芦北町から届いた最後のデコポン【村上美香のヒトコトつれづれ】
毎年春になると、芦北町の大岩さんからデコポンをはじめ、段ボール箱いっぱいのかんきつ類が届きます。
大岩さんとは、私がアナウンサーになりたての頃からのお付き合い。当時、日本テレビの24時間テレビで「足の不自由な女性が御立岬の遠泳に挑戦する」という企画があり、私は実況アナの控えの“サブアナウンサー”として現場に入りました。しかし、実際はしゃべる仕事はなく、ADとして仕事をすることに。その時に地元の遠泳会場担当だったのが、役場職員の大岩さんでした。
社会人になってすぐだった私は段取りがとても悪かったのですが、大岩さんは段ボールのごみ箱の作り方やお弁当の手配の仕方など、丁寧に教えてくださいました。暑い夏の海で、一緒に御立岬を走り回ったのを覚えています。
それがご縁で毎年、自家製のかんきつの詰め合わせを届けてくださいました。箱には「自分で作っとるけん、たいしておいしくはないけど」という手紙が同封されるのがお決まり。でも実際食べてみると、太陽の恵みをたっぷり吸収して抜群においしいんです。
そんな大岩さんから、今年も届いた段ボール箱。ただ、今回はいつもと違う手紙が入っていました。「私、古希になるのを機に、今回にてデコポン等の贈り物を最後にしたいと思います。妻も還暦を迎え、これから後半の人生を歩きたいと思います…」。27年間ずっと変わらぬ温かさを届けてくださった大岩さん。今年が最後のデコポンは大岩さんのお人柄のように、優しい味がしました。