高次元の会話劇 入り浸りたい理想の店【つんどくよんどく】
スナックバス江(1)(12巻まで発売中)
著:フォビドゥン澁川
私もいい年なので行きつけの飲み屋が欲しい。特にスナック。
しかし、あの重厚な扉を開けられない。そもそも社交性が著しく乏しい人間にとって、あの独特の店構えは結界のように見える。それと、実家が飲み屋街の近くにあったせいで、スナックと言えば中年男性のカラオケの声が漏れ聞こえる謎の場所という刷り込みもある。
なんだかネガティブなことばかり言っているが、それでも引きつけられる魅力をスナックには感じる。そんな私の理想の店がある。今回紹介する作品の舞台「スナックバス江」だ。ここに行きたい。入り浸りたい。
この漫画はママとチーママと常連客との1話完結の会話劇だ。ハイコンテクストでハイスキルな言葉の応酬が繰り広げられるが、内容はしょうもない。けれど示唆的。その加減がいい。もはやおしゃれだ。私が弱っているだけかもしれないが、癒やされる。すぱいすさんのすてきな紙面に載せていい本かは微妙だが、最近少し疲れている人にお薦めしたい。
紹介するのは
蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん
映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員