閉鎖空間でむき出しになる家族の姿【つんどくよんどく】
くるまの娘
著:宇佐見りん
穏やかそうなタイトルの字面から『幸福の黄色いハンカチ』的なほのぼのロードムービーを想像したが完全に裏切られた。「家族」とは何か、と深く考えさせられる物語を21歳の大学生が書いたことが信じられない。
主人公は17歳のかんこ。舞台は、両親やきょうだいと共に祖母の葬儀に向かう車の中。究極の閉鎖空間の中で、家族のゆがみやきしみ、異常な優しさなどが次々とむき出しになっていく様に、私は読み進む手と心を止めることができない。かんこは両親に対し「あの人たちは私の、親であり子どもなのだ」と断ずる。私は親を子どものように感じたことはないし、わが子を親だと思ったことはない。だが本書を読むとどこか納得してしまう。子であれ親であれ、どこか依存し合い生きていると。
最後まで読んでも誰も救われないのだが、どこかすがすがしさを覚えるラストがまた良い。かんこにもきっと、黄色いハンカチがたなびくような目的地がありますように、と願わずにはいられなかった。
紹介するのは
金龍堂 まるぶん店
荒川 俊介さん
「自分、不器用ですから…」。ミスった言い訳に今まで何万回も言っています。