よみがえる幸福な味の記憶【つんどく よんどく】
Hマートで泣きながら
著者:ミシェル・ザウナー 訳:雨海弘美
「泣きながらごはん食べたことある人は、生きていけます」
久しぶりに見返した『カルテット』というドラマのセリフが、この本を読んでいる時に頭の中をぐるぐる回っていた。
韓国人の母とアメリカ人の父の間に生まれ、アメリカで育った著者。ジャパニーズ・ブレックファストの名で音楽家としても活動している。そんな彼女が母との死別と、それからの日々をつづった回想録だ。
あまりに早くつながりを絶たれた喪失感に向き合うため、彼女は母との記憶に強く結びつく韓国料理を独学で作り始める。
大切な人を亡くした人は読み進めるのがつらいかもしれない。丁寧で鮮やかな語りがよみがえらせる幸福な味の記憶は、読者の感情に強く作用するからだ。それでも読んでほしい。どれほど愛され、愛していたかを確かめられれば、きっと過去ではない方を向いて生きていける。
泣きながら読み終え、気付けば「辛(しん)ラーメン」(韓国の即席麵)を食べていた。きっとあなたもそうなる。
紹介するのは
蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん
映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員