よく笑う 元気な82歳の父

私の父は82歳。昔、青果市場で競り人をしていたこともあり、威勢がよくて声が大きい、ちょっと短気でよく笑う父です。
以前、父と居酒屋に行った時、隣に座っていた老夫婦のご主人に父は「奥さんより先にアタが天国に行かなんよ。あはは!」と言っていました。「お友達?」と聞いたら「いや、知らん人。あはは!」って。10年ほど前に母に先立たれて寂しかったのでしょう。何だか切なくなりました。
そんな父も最近は飲みに行くこともほとんどなく、普段は、同居の弟が父の食事も作ってくれています。弟の用事があるときは、私が実家で夕飯を作り父と二人で食事をします。
ある日父に指定された時間に食事作りに行きましたが、玄関ベルを鳴らしても、電話をしても応答なし。裏口も鍵がしっかり閉じられています。「ひょっとして倒れているかも」と冷や汗をかき、玄関のノックを繰り返して40分。急にドアが開き「テレビに夢中になっとった。気づかんかった」と笑っています。「もぉー、どんだけ待たせるとよ!」と私は思わず怒鳴ってしまいました。
そして食事後、母の仏壇前に座っていて思い出したんです。私の学生時代、下校時に暗くなる角のところまで出てきて、毎晩、私を待っていてくれた父のこと。ああ、なんて大人げない私。帰り際「さっきは怒ってごめん」と言ったら「は、何が。あはは!」と笑って、母の仏壇に供えられていたお菓子を「ほ、持って帰れ」と渡してくれました。