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幅広い年代に湿疹やかゆみ アトピー性皮膚炎

幅広い年代に湿疹やかゆみ アトピー性皮膚炎

「アトピー性皮膚炎」は、幅広い年代で多くの人が悩まされる疾患です。症状が慢性化する印象がありますが、最近では治療の選択肢が広がっているそうです。症状や最新の治療法についてお伝えします。

(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

執筆者

熊本大学病院 皮膚科 助教 柏田 香代さん
熊本大学病院 皮膚科 助教
柏田 香代さん

医学博士 [専門]アレルギー、真菌症

  • 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
目次

はじめに

全国の患者数は約51万人

アトピー性皮膚炎は、「かゆみ」を伴う「湿疹」を特徴とする皮膚の病気です。良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的に症状が続くことが多いです。アレルギー体質や、皮膚のバリア機能が弱い人によく見られます。

厚生労働省のデータによれば、アトピー性皮膚炎の患者数は2017年時点で約51万人。これは実際に治療を受けている人の数であり、実際にはもっと多いと考えられています。

皮膚のバリア機能が未熟な赤ちゃんや子どもに多く見られますが、思春期や大人になってから発症もしくは再発するケースもあります。

症状

多様な皮膚症状に伴う「かゆみ」

湿疹とは、皮膚の表層に起こる炎症の総称で、皮膚炎とも呼ばれます。具体的には、皮膚が赤くなる、ぶつぶつができる、乾燥してカサカサする、ゴワゴワして硬くなる、かさぶたができる―など、さまざまな症状が現れます。

さらに、かゆみを伴うことが多く、このかゆみがアトピー性皮膚炎の大きな特徴です。かゆみがひどくなると、無意識に皮膚をかきむしり、症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。

また、他のアレルギーや皮膚の病気と合併することもあります。

かゆみがひどくなると、無意識に皮膚をかきむしり、症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります

年齢によって発症部位が変化

アトピー性皮膚炎の症状は、年齢によって現れる場所が変わります。

乳児期は、頰や額、頭が乾燥して赤くなり、ぶつぶつやジクジクした発疹が顔全体に広がります。さらに、首や脇の下、肘や膝の裏など、関節の内側に湿疹が現れます。

幼・少児期(2歳頃から)は、首、肘、膝、手首、足首など関節部分に症状が集中しやすくなります。体はカサカサしたり、保湿しても鳥肌のようにザラザラしたりします。

成長して大人に近づくと、顔や首、胸といった上半身に症状が出やすくなります(図・下)。

[図]発症部位の年齢別特徴

乳児期の場合
幼・少児期の場合
成人期の場合

ウェブサイト「くまもとアレルギー相談室」から

かゆみなどで生活の質が低下

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状のために、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。

かゆみで夜ぐっすり眠れない、勉強や仕事に集中できない、汗をかいたままにしていると皮膚炎が悪化するためスポーツができない、かゆくなるので好きな服を着られない―など、生活のあらゆる場面で不快・不便を感じます。

また、かゆみや肌を見られることによるイライラやストレス、長く続く病気への不安も、患者とその家族にとって、精神的に大きな負担となります。

治療

炎症を抑え、悪化を予防

治療の第一の目標は、薬を使って湿疹やかゆみを短期間でしっかり抑え、皮膚を「つるつるすべすべ」の状態にすることです。これを「寛解導入」と呼びます。

この段階で炎症をしっかり治すことで、その後の悪化を防ぎます。症状が落ち着いたら、薬の強さや使用頻度を徐々に減らし、つるつるすべすべをキープする「寛解維持」へ移行します。

最終的には保湿剤のみでコントロールできる状態を目指します。

寛解導入で炎症を短期間でしっかり抑えつるつるすべすべに、寛解維持でつるつるすべすべをキープ

ステロイド外用薬を適切に使用

アトピー性皮膚炎では、速やかに炎症を抑えるためにステロイド外用薬を中心とした塗り薬の治療を行います。ステロイド外用薬は、皮膚で起きている炎症を早期に鎮め、かゆみや赤みを抑える効果的な薬です。

副作用への懸念や「何となく不安」といった理由で使用を避けたいと考える人もいますが、医師の指導の下、ステロイド外用薬を適切に使うことで安全に症状をコントロールすることができます。

ステロイド外用薬は長期間、漫然と使い続けることを避け、症状に応じて必要な量や強さを調整します。正しく使用しないと、かえって皮膚の炎症が悪化し、より強い薬が必要になる場合もあります。そのため、早期に適切に使い始めることが、結果的に薬の使用量を減らす近道となります。

症状が落ち着いた場合には、最近増えてきたステロイド以外の塗り薬に切り替えることが可能です。

生物学的製剤などの新薬も

近年、塗り薬では効果が不十分な中等度から重度の患者さんに対して、注射や飲み薬である「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」といった新しい薬が使用できるようになっています。これらの薬は、体内のアレルギーに関与する炎症物質を抑え、アトピー性皮膚炎の症状を改善させます。

従来の治療ではコントロールが難しかった強いかゆみや広範囲にわたる湿疹を持つ人、皮膚の敏感さから塗り薬を続けるのが難しい人も寛解導入、寛解維持が可能となり、多くの患者の皆さんの生活の質が改善されています。

自己判断による治療中断は禁物

アトピー性皮膚炎は計画的な治療が必要な病気です。

湿疹が治ったように見えても、皮膚の内部では炎症が続いていることがあります。症状がひどい時だけ薬を使ったり、自己判断で治療を中断したりせず、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。

おわりに

一人一人に合った治療を

アトピー性皮膚炎の治療では、疾患について正しく知るとともに、「どんなことに困っているのか」「どうなりたいのか」を医師・看護師・薬剤師などと共有することが大切。医療スタッフは、一人一人の症状や悩みに合った治療法や対処法を一緒に考え、見つけていきます。

医療スタッフは、一人一人の症状や悩みに合った治療法や対処法を一緒に考え、見つけていきます
INFOMATION

熊本県ではアレルギー相談室のホームページを開設しています。アトピー性皮膚炎に関する情報も掲載しています。

次回予告

12/20号では、「胃がん」についてお伝えします

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

熊本市を中心に31万部戸別配布のフリーペーパー「くまにち すぱいす」がお届けする、熊本の暮らしに役立つ生活情報サイトです。

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