熊本進出で話題!台湾の半導体メーカーTSMCのふるさと「新竹」ってどんなとこ?新竹サイエンスパークを訪問【台湾ってこんなトコVol.10】
台湾では台湾経済を支えることから「護国神山(国を守る神の山)」とも呼ばれる、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)。
今年2月下旬には熊本県菊陽町の工場で開所式を開きました。
熊本と台湾はTSMCの工場設置をきっかけに多くの交流が生まれていますが、TSMCが本社を置く台湾北部の新竹とはどんなところかご存じでしょうか。
連載の第10回は、TSMCの歴史や半導体の発展について紹介した、新竹科学園区(新竹サイエンスパーク)にある博物館「台積創新館」や新竹の街についてご紹介したいと思います!
新竹サイエンスパークにある博物館「台積創新館」を訪ねました!
TSMCは1987年の設立で、本社は新竹サイエンスパークにあります。
工場は台湾の北部、中部、南部にありますが、新竹サイエンスパークに多く立地することから、新竹はTSMCのふるさとと言ってもよさそうです。
私たちは4月中旬、事前に決められた集合時間に台積創新館を訪れました。入り口の待合スペースには既に十数人が集まっていました。
訪問する際は事前予約を忘れずに
台積創新館は入館無料で、予約制を採用しています。
訪問する際は事前にオフィシャルサイトでの予約を忘れないでくださいね。15人以上の団体は電話かメールで入館を直接予約することも可能です。
オフィシャルサイトで予約する際は、スタッフによるガイドまたは音声ガイドを選ぶことができます。
現在、スタッフによるガイドは中国語と英語のみの対応となっています。もし日本語によるガイドを希望する場合は、音声ガイドを選びましょう。音声ガイドは中国語と英語、日本語に対応しています。
「台積創新館」の三つのエリアをご紹介
台積創新館は2016年にオープンし、敷地面積は約660平方メートル。
館内は「創新無所不在(イノベーションは至る所に)」「釈放創新動能(イノベーションのエネルギーを解き放つ)」「台積公司創弁人張忠謀博士(TSMC創業者、モリス・チャン)」の三つのエリアに分かれています。
「館内の展示を見る過程で、とても小さな半導体がいかにイノベーションを続け、生活を大きく変えてきたか、そしてTSMCがいかにそれを実現してきたかが分かると思います」
台積創新館のスタッフは私たちにこう語りかけ、各展示エリアの紹介を始めました。
「創新無所不在(イノベーションは至る所に)」エリア
最初の展示エリアでは、モニターに映したテレビゲームや写真の精細さなどを比較することで、半導体の技術がこの10~20年でいかに進歩したかを紹介しています。
続けて展示を見ていくと、大きなモニターがあり、そこでは70余りの動画を視聴することができます。
内容はTSMCの会社紹介やビジネスモデル、工場の案内、環境に関する取り組み、専門的技術の解説など幅広く、自分の見たい動画を選んで視聴リストを作ることができます。
これらの中で最も私の印象に残ったのは、「找・光(光を探す)」というタイトルの動画です。
TSMCが2015年から始めたホタルの生息地をつくる取り組みを紹介していました。世界の半導体産業をリードする企業が、こんなロマンチックなことをしていたなんて!とびっくりしました。
「釈放創新動能(イノベーションのエネルギーを解き放つ)」エリア
二つ目の展示エリアでは、TSMCが開発した半導体の一部を展示。デジタルギャラリーではTSMCの歴史を紹介しています。
「台積公司創弁人張忠謀博士(TSMC創業者、モリス・チャン)」エリア
最後のエリアはTSMCの創業者、モリス・チャン氏に焦点を当てています。
創業者・モリス・チャン氏からのメッセージ
出口そばの壁にはベルギーの芸術家が金属の線でつくった芸術作品が展示されていました。ライトに照らされ、壁には美しい中国語の文字が浮かんでいました。
「嚴峻挑戰的後面是美好的未來(厳しい挑戦の裏側には、明るい未来がある)」
これはモリス・チャン氏が来館者に伝えたい言葉として、自らしたため、芸術家に頼んで制作してもらったそうです。
新竹サイエンスパークはどんなところ?
台積創新館を後にしたわたしたちは新竹サイエンスパークを見学することにしました。
600社を超える会社が集まり、16万人が働く製造業の集積地とあって工場ばかりが並ぶ場所かと思っていましたが、一帯は緑が多く、飲食店や住宅、学校もあり、生活環境が整っているようでした。
TSMCの本社から少し離れた場所には「静心湖」と呼ばれる人工湖があり、大勢の人が散歩やジョギングをしていました。
新竹の市街地をぶらり
新竹サイエンスパークから車で20分ほどの距離にある在来線の台湾鉄路(台鉄)新竹駅周辺はにぎやかなエリアとなっていて、台積創新館の見学を終えた後に観光してみるのもお勧めです。
新竹駅から5分ほど歩くと、清代の城「竹塹城」の遺跡である「迎曦門(現在は東門城と呼ばれています)」があります。
さらに歩くと、「旧新竹州図書館」や「旧新竹市役所」といった日本統治時代(1895~1945年)の歴史的建造物があります。旧新竹州図書館ではカフェが営業し、旧新竹市役所は新竹市美術館として活用されています。
東門城から徒歩約3分の場所にある伝統的な市場「東門市場」では野菜や果物、肉類を売っているほか、さまざまな飲食店が営業しています。
新竹名物の米粉湯(コメでつくった麺入りのスープ)や台湾式のおつまみ、日本料理や韓国料理だけでなく、チベット料理まで味わうことができます。
セレクトショップとハンドメイド教室の「職有生活」
歴史的建築物を見て、グルメを楽しんだ後は、SNSで紹介されているのを見て以来、ずっと行ってみたかったセレクトショップとハンドメイド教室の「職有生活」を訪れました。
「職有生活」は築60年以上の古い建物をリノベーションし、台湾人夫妻が共同で経営しています。
1階のセレクトショップは8割が台湾ブランド、2割が日本とその他の国の商品を扱っています。
2階はハンドメイド教室になっていて、夫妻がフラワーアレンジメントと金工を教えているほか、外部講師による刺しゅうや織物などの講座も開いています。日本人の講師を招くこともあるそうです!
夫妻によると、お店のあるエリアは新竹の旧市街地に位置し、職有生活と同じように古い建物をリノベーションしたカフェや古書店、古着店など個性的なお店がたくさんあるとのこと。お話をうかがっていると、新竹の旧市街地をまた訪れたくなりました。
台北から新竹へ足を延ばしてみませんか
台北から新竹は台湾高速鉄路(台湾高鉄)で約30分、特急に相当する台湾鉄路(台鉄)の速達列車「自強号」では約1時間。
今後台北を旅行する際には、時間を取って新竹を訪れてみてはいかがでしょうか。