この部屋から東京タワーは永遠に見えない【つんどく よんどく】
目次
「タワマン文学」 若者に幸あれ
「タワマン文学」は大谷翔平のホームランと同義だ、と思う。
朝、スマホの通知音で目を覚ますと、画面には海の向こうで大谷翔平がホームランを打ったというニュース。このところ、ほぼ毎日だ。スゲーなと感動しながらも「オレにはとても手の届かない場所の出来事」という謎のあきらめ感が脳を漂う。
現在、文学界隈で盛り上がりつつある「タワマン文学」とは、いわばこんな感じの文学だ。
本書は“タワマン”“東京”といった「成功」をイメージさせるワードへの漠然とした憧れから生じる嫉妬心や社会的ヒエラルキーを描いた20編の短編集。どの編も異様に生々しく、汗ばむような読後感が押し寄せる。が、圧倒的に面白い。
登場人物はみな自虐的で、心がねじ曲がっているが憎めない。自分にも同様の感情が内在していると自覚しているからだろう。私もどこかで歯車が狂っていたら、彼らのようになっていたかもしれない。
若者に幸あれ。そう願わずにはいられない本である。
紹介するのは
「アザケイさん、直木賞候補選出おめでとうございます。タワマン文学の天下取りを期待 ! 」