休日や夜間に起きる子どもの病気、慌てずに対応するため知っておきたいこと
新年度になり、子どもの活動も活発になっています。時には思いもよらぬ異常を訴え、保護者を慌てさせることもあります。特に休日や夜間に起きる急な発熱やけいれん、誤飲など、どう対応すればいいのか迷いがちです。今回は、小児救急に関する情報をお伝えします。
(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)
重要な、小児の 救急医療体制の維持
熊本市における子どもの休日夜間救急医療は、主に熊本赤十字病院と熊本地域医療センター(熊本市休日夜間急患センター)が担っています。また、休日の日中は市内の病院や診療所も休日在宅当番医として交代で診療に当たっています。
特に熊本地域医療センターでは、熊本大学小児科医師、熊本市近辺の小児科開業医師、当院常勤医師が三位一体で協力して行う「熊本方式」と呼ばれる独特の24時間救急体制で、熊本市のみならず近隣の市町村の救急患者に対応しています。
新型コロナウイルス感染症流行前は熊本市休日夜間急患センンターに、感染症を主体とした年間約1万7000人の受診がありました。その多くは軽症ですが、一方で、そのうちの約3.6%が入院となっていました。
コロナ流行後は感染症対策の徹底などにより、小児の感染症が大きく減少し、流行後3年間で救急外来受診者数は約60%減少しました。しかしながら今後は、マスク着用緩和や社会活動が活発化することにより、再び小児の感染症患者が増加する可能性が高いと考えられ、引き続き小児の救急医療体制の維持が重要です。
救急受診すべきか迷うとき
#8000(熊本県子ども 医療電話相談)や、県のHPへ
休日や夜間に子どもの具合が悪くなった場合、保護者の多くは救急外来を受診すべきか、翌日まで待ってかかりつけ医を受診するかを迷うと思います。
その場合は、熊本県子ども医療電話相談(電話番号 #8000)に相談することが可能です。
また、熊本県ホームページの小児救急ガイドブック「こどものケガ・急病について」も参考にしてください。
熊本県子ども医療電話相談
TEL:#8000
ダイヤル回線、IP電話、光電話の場合 TEL096-364-9999
【相談内容】
◎子どもの急な病気への処方法、応急処置について
◎受診可能な医療機関の情報
◎夜間・休日対応の医療機関情報
【実施時間】
平日/19時から翌朝8時まで
土曜日/15時から翌朝8時まで
日・祝日/8時から翌朝8時まで
小児救急ガイドブック 「こどものケガ・急病について」
救急外来受診の主な訴えと目安
小児の救急外来受診の主な訴えは
(1)発熱
(2)けいれん(ひきつけ)
(3)嘔吐(おうと)、腹痛
(4)喘鳴(ぜんめい=呼吸をするときにヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすること)が強い、呼吸苦を訴える
(5)誤飲(飲食物ではない異物を誤って飲み込んでしまうこと)、誤嚥(ごえん=飲み込んだ物が食道ではなく気道の方に入ってしまうこと)
これらについて、家庭での対応や受診の目安などをお伝えします。
(1)発熱
小児の発熱の多くは、何らかの感染症が原因となっています。全身状態が悪くない場合は、手持ちの解熱剤や氷枕などを使用し、しばらく様子を見て、日中にかかりつけ医を受診してください。
しかし、乳児期早期の発熱、ぐったりしている、意識レベルが低下しているなど、特に通常とは違う状態が続いている場合は、救急外来受診をお勧めします。
(2)けいれん
発熱時のけいれんの多くは「熱性けいれん」と呼ばれ、後遺症を残すことはありません。けいれん発症前まで元気や食欲があった場合は、重篤でない場合がほとんどです。
一方、インフルエンザ罹患(りかん)時などにけいれんの持続時間が長かったり、短期間にけいれんを繰り返したりする場合は急性脳症を起こしている可能性も疑われるため、救急外来受診をお勧めします。
無熱時のけいれん発作で、速やかに回復する場合の多くは、てんかん(神経細胞が過剰な活動を起こすことにより、繰り返し発作が起こる病気)発作が疑われます。短時間の発作で速やかに回復する場合は、まずはかかりつけ医に相談してください。
(3)嘔吐(おうと)・腹痛
嘔吐や腹痛が突然に出現した場合はノロウイルスなどによる感染性胃腸炎が最も疑われます。発症後早期は安静にし、手持ちの吐き気止めの座薬などを使って経過を観察してください。
しかし、イチゴジャム状の血便や腹痛を繰り返す、不機嫌でぐったりしているなどの症状が続く場合は、腸重積症(腸管の一部が連続する腸管の肛門側に引き込まれてしまうことによって生じる病気)が疑われます。
また、右下腹部の痛みが強く、お腹が固くなっているなどの症状があれば、急性虫垂炎やその穿孔(ぜんこう)による腹膜炎を起こしている可能性も疑われます。以上のような症状が持続する場合は救急外来受診をお勧めします。
(4)喘鳴(ぜんめい)が強い・呼吸苦
喘鳴は、ぜんそくの持病のある子どものぜんそく発作、細菌やウイルス感染症によるクループ症候群(のどの奥が狭くなり、空気が十分に吸い込めなくなったり、特有のせきが出たりする病気の総称。犬のほえるようなせき、オットセイの鳴き声のようなせきが特徴的)、RSウイルス感染症などで出現します。
陥没呼吸(息を吸い込むとき胸の一部が陥没する状態の呼吸)、呼吸数が特段に多いなどの強い症状が持続している場合や、呼吸苦を訴える場合は救急外来受診をお勧めします。
(5)誤飲・誤嚥(ごえん)
誤飲した異物の多くは便中に排せつされますので、心配がないことがほとんどです。
しかし、ボタン型電池は短時間で消化管の壁を損傷させることがあります。また、幼小児がピーナツ摂取後にせきや喘鳴が止まらないなどの症状が出現した場合は誤嚥の可能性があり、ひどい肺炎を起こすことがあります。以上のようなケースでは救急外来を受診してください。
何らかの異物を誤飲、誤嚥し、判断に困る場合は、日本小児科学会こどもの救急“誤飲”ホームページも参考にしてください。
http://kodomo-qq.jp/?pname=goin
執筆者
一般社団法人熊本市医師会 熊本地域医療センター
小児科部長 柳井雅明さん
・医学博士
・日本小児科学会認定小児科指導医
次回予告
5/26号では、「肺がん」についてお伝えします