突き付けられる 得体の知れない恐ろしさ
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怖ガラセ屋サン
著:澤村 伊智
私は幽霊なんていないと思っている。信仰もなければ霊魂なんてものも信じられない。しかしホラー小説や映画は人一倍好きだ。幽霊やそれっぽいものを扱った作品に無性にひかれてしまう。その理由をうまく説明することはできないのだけど、おそらくは「恐怖」という感情に、ものすごく興味があるのだと思う。
映画化された『ぼぎわんが、来る』などで知られるホラー作家・澤村伊智は今の日本で最高のストーリーテラーの一人だと思う。異常なまでに巧みな構成、奥深くて的確な人物描写、そして何よりも心底怖い…。
この『怖ガラセ屋サン』でも、それは遺憾なく発揮されている。直接的な心霊描写こそ少ないが、得体の知れない、人間ではないものの恐ろしさを突き付けてくる。私がビビって腰が引けながらも求めてしまう「恐怖」の核心がここにあるような気がした。
「結局は人間が一番怖いっしょ?」とか、怪談をナメたようなことを言う人に、ぜひ読んで震え上がってほしい。
紹介するのは
蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん
映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員