自由のない二人がつづる15年の物語【書店員おすすめの一冊】
汝、星のごとく
著:凪良ゆう
僕は自由だー。そりゃ生きているからには制約は受ける。毎日仕事があるし、犬じゃないけど歩けばさまざまな“お付き合い”にぶつかる。もちろん金もない。ただ「どんな制約を受けるか」はとりあえず自分で決められているから、やはり僕は自由に生きているのだと思う。
しかし、主人公の高校生・櫂と暁海に自由はない。住んでいる島、そして親から大きなくさびを打たれ孤独と欠落を抱えて生きている。本作はそんな二人が引かれ合い、すれ違いながら成長していく15年間を章ごとに互いの視点でつづった作品だ。
地方で愛を育んだ若い男女はやがて遠距離恋愛となるが、男が都会の絵の具に染まってしまい、思いにズレが生じる…。前半は昭和の名曲『木綿のハンカチーフ』のような展開。しかし、後半になるにつれ様相が変わる。とにかく重い。その重さは木綿どころか鉛だ。でも、読み終わると鉛を重心にして背筋を伸ばし「自分らしく生きるぞ!」と宣言したくなる、そんな不思議な魅力あふれる物語なのだ。
紹介するのは
金龍堂 まるぶん店
荒川 俊介さん
昭和歌謡曲から平成はミスチル、令和のYOASOBIと連なる僕の音楽遍歴です