リスナーの（秘）情報で出合った 「アジアの歌姫」の珍レコード【円盤で時間旅行122回 嶋田宣明】

長い間ラジオ番組を続けていると、聴かなくなったレコードを送っていただくことがあります。以前は、あさましいコレクター根性のせいでしょうか、ありがたくいただいていたのですが、最近では物置状態の私のレコードライブラリーとダブることも多く、泣く泣くご辞退することが増えています。

そんな中、私が番組をやっているFM局に、リスナーさんから「知り合いの元レコード屋さんがレコードを処分するので見に来ませんか」と連絡がありました。次の日に見に行くと、「いるものがあったらどうぞ」と耳を疑うようなお言葉。店主様の優しい眼差しの中、飢えたライオンが土豚の穴を見つけた時のように、レコードをホリホリさせていただきました。

長年、安レコDIG（ディグ＝掘るの意味）を続けていると、野生動物のような変な嗅覚が身に付いてきます。珍しいレコードは最初から不思議なオーラを放っていて、すぐ目に飛び込んでくるのです。

今回ご紹介するのは、そこで出合ったレコードの話。「アジアの歌姫」と呼ばれ、広く人気を博したテレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」の中国語盤「我只在乎你」のシングルレコード。母国語での歌声は、ジャッキー・チェンとの悲恋を連想させる切なさが全体に満ちあふれていて、時代に翻弄（ほんろう）された彼女の生きざまを感じずにはいられません。

※今回紹介したレコードは6月20日（火）放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」（16時～18時55分）で放送する予定です。

しまだ・のぶあき／1951年生まれ、熊本市出身。東京のデザイン会社でコピーライターとして社会人デビュー。帰熊後、広告代理店でコピーライター＆プランナーとして活躍。現在はFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」（火曜・16時～18時55分）、同「ミッドナイトコモエスタ」（水曜・0時～1時＝全国コミュニティFM番組）、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦」（月曜・21時～21時55分）の選曲家、パーソナリティーを務め、幅広い年齢層に昭和の曲を届けている。