【582号】一歩ずつ前進 人吉の今
熊本豪雨から約1年。甚大な被害を受けた人吉では、被災した事業者が仮設商店街や元の場所で営業を再開するなど、一歩ずつ復興に向けて進んでいます。そんな人吉の“今”の姿をお伝えします。
笑顔あふれる "今"の人吉へ
復興が進む人吉の現状を、人吉市商工振興課の竹内常泰課長に聞くとともに、再建を目指す店舗などが入居する3カ所の仮設商店街を訪ねました。そこには確かな復興への足取りと、店主やお客さんの笑顔がありました。
※営業時間や店休日は店舗ごとに異なるので、各商店街のホームページやSNSなどで確認を
生まれ変わる 人吉の姿を見て
仮設商店街がオープンするなど、再建に向けて動き出した事業者も増えています。けれども、豪雨災害にコロナ禍が追い打ちをかけ、観光は大打撃です。
観光復活のカギとなるのが、宿泊施設の再建だと思います。一部は営業を再開していますが、いまだ休業中の温泉旅館も多いのが現状です。そんな中、「鍋屋本館」は4月から素泊まりのみ営業再開、「あゆの里」は8月末からの再開へ向けて予約を受付中です。新型コロナウイルス感染症対策を万全にし、観光客がいつ戻って来てもいいように体制を整えるのが私たちの役目だと思います。
人吉市では現在、被災した建物の公費解体が進み、更地が増加。街の風景は一変しましたが、人吉が生まれ変わるチャンスでもあると思います。これから復興が進み、生まれ変わっていく人吉の姿を見て、応援していただけたらうれしいですね。
話を聞きました
人吉市商工振興課 課長
竹内 常泰さん
再開した飲食店も多いので、ぜひ人吉にお越しください
人吉市内
2カ所の仮設商店街に計26店舗が出店
人吉市が整備を進めた仮設商店街「モゾカタウン」が、今年2月にグランドオープン。人吉駅前に23店舗、人吉市まち・ひと・しごと総合交流館「くまりば」の駐車場に3店舗が入居しています。「飲食店を中心に、歯科医院や洋品店、寝具店、理容店など生活に密着した事業所があります。ここに来れば衣食住はある程度そろいますよ」と話すのは、同商店街会長の中村真悟さん。今後はイベントも計画中だそうです。
人吉駅前のイートスペースで食事をしていた熊本市の女性客は「人吉の復興を少しでも応援できればと思って来ました」とにっこり。ひっきりなしにお客が訪れていたのは「くまりば」のコーヒー専門店『永田村右衛門ROASTERY』です。店主・尾方えりさんが被災前に家族で営んでいた製材所は濁流にのまれ、やむなく閉業。製材所の一角で販売していたコーヒー豆をメインにした店舗の出店を決意したそうです。「屋号と家族の思いを引き継ぎ、支えてくれた多くの人に恩返しがしたい」と、希望あふれる表情で語ってくれました。
3店舗が入居する「くまりば」。おしゃれなコンテナが目を引きます
モゾカタウン ひとよし駅前
人吉駅前広場に立地
取材時はこいのぼりが泳いでいましたが、現在は夏仕様に衣替え。全国各地の商店街から寄付されたちょうちんが飾られています
地元産キクラゲのコロッケや郷土料理のつぼん汁など、人吉ならではの味も楽しめます
『三日月食堂 昭和』の「三日月カレー」つぼん汁付き900円、『ラーメン竜』の「ラーメン」600円、「ギョーザ」400円
モゾカタウン くまりば
『永田村右衛門ROASTERY』。店主・尾方えりさんがコーヒーを提供します
「アイスコーヒー」(手前)、「コーヒーゼリー」各350円
グリーンコープ生協くまもとの『手とテとて』。新鮮野菜や弁当が並びます
「モゾカタウン」 商店街会長
中村 真悟さん
再建を目指し、皆で協力して頑張っています
7つの飲食店がテークアウトの弁当や総菜を提供
7軒の飲食店が出店する仮設商店街「人吉復興コンテナマルシェ」。人吉商工会議所が整備し、今年1月にオープンしました。弁当や総菜、スイーツなどがテークアウト形式で販売されています。
創業60年の和食店『勝よし』は、入居していた建物が水害で4・7m浸水し、解体が決まったことから商店街に出店。創業当時からの名物である鶏肉の天ぷら「しな天」などを提供しています。すでに再建予定地が決まっているそうで、3代目の田尻敏一さんは「常連のお客さんの『再開を待っているよ』という声に支えられ、ここまで来ることができました」と感慨深げに話します。
入居する病院が被災した『Ristorante T AKEMOTO』では、弁当や総菜を提供。「系列の飲食店も被災しましたが、すでに営業を再開しました」と店主の嶽本佳乃さん。人吉が復興に向けて一歩ずつ進んでいることを実感しました。
『UNLEASH』の「スフレパンケーキ」各600円
『Ristorante TAKEMOTO』の嶽本佳乃さん(左)、迫田真奈美さん
人吉復興 コンテナマルシェ
肥後銀行人吉支店の東側にあります。駐車場も完備
広い敷地に7棟の木造コンテナが点在。イートスペースも用意されています
『勝よし』の初代が考案した名物「しな天」500円。ふんわり、サクサクの衣とジューシーな鶏ムネ肉が相性抜群です。オリジナルの三杯酢に浸して味わって
『勝よし』3代目の田尻敏一さん・美野さん・芽愛ちゃん親子
「HASSENBA HITOYOSHI KUMAGAWA」
球磨川くだりの発船場が観光拠点に
被災した球磨川くだり人吉発船場(はっせんば)が、観光複合施設「HASSENBA HITOYOSHI KUMAGAWA」として7月4日にリニューアルオープンします。乗船券売り場だけでなく、ラフティングの受付窓口も設置。球磨川下りは7月下旬に再開予定です。
パンケーキが自慢のカフェや地場産品を扱うショップも新設されます
営業再開しました!
球磨焼酎/一期屋
多彩な球磨焼酎がずらり
人吉・球磨にある蔵元の商品がそろう球磨焼酎専門店。被災後、今年4月にリニューアルオープンしました。店内には、被害が大きかった蔵元の応援コーナーを設置。復興支援商品である「Reborn(リボーン)」ラベルの球磨焼酎もそろいます。
すっきりとした配置の店内
「Reborn」ラベルの球磨焼酎
温泉/人吉温泉 元湯
昭和の風情が残る共同浴場
昭和9年創業の共同浴場。水害で建物は1.5m以上浸水したものの、別の場所にある泉源が無事だったため、昨年10月に営業を再開しました。脱衣所は新しくなりましたが、浴室は創業当時のまま。源泉掛け流しのぬるりとした湯を楽しめます。
男女別の内湯が一つずつ
人吉城跡近くに立地
店舗情報
- 住所
- 人吉市麓町9
- TEL
- 0966-32-8632
- 営業時間
- 7時〜12時、14時〜22時
- 休業日
- 第4木曜
- 料金
- 大人300円、小学生以下100円、未就学児50円
- 駐車場
- 20台
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