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イベント情報

検診を受け、見逃さないで 糖尿病

11月14日は「世界糖尿病デー」です。この啓発キャンペーンのシンボルマーク「ブルーサークル」にちなんで県内でブルーライトアップイベントも行われます。そこで今回は、「糖尿病」の原因や治療の重要性などについてお伝えします。

(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

目次

糖尿病とは

インスリンが十分に働かず 慢性的に血糖値が高い状態に

糖尿病では、この精密なインスリンによる血糖値を下げる仕組みがうまく働かず、血液中にブドウ糖が増えてしまいます

糖尿病は、血液の中にあるブドウ糖濃度(血糖値)を下げる唯一のホルモンであるインスリンが十分に働かないために、慢性的に血糖値が高い状態となっている病気です。

誰でも食事をすると血糖値が上がりますが、同時にすい臓からインスリンが非常に速やかに分泌され、その働きによって肝臓や筋肉、脂肪組織などにブドウ糖がすごい勢いで取り込まれます。そのため、血糖値の上昇は大変少なくて済むのです。

具体的に、空腹時の血糖値を仮に80mg/dL、血液量を5L(体重65kg程度の場合)とすると、全血液中のブドウ糖の量は約4g、食後に仮に血糖値が160mg/dLまで上がったとしても(ここまで上がることは少ないですが)約8gですので、食事で中盛りのごはん1杯(150g、糖質50g程度)を食べたとしても、血糖値の上昇はたかだか4gと、非常に少ない範囲で済むように調節されているのが分かります。

ところが糖尿病では、この精密なインスリンによる血糖値を下げる仕組みがうまく働かず、血液中にブドウ糖が増えてしまいます。

糖尿病の原因

インスリン分泌の低下 効きが悪くなる肥満にも注意

インスリンが十分に働かない原因は主に2つあります。

1つはすい臓からのインスリンの分泌が低下すること。もう1つはインスリンの効きが悪くなることです。

インスリンの分泌ではインスリンの絶対量も大切ですが、食後の急激な血糖値の上昇に遅れをとらないように歩調を合わせたインスリン分泌のスピードも実はとても大切といわれています。いくらインスリンを分泌できても間に合わなかったら「食後高血糖」となってしまい、これを長年放置していると、そのうち「食後」だけではなく「空腹時」も高血糖になってしまいます。

また、インスリンの効きが悪くなってしまう原因として肥満(体の脂肪が増え過ぎた状態)が挙げられます。私たちの体は過剰なブドウ糖を脂肪として蓄える仕組みを備えていますが、太ってくると脂肪組織に蓄え切れなくなり、肝臓や筋肉にも蓄えようとします。脂肪が増えてくるとどんどんインスリンの効きが落ちてきてしまいます。

適切な治療の重要性

放っておくと血管が傷む病気 血管合併症に対する治療が進化

年代別に見た日本人糖尿病患者の死因

血糖値は、少々高い状態では自覚症状に乏しく、放置されてしまうケースが少なくありません。

適切な治療が行われず高血糖状態が長期間放置されるとブドウ糖が全身の血管を傷つけてしまい、腎臓、神経、眼などの小さな血管や、心臓や脳などにある大きな血管の病気など、さまざまな合併症が起こってきてしまいます。糖尿病は放っておくと血管が傷んでしまう病気といえるかもしれません。

近年、糖尿病やその合併症に対する医学の進歩は目覚ましいものがあります。

糖尿病のある日本人の死因を1970年から10年おきに調査した研究では、70年代では血管障害全体(虚血性心疾患・脳血管障害・腎障害)が死因に占める割合は41・5%でした。それが80年代に39・9%、90年代には26・8%、2000年代になると14・9%まで減少し、その割合は日本人一般よりも減少していました(図1)。

堀田 饒 他:糖尿病 2007; 50(1): 47-61.
中村二郎 他:糖尿病 2016;59(9): 667-684より作図

この大幅な減少は大変驚くべき結果です。その背景には、糖尿病治療薬の進歩とともに、脂質異常症や高血圧症といったリスクの適切な管理、カテーテル治療などの血管合併症に対する治療の進歩が深く関係していると考えられています。

平均寿命が大きく改善

糖尿病のある日本人の平均寿命は、1970年代は男性63・1歳、女性64・9歳でしたが、2000年代には男性71・4歳、女性75・1歳と上昇しました。直近では糖尿病のない方が男性79・3歳、女性84・4歳なのに対して、男性77・4歳、女性82歳と男女ともに糖尿病のない方に2歳前後差まで近付いており、平均寿命の差は年々小さくなってきています(図2)。

糖尿病のある人とない人の平均死亡時年齢の推移

対象方法

匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)を用いた人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、2013年4月~2019年3月の期間中における平均死亡時年齢を糖尿病患者と非糖尿病者で比較した。

Nishioka Y, et al. J Diabetes Investig 2022 Apr 8. doi: 10.1111/jdi.13802. Epub ahead of print.

心掛けたい定期的な検診、治療の継続

このような医学の進歩の恩恵をぜひ一人でも多くの方に享受していただきたいと思います。そのためにも定期的に検診を受け、まず糖尿病を見逃さないことが重要です。

そして、治療が必要になった場合は、ぜひ継続的な通院をお願いします。大切なことは中断しないことです。

心配なことがありましたら、すぐに最寄りの医療機関を受診しましょう。

イベント情報

WORLD DIABETES DAY 2023 in KUMAMOTO(世界糖尿病デー)

[日程]2023/11/14(火)
[ライトアップ時間]17:00~23:00

熊本城、サクラマチクマモト、天草キリシタン館のブルーライトアップと、熊本市中心部でパレードが実施されます。
主催:世界糖尿病デー実行委員会(日本糖尿病学会、 日本糖尿病協会)

執筆者

窪田 直人さん
熊本大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授
窪田 直人さん

信州大学医学部医学科卒業。東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。東京大学医学部附属病院病態栄養治療部長准教授を経て、今年10月から現職。

・日本糖尿病学会 専門医・指導医
・日本内分泌学会 専門医
・日本肥満学会 専門医・指導医
・日本病態栄養学会 専門医・指導医

次回予告

11/24号では、「子宮内膜症」についてお伝えします

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

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