【548号】ななみ先生と浦田先生が答えます! 住まいと暮らしのQ&A[2020・秋]
県南地域などが被害を受けた7月の熊本豪雨が記憶に新しいところですが、近年は全国各地で自然災害が多発し、日頃の備えの重要性が指摘されています。そこで今回は、災害への対策をメインに、住まいと暮らしにまつわるお金の情報について、本紙「家計簿チェック」でおなじみの佐藤ななみさんと浦田幸助さんに聞きました。
ファイナンシャルコーチ
佐藤ななみさん
「お金ともっと仲良く!」を合言葉に『佐藤ななみのおかねの教室』を主宰。家計・住宅・保険・資産運用の講座や相談業務を展開中。書類整理やフリーランス向けワークショップも人気。
https://kakei773.com
ファイナンシャルプランナー
浦田 幸助さん
浦田幸助FP事務所所長。個別相談への対応やセミナー開催など、活動は多岐にわたる。ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャルプランニング技能士。
https://www.sfpmoney.jp/
災害から“住まいと暮らし”を守るために 日頃の備えと情報収集しっかりと
日本損害保険協会の今年3月の発表によると、国内の過去の主な風水害などに伴う保険金支払いの最高額は、2018年9月に関東地方を襲った台風21号によるもので、1兆678億円に上りました。以下、上位10災害のうち5つが18~19年に発生したものでした。また日本地震再保険社の発表(今年3月)では、過去の地震保険金支払いの最高額は11年3月の東日本大震災で、1兆2862億円。次いで16年4月の熊本地震の3883億円、3位と5位が18年の大阪府北部地震、北海道胆振東部地震と、ごく近年の災害が続きます。
保険金支払額の増加は、自然災害の頻発と大型化が大きな要因と思われます。加えて、“万一”に対する意識の高まりも影響しているかもしれません。
災害への備えは保険の加入以外にもさまざまあります。日頃からの防災対策はもちろん、いざというときに適切に行動するための情報もしっかりキャッチしておきたいものです。
1 | 自宅の補強工事を計画中 補助金制度について教えて |
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2 | 「被災者生活再建支援制度」 詳しい内容を知りたい |
3 | マイホーム取得を検討中 安全な土地選びの目安は? |
4 | 自然災害に備える保険 改めて確認すべきことは? |
5 | 戸建てとマンション 住むならどちらがお得? |
6 | 「ZEH」の暮らしに興味 有効な投資と考えていい? |
自宅の補強工事を計画中 補助金制度について教えて
Q.
地震や台風、水害など、相次ぐ自然災害に備えて自宅の補強工事を計画しています。リフォーム費用に対する補助金制度があるそうですが、詳しく教えてください。
A.
既存住宅の耐震性向上や劣化対策をはじめ、対象となるリフォーム工事の費用の一部を国が助成してくれるのが、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」です。対象工事は防災対策に限らず、(1)性能向上リフォーム<躯体(くたい)の劣化対策、耐震、省エネ対策など>(2)3世代同居対応改修(キッチン・浴室・トイレ・玄関の増設)(3)子育て世帯向け改修(室内事故防止、不審者侵入防止など)…と、幅広い世帯が対象となり得ます。
補助を受けられる金額は、対象工事費合計額の3分の1で、リフォーム後の住宅性能に応じて100万~300万円の上限額(右表)が設定されています。
補助金を受けるには、3つの条件があります。1つ目が、工事前にインスペクション(床・壁の傾きや雨漏り、シロアリ被害など日常生活に支障を来す恐れのある劣化が生じていないかを把握する調査)を実施すること。これにより劣化が見つかった場合は、リフォーム工事と同時に補修を行うか、点検・補修などの対応方法および時期を維持保全計画に明記する必要があります。2つ目は、リフォーム後の住宅が一定の性能基準を満たしていること。3つ目は、リフォーム履歴と維持保全計画を作成することです。
補助金の申請手続きと資金の受領は、リフォーム工事の施工業者を通じて行います。工事計画から完了報告まで、制度にしっかり対応してくれる業者に依頼することが重要ですね。
(佐藤)
「被災者生活再建支援制度」 詳しい内容を知りたい
Q.
