天草下田温泉「望洋閣」|連泊して楽しむべき!ポテンシャルを最大限に活かし、未来に続く宿に【熊本】
熊本の温泉ソムリエ・第一号の「ぴちこ」が熊本県内の温泉宿にまつわる、歴史や人、風景、食など、訪ねた人にしか感じられない魅力を発信します!
熊本市中心市街地から車で2時間半。透明度の高い海を眺めながら、海岸沿いをドライブしているとたどり着くのが、天草最古の温泉として歴史を重ねる下田温泉です。
その中でも天草西海岸に位置し、オーシャンビューの天草灘を望む絶景の宿として知られ、100周年に向けて歩み続ける老舗宿が「天草下田温泉 望洋閣」です。
自慢の海の幸はもちろん、日本でも珍しい非火山性温泉の湯が800年近く湧き続けるという奇跡の温泉。
日帰りも宿泊も人気の宿ですが、私は「連泊」をおすすめします!
天草・下田で生まれ育ち、今、宿だけでなく地域の未来を見据えていると言う3代目社長・藤本貴士さんにその魅力を伺いました。
昭和10年創業。皇室ゆかりの「望洋閣」
昭和天皇をはじめ、各皇族も宿泊した皇室ゆかりの宿としての歴史を持ち、2025年に90周年を迎える「望洋閣」。
宿は、天草西海岸に面しており、半分以上の客室がオーシャンビュー。客室だけでなく、食事をしている際も、絶景を眺めることができるとあって、多くのファンを魅了しています。
創業当初は木造2階建て、昭和29年時点で客室14室あった宿も、少しずつ増築し、現在の姿になったのは1995(平成7)年のこと。客室64室、最大収容人数312名の大規模な温泉宿に生まれ変わったと言います(現在の稼働客室は62室)。
「創業者の祖父は、実は山鹿出身なんです。知人の誘いで下田へ移住し、宿を創業したのが昭和10年と聞いています。宿で生まれ育った私や女将を務める姉にとって、ここは家。友人と鬼ごっこをしたなど、思い出がいっぱい詰まっている場所です」と3代目・藤本貴士さんは話します。
天草西海岸の絶景と温泉は、変わらない宝物
創業時から宿自体の形は変わっていったものの、変わらないものがあると藤本さん。それが、天草西海岸の絶景と海の幸、そして、天草最古の温泉「下田温泉」の良泉です。
「天草はリゾート地として海外に行かなくても満足していただけるポテンシャルを持っていると思います。おすすめは、温泉宿を拠点に連泊し、マリンスポーツやサイクリングなどを楽しむプラン。童心に戻って思いっきり楽しめますよ」。(藤本さん)
客室からの絶景、レンタサイクルで楽しむ絶景
東シナ海・天草灘の広い景色と、独特の地形、そして「日本夕陽百選」にも選ばれた美しい夕日。これは、下田温泉の中でも海沿いに建つからこそ堪能できる最高の借景です。
夕日が見頃を迎える時間帯には館内放送もあり、宿泊客は4階にある「海風テラス」や客室、レストランなど、思い思いの場所で夕日を眺めることができます。
藍色の海にできる光の道は美しく、太陽が水平線に沈んだ後も空が赤く染まっていく様子など、その余韻はいつまでも続きます。夕食の時間が許す限り、ぼーっと眺めていたい絶景です。
藤本さん自身も、「50年暮らしていても、この景色が大好き。飽きることはありませんね。最近、自転車を始めたのですが、どこを走っても絶景!走りやすいルートなので、皆さんにも試していただきたいです」。
「望洋閣」の魅力に欠かせない天草の食材
もちろん、宿の魅力は景色だけではなく、食事も欠かせない要素。「望洋閣」では、目の前の東シナ海でとれる海産物をはじめ、牛や豚などの天草食材をメインに会席料理を用意。「食材自体が美味しいからこそ、それぞれの持ち味を大切に活かす料理を心がけています」と女将の恵子さん。
伊勢海老会席の一例。魚が苦手な人のために「天草黒牛コース」もあるのでご安心を。
多くのお客さんを迎える「望洋閣」は、まさに天草・下田温泉を代表する宿のひとつ。ここで味わう料理が直接、天草の食材の評価につながる可能性もあるため、あぐらをかくことなく進化を続けなければいけないと言うこと。老舗宿として責任重大です。
大地の恵み・天草最古の温泉
