【472号】カルチャールーム – 円盤で時間旅行 嶋田宣明
テケテケ時代へさかのぼる タイムマシーンのような曲
最近、久しぶりにあるCDを聴いて、中学・高校の頃に夢中になってやっていたバンドのことを思い出しました。当時、私は初めて手にしたエレキギターに夢中で、毎日のようにステレオの前に座り込み、レコードをかけてはコピーすることが日課。さらに、譜面も読めないのに楽器を手にし、仲間とバンドを組むという恐れを知らない少年だったのです。このバンドは、メンバーも似たようなもので、ほとんど耳コピ。
ある時、同級生の別のバンドが私たちの練習を聴きに来ました。いつも譜面で練習しているらしく、私たちのバンドの練習が終わった時、どんな譜面を使っているのかと尋ねてきました。譜面が読めないことを伝えると、彼等はとても驚いたようで不思議な顔をしていました。ただ演奏は好評で、耳コピの手法は、なんと曲の持つノリまで自然とコピーするという、思わぬ結果に結びついていたのです。
しかし、しょせん耳コピ。技術的な限界にぶつかった曲がありました。それは当時、私たちのバンドが、神のようにあがめていた「テケテケ」で有名なアメリカのエレキバンド「ベンチャーズ」の曲。彼らの曲を片っ端からコピーして演奏することが目標だった私たちが、最後に行き詰まったのがベンチャーズの『キャラバン』という曲。元々がJAZZのカバーだったので、コードや演奏がかなり複雑だったのです。
そして『キャラバン』は、私たちのバンドの永遠の課題曲となります。その後バンドは、バンド合戦入賞の目標達成を機に、それぞれの進路により解散することとなりました。
※今回紹介したレコードは5月21日(火)放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(16時~18時55分)で放送する予定です。
しまだ・のぶあき/1951年生まれ、熊本市出身。東京のデザイン会社でコピーライターとして社会人デビュー。帰熊後、広告代理店でコピーライター&プランナーとして活躍。現在はFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(火曜・16時~18時55分)、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦」(日曜・20時~20時55分)の選曲家、パーソナリティーを務め、幅広い年齢層に昭和の曲を届けている。