「くまにち すぱいす」で隔週掲載中の「まちづくり探検隊」。その紙面を通じて地域活動やまちづくりに興味・関心を持った方に、実際の行動に移してもらうための後押しとなるよう開催しているセミナーが、「かたってみよう! まちづくり」です。第2回のセミナーで行われた事例発表やワークショップの様子を紹介します。
今週は

第2回セミナー かたってみよう!まちづくり

@熊本日日新聞社・本社2階ホール


考えよう! 身近な防災

9月9日、熊本日日新聞社・本館2階ホールで開催したセミナー「かたってみよう! まちづくり」。

今回のセミナーは、「考えよう!身近な防災」のテーマに約20人の参加がありました。熊本地震という大災害を経験し、誰もが災害への備えの大切さを痛感しました。しかし、いざ「何かしなければ」と思っても、どのような準備や心構えをすればいいのか「分からない」という人も少なくありません。

そこでセミナーでは、今回から3回シリーズで、身近な防災を考える上で欠かせない要素の一つ「ハザードマップ」を作り、それをどう生かすかを学ぶことにしました。

2部制で地域防災の事例とハザードマップ作りを学ぶ

今回は、2部に分けて展開。第1部は、託麻原小PTA会長の漆野和也さんと、熊本市消防団(慶徳校区)・第15分団の山内要さんによる事例発表を行いました。地域で取り組んでいる防災活動の実例や、熊本地震の教訓を生かした防災のアドバイスなど興味深い話題に、参加者はメモを取りながら聞き入っていました。

さらに、セミナーの講師・ファシリテーターを務める水野直樹さんを交えたフリーディスカッションでも熱い意見が交わされ、事例発表と併せて、改めて「防災」への意識を高めるきっかけやヒントを得る機会になったようでした。

第2部のワークショップでは、テーマの柱であるハザードマップの重要性と、その作り方について水野さんが説明。「ハザードマップを見るのも、作るのも初めて」という参加者が多く、次回予定しているフィールドワーク(実際に地域を巡りハザードマップに落とし込む危険箇所を調べる)に向けて、いい予行演習になったようです。

事例発表、ハザードマップ作りと盛りだくさんの内容に参加者の満足度も大!

市が作成したハザードマップを基に危険なエリアをチェック

市が作成したハザードマップを基に危険なエリアをチェック

災害の経験者だからこそできる防災対策を

私たちは2年半前に熊本地震を経験しました。だからこそ、万一の災害に備えて「想像できること」「考えること」「提案すること」があります。今回のセミナーでは、さまざまな立場からのお話(事例発表)と参加者の皆さんの経験を重ね合わせて考えることで、未来への行動が見えてきたのではないでしょうか。考え付かなかった視点を与えられ、新たな気付きに目を向けることが、私たち“経験者”にできる防災対策だと思います。

講師・ファシリテーター 水野直樹さん(スタディライフ熊本理事)

ハザードマップの重要性が参加者に浸透

事例発表で熊本地震の際の避難の現実を聞き、薄れつつあった被災当時の記憶を呼び戻すことができました。また、改めて災害への備えの大切さを痛感しました。セミナーでは、参加者から「30~40代の働き盛りや子育て世代の防災意識が低いのでは?」との意見もあり、同世代である私も含め、意識改革の必要性を感じました。災害への具体的な備えや準備を行う上で、ハザードマップ作りがその第一歩になるとの気付きを得た参加者が多かったようです。

司会 荒木直美さん(タレント、まちづくりコーディネーター)


地域に潜む危険を"見える化"ハザードマップは防災の第一歩

事例発表では、小学校PTAが中心となって行った「防災キャンプ」の取り組みの紹介や、地域の自主防災組織としてさまざまな災害時に活動する「消防団」の立場から防災アドバイスなどがありました。フリーディスカッションでは、熊本地震後の市民の防災意識の変化や、地域の防災を考える上でのハザードマップの重要性などが話題に上りました。

地域での防災の取り組み 〜事例発表〜

事例発表(1)

将来は地域の防災を担う人材に

託麻原小学校PTA会長 漆野和也さん

最初の事例は、託麻原小(中央区)で7月21日・22日の2日間にわたって行われた「防災キャンプ」について、同小PTA会長で現役消防士でもある漆野和也さんが発表しました。

