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生身の人間同士が 向かい合いつながれる場所 【となりのあの子Web版 Vol.14】

イラスト さいき ゆみ

親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

皆さんはゲームは好きですか?
トナリビトが運営する居場所スペースではいつも若者たちがゲームをしています。
テレビゲームもあるのですが、意外と人気なのはカードゲームやオセロといったアナログゲーム。

あるスタッフは「アナログゲームには、陽キャと陰キャをつなげる力がある」と言います。

陽キャ・陰キャは若者言葉で、ざっくり言うと「陽キャ」とは明るくて人付き合いが得意な、いわゆるリア充な人を指し、反対に「陰キャ」とはおとなしく、人付き合いが苦手で内向的な人を指します。
そして「基本的に陽キャと陰キャは相いれない」と若者たちはよく言っています。

言うなれば、同じクラスにいても絶対話さない相手、という感じでしょうか。ところがアナログゲームを始めると、この相いれないタイプの若者たちがあっという間になじんでしまうから不思議です。

今はコロナの影響で人と会うことが減り、相手の空気感やその場の雰囲気を感じ取る、という機会もなくなってきています。

若者たちが向かい合う相手はスマホやパソコンの画面ばかり。
家族や友達とのやりとりはもちろんのこと、学校の先生やバイト先の上司との連絡も全てLINEで済ませられることが多いため、人と面と向かって接することをおっくうに感じる若者も少なくありません。

そのせいか、若者たちはすぐに相手を「陽キャだ」「陰キャだ」と枠にはめて、線引きをしてしまいがちです。
実際に、相手と一度も話したことがないのに「あの子は『陰キャ』だし絶対合わん」とか、逆に「あの子は『陽キャ』だから、絶対自分みたいな『陰キャ』のことバカにする」とか言っているのをよく耳にします。
「そんなこと言わないで、一回話してみたら?」と勧めてみても、「いや、絶対無理。話しきらん!」と返ってくることがほとんど。

でもそんな若者たちが一度ゲームを囲んで向かい合うと、思いの外あっさり打ち解けるのでびっくりします。

そして画面を向いてやるテレビゲームとは盛り上がり方が違います。
お互いの顔を見て、手を動かし、会話をしているうちに、みんな童心に返るというか、素の自分になって楽しんでいるのです。

そうやって若者たちがアナログゲームで盛り上がっている姿を見ていると、生身の人間同士がじっくりと向かい合い、つながれる場所が、彼らにとっていかに貴重かということを改めて実感します。
直接人と話したりすることに苦手意識を持っている若者は多いかもしれませんが、やっぱり最終的には、人とのつながりや会話をすごく求めているのを感じるからです。

私たちはこんな時代だからこそ、人と人がつながれる居場所であり続けないければいけないなぁと思います。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。

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