スポーツを通して 新しい一面を知る【となりのあの子Web版 Vol.18】
親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。
最近シェアハウスはスポーツブーム。
体育館を借りてみんなとバドミントンやバレーをしています。
シェアハウスには児童養護施設出身の若者が何名かいるのですが、施設対抗の運動大会があるので、スポーツをやっていた子がほとんど。みんないわゆる「ガチ勢」でめちゃくちゃ上手なのです。
仕事がうまくいかなかったり、親との関係で悩んだりと、毎日いろんな悩みが尽きない若者たちですが、身体を動かしているときは元気!
バドミントンはまだしも、バレーの時は強烈なサーブやアタックが飛んでくるため、スタッフ陣は手も足も出ず…(笑)。
でも「見てるだけ」ではなく、「一緒にやる」ことが大事なので、果敢に挑み続けています。
スポーツをすると、相手のこれまで見たことのない一面が垣間見えるのも楽しいです。
一見静かな子が実はとっても負けず嫌いでアグレッシブだったり、普段さらっとしている子がものすごくリーダーシップがあって面倒見が良かったり。
この見た目と中身のギャップを知ることは、伴走支援の中でも実はとても大事なことです。
「そういうことに巻き込まれるようには見えない」と大人が勝手に判断した若者が、お金や犯罪、異性関係や風俗などのトラブルに巻き込まれることがあります。
また、「この子は大丈夫そう」とか、「この子はやらかしそう」とか、若者の性格や特性を分かったつもりになって油断していると、思わぬハプニングが起こることも。
実は相手のことをごく一部しか知らないのに、いつの間にかそれがその人の全てだと勘違いしてしまうのは、伴走支援に限らずよくあることかもしれません。
人にはいろんな側面があるので、親に見せる顔、入居者同士で見せる顔、友達に見せる顔、伴走者に見せる顔は全部違って当たり前。
だからこそ新しい一面を知ることができる機会は私たちにとっても、若者たちにとっても貴重です。
運動好きだけど運動神経の良くない私は、つい先日、「きえさん、普段はしっかりしているのにスポーツの時はかわいいよね(=決して褒め言葉ではない)」と言われてしまい…いつか見返してやる!と心に誓い、練習を頑張ろうと思いました。
PROFILE
山下 祈恵
NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/