キャンプは、小学校の教室やプールを使って行い、5~6年生43人が参加しました。目的は、「防災の知識や情報を学び、子どもたちが自分で身を守れるようになること」「集団生活を通して自助・共助の大切さを知り、将来の地域防災を担う人材の育成」の2つです。
はじめに、児童1人に2㍑の水を配布。これは、私たちが1日に必要とする水が2〜3㍑といわれているからです。その後は、心肺蘇生法をはじめ、AEDの取り扱い、応急担架の作成、着衣水泳、災害図上学習(DIG)、非常食の調理など、実践的な防災知識を伝えました。

子どもたちの成長が大人たちの刺激になれば

2日目はラジオ体操でスタート。朝食後に、水消火器の取り扱い、起震車体験、緊急車両の展示などを行いました。子どもたちからは、「大人に言われなくても自分で考えて行動できるようになりたい」「『助けられる人』から『助ける人』になりたい」など、頼もしい感想が聞かれました。こうした子どもたちの成長を見て、大人の防災意識も上がればいいですね。

事例発表(2)

「想定」を捨てて、非常時の備えを

熊本市消防団(慶徳校区)・第15分団 山内要さん

タレント活動の傍ら、地元・慶徳校区の消防団員という顔も持つ山内要さん。熊本地震の際に避難所運営に携わった経験を基に、3つのアドバイスをくれました。

まずは、「自己完結できる備え」が大事です。自宅が被災を免れた場合、非常時の備えがあれば避難所に行かずに済みます。もし自宅で過ごす際は、3日分の食料に加え、お菓子やアルコール、たばこといった嗜(し)好品も準備しておくとよいでしょう。嗜好品を楽しむ時間があると日常を取り戻すことができ、不安軽減にもつながります。

次に簡易トイレです。非常時でも排せつは不可欠。災害で断水などが起こると、排せつ物の処理もままならず不衛生になりがちです。そんなとき、市販の簡易トイレがあると役立ちます。

自分の目で確認してより実用的なハザードマップを

最後は、日頃から安全な場所を探し、避難所を2つ決めておくこと。万一、家族がバラバラになっても、「どちらかにいる」と安心でき不安も和らぎます。

非常時にはたくさんの想定外のことが起こります。地域を自分の目で確認し、より実用的なハザードマップを作っておくことが、災害時の不安解消につながります。

実体験に基づく山内さんの発表やアドバイスにうなずきながらメモを取る参加者も

あまり例のないPTA主催の防災キャンプの事例発表に参加者も興味津々

あまり例のないPTA主催の防災キャンプの事例発表に参加者も興味津々

写真を使って、キャンプの様子を分かりやすく説明する漆野さん

写真を使って、キャンプの様子を分かりやすく説明する漆野さん


フリーディスカッション

熊本地震の経験生かし "深み"のあるハザードマップを

「忘れたい」「避けたい」… 課題も多い 地震後の防災意識

フリーディスカッションではまず、熊本地震から2年半が経過し、市民の防災意識がどう変化しているのかについて意見が交わされました。課題として挙がったのは、「地震の記憶を『忘れたい』『避けたい』と考える方々への防災意識の植え付け」(山内さん)や、「仕事や家庭が忙しい30~40代の防災意識を高める必要性」(漆野さん)など。

地域の防災意識を高める上で大切なこととして漆野さんが強調したのは、日頃からの“つながりづくり”。「災害に強い地域は行事などを通じて顔見知りが多く、非常時も連携が取りやすい」と説明しました。一方で、都市部や市街地では一人暮らしが増え、そうした連携が難しい地域もあります。山内さんが暮らす慶徳校区でも、地震発生後の避難誘導の際、独居の高齢者の中には「(避難所へは行かず)自宅に残る」という人も少なくなかったとか。また、「災害時には、子どもたちが持つ地域の情報も貴重。彼らが日頃、地域の方々と触れ合う中で得た情報が生きることもあります」と山内さん。それを受けて漆野さんも、「大切なのは自分の地域が好きという気持ち。大人と子どもが連携して防災を担う環境を整えよう」と訴えました。

