もがく姿 いとおしさ込め描く【つんどく よんどく】
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ぷらせぼくらぶ 新装版
この漫画のことを思うと多くの感情があふれる。だから、どんな言葉で紹介すればいいのか悩んでしまうが、はっきりと言えるのは、これがデビュー作とは信じられないほどの傑作で、なおかつ「ここに私がいる」と思える特別な作品であること。そんな出合いはめったにない。
「自分で始まり自分で終わる岡ちゃんの恋は、クライマックス以外のバリエーションが無い。」─こんな言葉で始まるこの連作短編集に登場するのは、イケてない中学生ばかりだ。青春のキラキラからはほど遠く、何もかもどうすればいいか分からず、もがいている。その姿は自分のことのように、苦しい。
しかし著者は、そこにありったけのいとおしさとおかしさを詰めて、何より素晴らしい絵の力で、そんな苦しみも美しく描く。どうしようもないと思えた瞬間も、かけがえのないものに変えてしまう。
読後、ヒリヒリとした痛みを感じながら、救われた気がした。今の私と、あの頃の私が。だからあなたも。