差別と偏見を暴く 青年たちの復讐劇【つんどくよんどく】
ジャクソンひとり
著者:安堂ホセ
過激なポルノ動画が流出したことをきっかけに出会った、日本に暮らす4人のブラックミックスで、ゲイでもある青年たちが、とある復讐へ向かう物語だ。
こんなすごい小説に出合うことはなかなかない。
とてつもない速度かと思えば不意に脱力して揺らぐような未知のリズムで、強烈に引き込まれる文体。グルーヴってこういうことか! それと同時に研ぎ澄まされた言葉で、この国がどれほど差別と偏見にまみれているかを突き付けてくる。
「白紙に黒い線引いて、はい、輪郭です。はい、白紙部分は肌です。自分たちと同じ人間です、って素直に思い込める人間なんて、どんだけお気楽なんだよって感じ」。あるアニメを見て言われるこのセリフが象徴するように、マジョリティーが当たり前だと思っていることが、いかに無神経で暴力的なのかを次々と暴き出す。そしてそんな差別の数々に怒りを覚える読み手の私にも、この作品は真っすぐと指差しながら問い詰める。「じゃああんたはどうなの?」と。
紹介するのは
蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん
映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員