もしかして「空の巣症候群(からのすしょうこうぐん)」⁉子育てひと段落で空虚感
この春、子どもが進学や就職などで家を出た(巣立った)という家庭も多いのでは。
慌ただしく子どもを見送った後、強い空虚感や喪失感を抱く「空の巣症候群」に陥る親がいるといいます。
また、家族には、出産、入園、入学、卒業など、子どもを中心としたいくつかの節目があります。
生活のパターンが変わると、気付かないうちにストレスがたまり、さまざまな不調を来すこともあります。
子どもが自立することは喜ばしいことです。親も次のライフステージに進んだと考えて、予防や対処法を知って、”自分らしく”いられる環境をつくりましょう。
空の巣症候群とは
「空の巣」とは、子どもが家から出ていき、「巣(家)が空っぽになる」という意味です。
「空の巣症候群」は、子どもの自立によって、親が「自分の役割がなくなった」と感じ、空虚感や喪失感が高まっている状態のことを指し、心身にさまざまな不調が現れることがあります。
主に更年期と重なる母親に多く、より症状が重く感じられるといわれています。
父親にも似たような症状が見られる場合があり、最近では、介護を終えた家族の中に同様の症状が出る人もいます。
空の巣症候群の主な症状
心と体に不調が現れます。心にぽっかりと穴が開き、やる気が出ず、人によっては適応障害やうつ病の引き金になることも。
また、不眠や過呼吸をはじめ、なんとなく体調が悪い不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる症状に悩まされるなど、さまざまです。
女性の場合、ホルモンのバランスが崩れて起こる更年期の症状と似ているので、原因が分かりにくい、また、症状が重なり、よりつらくなるといわれています。
「からだ」の変化(身体症状)
食欲不振、動悸(どうき)、息切れ、倦怠感(けんたいかん)、疲労感、吐き気、頭痛、不眠など
「こころ」の変化(精神症状)
やる気が出ない、焦りを感じる、気が付くと涙が出る、強い孤独感など
空の巣症候群になりやすい人
- 真面目で努力家、責任感が強い人
- 生活の中で子育てが第一で、自分のことよりも子どもを優先させてきた人
- 家族以外と交流が少ない人
予防と対策
空の巣症候群を防ぐには、普段から、何事も完璧を目指さず、“ほどほどに”を心掛けましょう。
また趣味や仕事などで家族以外の人間関係をつくるなど、自分のやりがいや楽しみを見つけておくことも大切です。
近年は、無理に家から出なくても、ネットを通じて仲間をつくったり、趣味を楽しんだりすることもできます。
心身の不調は自律神経とも密接につながっているので、今、不調だという方は、まずはしっかり休んで疲れを取りましょう。
その後は、早寝早起きを心掛け、三食しっかり食べるなど、生活のリズムを整えましょう。
それでも体調がすぐれない場合は医療機関(婦人科や精神科)を受診したり、地域の保健師に相談したり、心理士のカウンセリングを受けたりしましょう。
・子育てに限らず、何事も「ほどほどに」を心掛ける
・自分の楽しみを見つける
・家族以外の人間関係をつくる
・疲れているときはしっかり休む
・生活のリズムを整える
・不調が続く場合は、医療機関など専門家へ相談する
教えてくれたのは
九州ルーテル学院大学 人文学部・心理臨床学科 大学院研究科長
古賀香代子教授
「空の巣症候群」体験談
空の巣症候群を体験した、すぱいすスタッフの話を紹介します。
子どもの頑張りを励みに、発想を転換
友人も多く「空の巣症候群」なんて無縁だろうと思っていた私。
しかし、娘が大学受験に失敗し、「自宅にいたら甘えてしまうから」と福岡の予備校で寮生活を始めると、心にぽっかりと穴が開き、涙が止まらないことも。
厳しい環境に身を置き人生を切り開こうとしている娘のことを考え「親である私が泣いてどうするの」と発想を転換。仕事に打ち込むことで、克服しました。(すぱいすスタッフPK)
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