「愛してくれる人がいる」 確信を胸に社会へ羽ばたいて【となりのあの子Web版 Vol.12】
親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。
卒業の季節ですね。
トナリビトが運営する自立支援シェアハウスIPPOも、入居者たちの入れ替わりの時季になりました。
IPPOでは親や家庭から支援を受けられない15歳から23歳の若者たちが生活しています。
入居者は児童養護施設などを卒業して自立を目指す子や、保護されたものの行き先が見つからない子、社会的養護の対象となる18歳という年齢制限を超えてしまったために支援が受けられないDV被害者の未成年などさまざまです。
どの子にも共通しているのは、親や家庭の支援を受けられない状態で、自分で生計を立てて生きていかなければならないということです。
IPPOは自立支援の場ですから、日々の支援の中には「自立」というキーワードがついて回ります。
でも「自立」ってなんでしょうか。
日々若者たちと接している中で、「自立=人に頼ってはいけない」と考えている子たちがとても多く、心配になります。また、「自分みたいなのが人に迷惑をかけてはダメだ」とか、「自分のことなんて助けてくれるはずがない」とか、考えてしまう子も少なくありません。
私たちが考える一番大切なことは、まず「自分は生きていていいんだ」「愛されていいんだ」「幸せになってもいいんだ」と思えること。
それができて初めて、若者たちは「困った」や「これがやりたい」が人に言えるようになります。
それが自立への一歩ではないでしょうか。
IPPOを卒業する時、100点満点の若者はいないかもしれません。でも「自分を愛してくれる人がいる」―そう強く確信して、社会に羽ばたいていってほしいと思います。
PROFILE
山下 祈恵
NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/