景観に恵まれ、食に恵まれ、さらに「温泉」にも恵まれているのは、全国各地の温泉宿を探してもそんなには多くないはず。特に「下田温泉」の湯は、日本の多くがマグマで温められた火山性温泉という中、非火山性温泉。
天草陶石と同じ層から湧き、摩擦熱で温められたと言われています。その湯が800年近く湧き続けるという奇跡の温泉なのです。
「全国の生産量8割を占める天草陶石は、日本一を超え世界一と言われています。その陶石の層で温められた下田温泉の湯は、世界一の温泉だと思っています」と女将の恵子さん。
下田温泉では、3つの源泉の湯を組合で集中管理し、各宿に届けられています。「沸かさず、薄めず、循環せず」を約束事として、加水・加温せず、源泉をそのまま、しかも適温で楽しむことができるという贅沢な温泉。「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」の泉質は、美肌と保湿、さらに湯冷めのしにくさも嬉しい良泉。何度もつかってプチ湯治を楽しみましょう。
宿の魅力は人の魅力。田舎らしい温かいおもてなしを
私自身、取材だけでなく、プライベートでも何度か宿泊する中で感じたのは、「おもてなしの温かさ」です。フロントスタッフはもちろん、すれ違うスタッフまで、皆さんが「こんにちは」「ごゆっくりお過ごしください」などと声をかけてくれます。
食事の際は、「お代わりは?」「いっぱい食べて」と声をかけてくれ、子どもがぐずると相手をしてくれるなど、温泉宿だけれど、親戚の家に遊びにきたような空気を感じ、そのおもてなしが心地よく、何度もリピートする常連客も多いようです。
「スタッフ全員で共通しているのは、『最大級のおもてなしをする』こと。都会のサービスを持ってくるのではなく、天草の温泉宿にあったおもてなしをご提供できたらと考えています。私より宿に長く携わっているスタッフも多く、スタッフからスタッフへ“おもてなしの心”のようなものが自然と受け継がれているんです。田舎らしい素朴なおもてなしがお客様にとっては新鮮で喜ばれているようです」。(藤本さん)
小型犬の宿泊ОK!多様化する時代に「望洋閣」らしく進化する
「高齢化が進む中、バリアフリーも取り入れたいですし、海外のお客様から要望のある貸切風呂も作りたい、ハード面の進化が宿の課題です」と話す藤本さん。
他にも、本館和室では小型犬の受け入れをしていることもあり、愛犬家のリピーターも増えているため、「ワンちゃんたちに嬉しいサービスも充実させたい」とやりたいことは山積みです。
「多様化する時代。経営者としては、本当はターゲットを絞っていかないといけないと思うのですが、当館らしさを大切にしながら100周年を目指して進化していきたいです。幅広い方に喜んでいただける、みんなに優しい宿になれたらと思っています」。(藤本さん)
宿の仕事以外にも、「下田温泉旅館組合」の組合長や、「天草宝島観光協会」の協会長なども務め、地域の未来についても取り組んでいるという藤本さん。「天草が持つポテンシャルを活かして、人をもっと呼べる地域にしていきたいです」と熱く語ります。
まとめ:天草は1泊ではもったいない! 「望洋閣」は連泊する幸せを教えてくれる宿です。
取材を終えて思うことは、「1泊では足りない!」と言うこと。旅の計画を立てる時、予算や時間が限られる中、それをどう使うか…。天草を訪れるなら、せっかくだから連泊をして、温泉三昧、海鮮三昧!海で思いっきり遊ぶ!というのも、これまで味わったことのない至福の時間を体感できるはずです。
泉質名:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
源泉温度:51.3℃
加水なし・加温なし、源泉かけ流し
天草下田温泉 望洋閣
住所 | |
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TEL | 0969-42-3111 |
Webサイト | http://www.boyokaku.jp |
営業時間 | チェックイン15時、チェックアウト10時 |
休業日 | 不定休 ※休館日はHPをご確認ください |
駐車場 | あり |