予定の時間をオーバーするほど白熱したフリーディスカッション。3人それぞれの思いが参加者の防災意識向上につながりました

予定の時間をオーバーするほど白熱したフリーディスカッション。3人それぞれの思いが参加者の防災意識向上につながりました

地域の実情に即したハザードマップが自助・共助につながる

続けて話題は、ハザードマップ作りに移りました。「行政が作成する一般的なハザードマップは、洪水や土砂災害などの際の危険箇所を示した総論的なもの。熊本市では、町内自治体単位でのハザードマップ作成を進めていますが、地域で生かすには、より地域に密着した目線で作ることが大事」と漆野さん。水野さんも、「大きな災害を経験している私たちだからこそ、さまざまな災害や状況を想定した深みのあるハザードマップが作れるのでは」と、参加者に呼びかけました。

フリーディスカッションのポイント!

・忙しい30〜40代の防災意識を高める必要性
・「あんな大きな地震はもう来ない」は思い込み
防災の担い手として、子どもとも連携
・災害の経験を基にオリジナルのハザードマップ作り


ハザードマップの作り方を学ぼう!

Let's learn how to make a hazard map!
「ハザードマップ」って何?

ハザードマップは、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを示した地図


災害の種類によっても異なる危険箇所 あらゆる状況を想定して作成を

第2部では、普段は分からない(見えない)地域の中の危険箇所を、“見える化”するための必須アイテムともいえるハザードマップの作り方を学びました。実際に熊本市中心市街地の地図を用意し、その上に透明シートを貼り付け、「水害の際に浸水するエリア」「避難場所になりそうな場所」などをマジックで塗り分けながら確認していきます。日頃、何気なく歩いたり、車で通ったりしている道が浸水の可能性が高いと知り、参加者も驚きを隠せない様子でした。

講師の水野さんは、「地震、水害など、起こる災害によっても危険箇所や避難場所、避難経路は変わる。さまざまな状況を想定し、地域や家庭で独自のハザードマップを作ることが災害への備えの第一歩につながります」と強調。この日は、親子での参加もあり、「わが家でもハザードマップを作ってみよう」「避難場所を決めておかないといけない」など、それぞれに話し合う姿も見られました。今回学んだ作り方を生かし、次回の実践編でどのようなハザードマップが出来上がるのかが楽しみです!

災害時の危険箇所や被害を“見える化”することの重要性を語る水野さん

災害時の危険箇所や被害を“見える化”することの重要性を語る水野さん

事例発表を行った山内さんや漆野さんもハザードマップ作りのアドバイザーとして参加

ハザードマップを見ながら自分の住む地域の危険度をチェックする親子

ハザードマップを見ながら自分の住む地域の危険度をチェックする親子


セミナー参加者の感想

目線を変えて学び、今後に生かしたい

管理栄養士をしており、非常時の行動はこれまでも学んできました。しかし、熊本地震を経験し、また父を自宅で介護していることもあり、市民としての知識も学ぶ必要があると思い参加しました。ハザードマップのワークショップの際、山内さんが過去の災害と重ね合わせて説明してくださったのが、とてもふに落ちました。自分だけの知識にしておくのはもったいないので、ぜひ地域に戻って役立てようと思います。

松下みゆきさん

「学び」を行動に移し、伝えていくことが大事

これまでネットなどでハザードマップを見たことはありましたが、どういうものかは理解していませんでした。今回、自分自身で作ることで、地域に潜む危険箇所について改めて考える機会になりました。同時に、災害への不安や恐怖を感じることで、備えの大切さも痛感し、意識が高まったような気がします。将来は防災士の資格を取り、学んだことを多くの人に伝えていきたいです。

渡邊純一さん

"自分ごと"として考え、家族で意識を高めたい

大雨などで浸水する可能性の高い地域に住んでいるため、日頃から気になっていました。災害への備えを“自分ごと”として考え、学んだ防災のノウハウを地域に伝えたいと思い参加しました。ハザードマップ作りでは、災害の起こる時間帯や逃げる際の動線まで考える必要があるなど、多くのことに気付かされました。家に帰って、非常時の家族の避難場所なども改めて話し合います。

小原由輝子さん しゅうさん


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