自然災害で住宅を失ったり、損害を受けたりした際に支援金を受けられる「被災者生活再建支援制度」というものがあると聞きました。どのような制度でしょうか。
A.
自然災害が原因で、住宅に一定の被害を受けた場合、行政から支援金を受けることができます。住宅の「基礎支援金」と再建方法に応じた「加算支援金」の2種類があります。
住宅の被害程度に応じた基礎支援金は、住宅の罹(り)災証明で認定された被害程度(全壊、大規模半壊、半壊)を基準に支給され、解体世帯や長期避難世帯にも同様の額が支給されます。解体世帯とは、住宅が半壊、または敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯のことです。
加算支援金は、住宅の再建方法(建設・購入、補修、賃貸)に応じて支給されます。ただし、被災者生活再建支援制度が適用される家屋は、人が住んでいた世帯なので、空き家や賃貸物件、別荘などは対象外となります。
例えば家が全壊した場合、基礎支援金として100万円支給、その人が家を新築する際は加算支援金として200万円がさらに支給されます。
いずれも支給の申請窓口は市町村で、基礎支援金は罹災証明書や住民票など、加算支援金は契約書の写しが必要です。申請の期限は基礎支援金が災害発生日から13カ月以内、加算支援金は37カ月以内と決められています。
(浦田)
知っ得情報
災害復興住宅融資
被災された方が、住宅を建設、購入、補修する場合に低い金利で受けられる融資制度です。例えば、土地を取得して住宅を建設すると、最高3700万円まで借り入れることができます。この場合の融資金利は、団体信用生命保険料込みで0.74%(令和2年10月現在)となります。
10月1日から制度の一部が見直され、詳細は住宅金融支援機構のホームページで確認できます。
(浦田)
マイホーム取得を検討中 安全な土地選びの目安は?
Q.
マイホームの取得を考えていますが、県内でも近年、地震や豪雨などの大規模な災害が起きているため、立地について慎重になっています。災害に強い安全な土地の探し方・選び方の目安などはありますか。
A.
今年7月の熊本豪雨や2016年の熊本地震など、身近な所で自然災害の脅威を思い知らされました。そこで、専門的な知識がなくても、自分で調べられる「災害に強い土地」の見つけ方を紹介します。
(1)地形の観察…特に土地の高低差や擁壁を観察しましょう。道路や隣地よりも土地の地盤面が低い場合、道路から雨水が流れ込んできたり、隣地から土砂が流入してきたりする可能性があります。逆に、土地の地盤面が道路や隣地よりも高く、擁壁がある場合、そこにひびが入っていないか、傾きがないかなどのチェックも必要です。
(2)ネットで調べる…国や自治体、研究機関などがさまざまな防災関連資料をインターネットで公開しています。熊本市は、洪水や土砂災害、高潮、津波を統合した「統合型ハザードマップ」を公開しており、危険地域や時間による被害の広がり方、避難所の場所などが色分けされて詳しく見ることができます。また「地震ハザードマップ」は、「揺れやすさマップ(震度)」と「地域危険度マップ(建物全壊率)」で、地域ごとの地震に対する危険度を把握できます。
(3)旧地名を調べる…旧地名の「字(あざ)」(小字)は、自然災害や地質、土壌などに由来したものが多くあります。例えば、川や湿地では「ツル」(津留・都留)や「ムタ」(牟田・無田)、河川の支流では「エダ」(江田・枝)などです。
現在の地名は変わっていることが多いため、その地域の市町村の図書館で関係資料を探したり、法務局で「閉鎖登記簿」を閲覧したりすると分かることがあります。
(浦田)
知っ得情報
お薦めの防災関連資料
公的機関が公開している資料をチェックされる際は、次のものがお薦めです。いずれもインターネットのウェブサイトにアップされており、無料で閲覧できます。
(1)国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
(2)熊本市「ハザードマップ」
(3)国土地理院「地図・空中写真・地理調査」「防災関連」「都市圏活断層図」
(4)独立行政法人防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」
(浦田)
自然災害に備える保険 改めて確認すべきことは?
