前の半分しか受け取れないことが見て取れます。

ところで、運用成果から換算した複利率が、保険会社の提示する予定利率を下回ってしまうのはどうしてでしょう。これは、私たちが支払う保険料には、保険会社の各種経費が含まれることに起因します。予定利率で積み立てられるのは、保険料のうち経費を差し引いた後の金額だけ。逆算したところ(1)は18%、(2)は10%ほど引かれているようです。

低金利下の契約は恩恵薄く

このような仕組みから、保険商品においては必ず一定のマイナス期間が生じます。それでも、高金利時代の契約は早めに元が取れて大きく殖えたのですが、低金利下の契約だとそうはいきません。払込期間の大半で損失を抱え続け、ようやく元が取れた頃には預金に毛が生えた程度の受け取りに…。残念ながら、リスク・リターンのバランスとして合理性に欠けていると言わざるを得ません。

個人年金保険で具体例を示しましたが、基本的な構造は学資保険も大差ありません。名称は同じでも、昔のそれとは全く違うことを知っておいていただきたいと思います。

※1:保険会社が積立金を運用する利率 ※2:年金開始時点の資産残高 ※3:支払保険料と最終受取額から逆算した全期間の平均利率

※1:保険会社が積立金を運用する利率 ※2:年金開始時点の資産残高 ※3:支払保険料と最終受取額から逆算した全期間の平均利率

選択肢を広げて、根拠を持って選択を

「だったら何で蓄えればいいの?」との声が聞こえてきそうですね。「〇〇です」とスパッと言えたら分かりやすいのですが、選択肢はいくつもあって、何を選んでも必ず何らかのリスクを伴う以上、一概に何が絶対とは言い切れません。お伝えしたいのは、“みんな”についていくことが唯一無二の手段でもないし、自分に合うとは限らないということ。根拠を把握しないまま思い込みで選択してしまうのはもうやめにしませんか。

目的に対し最適な手段を選ぶには、複数の選択肢を持つこと、それらを客観的に比較することが必要です。自分で学ぶのも大事ですし、高度な専門知識を伴うだけに必要に応じてプロのサポートを受けることもまた大切です。


さとう ななみ

「お金ともっと仲良く!」を合言葉に『佐藤ななみのおかねの教室』を主宰。家計・住宅・保険・資産運用の講座や相談業務を展開中。書類整理やフリーランス向けワークショップも人気。
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