心を揺さぶる源は“自然”の中に

司会という仕事柄、私はさまざまなステージの舞台裏を見る機会があります。先日、ミュージカルと吹奏楽、ダンスが共演するステージの司会を担当した時、忘れられない感動に出会いました。
ミュージカル歌手・JKimさんの歌声です。リハーサルで、ミュージカル「キャッツ」の有名なナンバー「メモリー」を聞きました。前奏に続いて彼女の第一声が聞こえた瞬間、舞台裏で待機していた私の頰を涙が伝いました。理由は分からず、ただ圧倒され、感情が追いつかない不思議な体験でした。
思い切って「どうしてあんな声が出せるのですか」と尋ねると、JKimさんは「私一人で歌っているわけではなく、私の心と声を空に飛ばし、そこから降らせるような意識で歌っているんです」と教えてくれました。その言葉に、彼女の歌が音楽を超えて“生きたエネルギー”として届く理由を感じました。
その時ふと思い出したのが、かつて詩人・谷川俊太郎さんにインタビューした時のこと。私が谷川さんに「短い言葉がなぜあれほど胸に響くのか」と尋ねた時、谷川さんはほほ笑みながら「秘密だけど僕はね、尻尾のように大きなホースがお尻についていて、それを土の中にブスッと刺して言葉を吸い上げているんだよ」と話してくださいました。
空へ放たれ降り注ぐ歌の感動と、大地から吸い上げられた言葉の感動。どちらも人の心を揺さぶる源は“自然”にあるのかも。そんなことを思い出しながら空を見上げ、土を踏みしめるとうれしい気持ちになるんです。





