Q.
災害に備えて火災保険や車両保険に加入しており、ひと通りの補償は準備しているつもりですが…。改めて確認しておくべきことがあれば教えてください。
A.
住宅などの建物や、収容されている家財に損害が発生したときに頼りになるのが「火災保険」です。火災や破裂・爆発による損害だけでなく、落雷や風災、雪災、ひょう災、水災などの自然災害も補償されます。このほか、水もれや盗難、破汚損などの日常生活リスク、物体の落下・飛来・衝突、騒じょうなど、思いがけない事態にも幅広く備えることができます。
火災保険は、多くの商品で水災や日常生活リスクに対する補償を除外することにより、保険料を抑えることができます。しかし大雨や洪水が頻発する昨今、特に水災補償についてはハザードマップを必ず確認し、リスクエリアに住む方は付帯しておくことを強くお勧めします。また地震や噴火、これらに起因する津波による損害は、火災保険では補償されません。「地震保険」もぜひ、セットしておきたいですね。
火災保険と地震保険は対象を「建物」と「家財」に分けて補償します。建物と比べて一点一点が少額である家財には意識が弱まりがちですが、いざ全損となると損害額は数百万~千万単位の規模になることもまれではありません。こちらもしっかり備えておきたいところです。
自然災害による車の損害については、自動車保険に車両保険(一般/エコノミー)を付帯することで補償を受けられます。ただし、火災保険と同様、地震や噴火、津波による損害は対象外です。これらに備える際は、地震特約(全損の際に50万円まで補償など)が付帯できる自動車保険を選ぶ必要があります。
(佐藤)
Q. 戸建てとマンション 住むならどちらがお得?
A.
戸建てとマンションの主な特徴を8つの項目別に〇△で比較してみました。それぞれ一長一短あり、最終的には、自分の好みやライフスタイルに合った方を選ぶのが一番ではないでしょうか。
(浦田)
「ZEH」の暮らしに興味 有効な投資と考えていい?
Q.
マイホーム計画を進める中、「ZEH(ゼッチ)」に興味を持ちました。光熱費の節約と、災害時の停電への備えになればと期待しています。建築予算は増えますが、有効な投資と考えてよいでしょうか。
A.
ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備により、できる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などを用いてエネルギーをつくることで、1年間に消費する住宅のエネルギー量が正味でおおむねゼロ以下となる住宅」の定義を満たす住宅のことです。これは国のエネルギーおよび環境政策に基づくもので、普及に向けた補助金の制度も設けられています。
このうち個人向けで対象となるのは、登録されたZEHビルダーまたはプランナーが関与するZEHの定義を満たした住宅を新築するか、既存住宅を改築した場合です。補助額は1戸当たり60万~115万円が基本。太陽光発電や高効率の換気・空調設備のほか、電気自動車などの充電設備、蓄電システムなどの導入状況により加算があります。
さらに、「先進的再エネ熱等導入支援事業」の補助対象設備を導入すれば、設備別に決められた金額(上限90万円)を別途受けることができます。 他に自治体が行う施策もあり、熊本市では1件当たり30万円のZEH導入補助金(国の補助金との併用可)が設けられています。
太陽光発電は、売電価格が年々下がっていることから、「メリットはない」との声も聞かれますが、災害時の電源供給に不安がないことは金銭以上の大きな利点で、有効な投資だと思います。予算の上昇分は、補助金の活用で上手にカバーしてください。
(佐藤)
知っ得情報
補助金制度
国が政策に基づいて行う補助金制度は、年度ごとに予算を立て、期限を設定して募集されるのが原則です。予算と期限、いずれかに到達した時点で終了となるため、気になる施策に対しては早めに動くのが得策です。 そして、これら補助金制度は年度ごとに内容を更新しながら出てきます。いつか利用したいとお考えの方は、最新情報をチェックしておいてくださいね。
(佐藤)
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